第22話 19810712

真っ暗な宇宙のようなところを飛んでいる。

周りは静かで音は何もしない。

オレとおじさんはKTに乗り、スーっと無重力を飛んでるような感じで、どこかに向かって進んでいる。

雅也は、まだこの状況が未だわからず困惑している。

KTのちょうど視線の前にあるモニターが点いて、神殿が現れた。

神殿「このモニターの下にあるダイヤルを合わせて行きたい日をセットしてねー」

雅也「あ、このダイヤルですね?」

神殿「あるでしょ。そう、それそれ。」

雅也「わかりました。えっとー、行きたい日決まってますかぁ?」と雅也は、隣りに座っているおじさんにまず訊いてみた。

おじさん「私は、7月の12日に行きたいんだが?」

雅也「そうですか。きちんと行きたい日決まってるんですね。7/12ですか?」

おじさん「すまんが、この日以外にはないんだ!」

雅也「わかりました。。いいですよ、優先で。オレは。。えっとー、夏休みのちょっと前の、、試験が終わって、、バスケの大会の、あ!オレもちょうどその頃です!

うん。オレもその7月12日に行きます!」

おじさん「そうですか。それはよかった。」

雅也「偶然ですね!じゃ、日付をセットします。」

と雅也はダイヤルを回す。(1 9 8 1 0 7 1 2)

「と、オッケー、じゃ、セットします。」

ピー! 1981年7月12日にセットされたようだ。

神殿「そういえばひとつ忘れてましたが、悔いの摘出をうまくやらないと、他に影響して人生が変わってしまうことがあるからねー、気を付けてねー。」

二人「わかりました。」


雅也「ところでおじさん、お仕事は何を?」

おじさん「私は、ガラス屋だ。もう30年以上やってる。だがな、数年前からホームセンターとかの影響でお客が減って、ガラス屋だけじゃ食っていけなくなってな。夜は工事現場で働いていた。」

雅也「そうですか、色々大変な時代ですからね。」

おじさん「嫌な世の中になっちまったな。職人が地道に働くだけじゃ通用しなくなった。」

雅也「今や手間を掛けず素早く稼ぐ時代ですからねー。」

おじさん「働きすぎで心臓を患ってな。無理して働いてたら工事現場で倒れて、このザマだ。若い頃はスポーツマンだったんだけどなぁ。老いには勝てん。」

雅也「そうでしたか。それは大変でしたね。」

おじさん「君は?」

雅也「オレは、まぁ普通のサラリーマンですよ。覚えてないんですけど、何か頭の病気で倒れたみたいで。」

雅也とおじさんは、こんな状況であることを忘れ、普通に世間話しをしながら、到着を待っていた。



やがて、ピンポンパンポーン!「KT1981年行きご搭乗のお客様、間もなく1981年7月12日に到着します。到着時刻は7時20分、天候は晴れ。それではこれから着陸します。」と女の人のアナウンスがあった。

雅也「飛行機かよ。」


シュン シュン シュン シュン シュンとだんだんゆっくりと小さい音になり、明るい光が見えてきた。




その後突然真っ暗になって、数秒ぐるぐる回されて、ふと地面に足がついたと思ったら、見覚えのある場所にいた。

線路の脇、トタンの塀のボロアパート。そう、そこは昔、雅也の住んでいた家だ。

雅也「おー、懐かしいなぁ。。本当に1981年に来たんだ。すげー!


1981年 昭和56年 7月12日 7時20分


雅也は懐かしがりながらアパートの周りをまわって見ていたら、母ちゃんが出てきて洗濯物を干している。

雅也「うそ??母ちゃん?若えー。笑えるんだけどー。ん?ということはオレもいるのか?ちょっとわけわかんなくなるな。」

中学生雅也「いってきまーす。」

大人雅也(わー出てきた!?マジかー。)

大人雅也はトタン塀に隠れる。その横を中学生雅也が横切る。

大人雅也「やべー、うそだろー。バックトゥザフューチャーみてー。」

大人雅也は夢にしては出来すぎてると、驚きを超えて、ちょっと感動していた。

大人雅也(しかし、昔のオレ、ぼーっと歩いてたな。寝ぐせくらい直しゃいいのに。)(そうか。今日は東郷とやる日か?あの日か。。ちょっと見てこうかな。)


大人雅也は、中学生雅也の後ろを気づかれないようについていき、七郷中学校に向かった。

大人雅也(あー!見えてきた!七郷中だー!!懐かしい!ずっと来てなかったからなぁ。しかもこれ、まだ昔の校舎のときじゃん。この校舎を見れるなんて、めちゃ、嬉しいんだけど!)

大人雅也は本当に嬉しそうに喜んだ。


ただ、そこで改めて考えた。喜んでもいられないんだと。何しに来たのかというと、悔いを摘出しに来たのだった。ということは、美佐とのファーストキスをやり直す必要がある。まず、美佐と失敗したファーストキスを阻止し、新たに素敵なファーストキスを、中学生雅也が美佐としなければならない。

(え、、結構難しくない??確か夏休み早々に美佐はイギリスに旅立つ。その前にやり直しを成功しなければいけない。)

「えー!?ヤバい! ちゃんと作戦考えなきゃ。。」


(確か、、大会で負けたのは今日、次の土曜日だったなキスを失敗したのは。じゃ、来週土曜日のキスを止めさせるか、失敗しないようにするかだな。んー難しい。)

あと、どうせやり直すなら素敵なキスにしたい。どこでするか。いつするか。。)

大人雅也は、考えていた。


と、(ん??あれはおじさん?)大人雅也は、KTで一緒だったあのおじさんも七郷中学校に入って行くのが見えた。(え?おじさんも七郷に??)

七郷中の体育館に行くと、七郷の選手、東郷の選手、両チームの応援、その他の人でごった返していた中、おじさんも2階に上がって行くのが見えた。


大人雅也(あー、イワケンくんだー。懐かしい!やっぱカッコいいなー!)久しぶりの岩田のアップを見ながら興奮した。


中学生雅也も見える。(なんか不思議だなぁ。。)大人雅也はどうしても不思議で、おかしくてしょうがなかった。

(あんなんだったっけなあ。オレ。)



そうこうしてるうちに、試合が開始の時間が来たようだ。

中央で、審判が高くボールを投げる。

東郷がボールをとり、スッ、スッとパスを回し、大きい男に渡り、軽くシュートを放ち、決める。

大人雅也「うん、昔の通りだ。」


次も昔の通り、七郷、岩田がくるりと回ってシュートを決める。


大人雅也(ん?てことは、先をオレはわかるってことじゃん!)







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