第18話 誤解

麻衣子「雅也!」

雅也「あ、麻衣子。••」

2階から降りてきた麻衣子と会った。

麻衣子「雅也ー」

麻衣子は泣きながら抱きついてきた。

オレも半泣き顔だったと思う。麻衣子はそれを見て、同じ気持ちだと察したのか、抱きついてきたのである。

麻衣子「あーん、悔しい(泣)」

雅也「オレもだよ麻衣子ー(泣)」

麻衣子「でもカッコ良かったよね?カッコ良かったよね?岩田先輩」

雅也「うん、カッコ良かった!めちゃくちゃカッコ良かった!」

二人は岩田を称え、分かち合った。

雅也「本当惜しかった。本当悔しい。」

麻衣子「もー悔しい。あー悲しい。」

二人は、"惜しい、悔しい、悲しい"をリピートでいつまでも言い合った。




その夜、雅也と美佐の電話

美佐「そうなんだぁ、負けたちゃったんだぁ。」

雅也「うん。惜しかったんだけどね。」

美佐「悔しいね。」

雅也「うん。泣いちゃったよ。」

美佐「それは泣いちゃうよね。」

雅也「うん。麻衣子も大泣きしちゃってさ。」

美佐「そうなんだ?」

雅也「うん、抱き合って泣いちゃったよ。」

美佐「え?抱き合ったの?」

雅也「あ、抱き合ったというかね、、」

美佐「抱き合ったんだ?」

雅也「誤解だよ。同じ悲しみの気持ちだったからってだけだよ。」

美佐「でも抱き合ったんでしょ?」

ちょっとこの夜は、美佐と口論気味になってしまった。麻衣子とは、イワケンとバスケ部への同じに想いによる抱き合いだったと説明したが、美佐はわかってくれなかったようだ。



その翌日、雅也はなんとなく電話しずらくて、美佐からも掛かって来なく、結局一日話すことがなかった。

その翌日もお互い気まずいまま、一日話さなかった。


それが三日続き、4日目の金曜の夜に雅也から電話した。

雅也は何事も無かったように電話し、美佐に普通に話しかけた。

雅也「明日土曜、部活がないから会わない?」と。

美佐「いいよ。私も話しがあるから。」

美佐も普通に答えて、待ち合わせの時間などを約束した。

(話しってなんだろう?やっぱりこないだの麻衣子とのことだろうか?)

(やっぱりまだ、気にしてんのかなぁ。。謝ったほうがいいのかなぁ。。でも、あれは、誤解だってわかって欲しいんだよなぁ。。)

雅也は、美佐に、わかって許してもらうことを願っていた。


近くにある喫茶店チャイハナに午後2時に、待ち合わせした。

雅也は奥の方の席が空いていたので、そこに座り美佐を待つ。

美佐が、いつものサマースカートと、リボンが付いた白いノンスリーブで現れた。

「お、」「あ、」二人はいつもよりよそ行き顔で手を上げて、美佐は席に着いた。

美佐「暑いね。」

雅也「暑いね。」

やはりよそよそしい。二人は目を合わさず、ひとまずここ2、3日にあったことを話したりした。


雅也「怒ってる?麻衣子のことごめん。」

美佐「怒ってないよ。もうそのことは終わりにしよう。」

雅也(ん?終わりにしようとは、もう気にしてないという意味か?もう思い出したくないという意味か?)雅也は悩んだ。

(もし気にしてないなら良いが、なんとなく元気がないように見える。)

雅也「元気?」

美佐「うん。いや、、」

美佐は何か、喉に詰まったような返事をした。

雅也(やっぱり、まだ麻衣子のこと気にしてるのかなぁ。。)

雅也は、美佐がやはり少しおかしいなと思ったが、普通にしてたら戻ってくるかな?と思い、その後は麻衣子の話題に触れず、たわいのない話しを次々喋った。

雅也(でも、やっぱりいつもより笑わないような。。)

二人の飲んでるアイスティーが、もう氷だけになったので、雅也は「外行こうか」と店を出た。


行き場所は特になかったので、ひとまず近くの神社を通って、土手の方に向かった。

土手ではグランドでサッカーやら野球の試合をやっていて、元気な声が聞こえる。二人はその声の方向を横目で見ながら、ただただ歩いて行く。もう七月の太陽は、眩しく強く照らしている。


雅也「やっぱり暑いねー」

美佐「うん。ね。暑いね。」

美佐は少し額に汗が滲み出て、恥ずかしそうに答えた。

雅也「母ちゃん仕事で居ないから、ウチ行く?」

美佐「うん。」

二人は雅也の家に向かった。もうひとりの雅也が出て来そうだが。出てきたら、"暑さ凌ぎだ"と言う。


雅也は座布団を引いて美佐に座ってもらい、冷房のスイッチをつけた。冷蔵庫を開けると、サイダーが入っていたので、氷をたっぷり入れたのを2つ作って、ちゃぶ台に出した。美佐のにはストローをつけた。


今日は矢沢永吉じゃなく、こないだ買ったばかりの竹内まりあの"LOVE SONGS"をかけた。


お互い探り合いから、何から話し出そうかわからず、迷っている。

美佐は苦し紛れに前に見た映画の話しを始めた。「雅也くんクレイマークレイマーって映画知ってる?」

雅也「ごめん、わかんないなぁ。」

雅也は知らなかったが、美佐はそのままクレイマークレイマーの話しを続ける。

雅也もそのまま美佐が話し出した映画の話しに耳を傾ける。

美佐はこの映画が好きなようで、感情を入れてリアルに話してくる。

雅也はあまり頭に入っていなかったが、時々「え、そりゃ大変だ」とか、言葉をはさみながら美佐の話しを聞いた。

ひととおりクレイマークレイマーの話しを終えた美佐は、反応が薄い雅也に気づき、必要以上に意見を訊くのはやめ、話し終えたらしゅんと黙った。

「オレは好きだよ」雅也は今だとばかりに、自分たちの話しに持ってくる。

美佐「ん??」

雅也「美佐のこと。大好きだよ。」

美佐「私もそうなんだけど、、」

そうなんだけど、何だろう??雅也は疑問に思った。何だろ?美佐のことはわかってるつもりだ。だけど、何だろう?自信がない。わかってないような気がする。。

美佐は不安なのだろうか。不安を拭い去りたい。

信用してないのかな?美佐を安心させたい。安心させるには?

キスしたら安心してくれるかなぁ?そうだキスだ!いつまでもしないからだ。美佐はどう思っているのだろう?

雅也「美佐さぁ?キスとか考えたことある?」(待て、落ち着け。)もうひとりの雅也が出てきた。

雅也(でも、でも、気になってしょうがないんだ。話した方がお互い晴れるんじゃないかと思って。)

美佐「わからない。」

もうひとりの雅也(ほら言った!変な話しするな!)

雅也は話し出してしまったので止めることが出来なかった。

雅也「周りで付き合ってる人達で、もうしたとかしないとか。ごめん、オレは正直気になってる。」

(あー、本当はそういうことを言いたいんじゃない。この二人の蟠りを取りたいだけ。オレは麻衣子じゃない、美佐だってこと!もう一歩進んで、安心したい。安心させたい。だけなんだ。)

美佐「やだ。誰かがしてるから、するみたいのはイヤ。」

雅也「そうじゃないよ。美佐のこと好きだからだよ。」

美佐「嫌だ」

雅也「美佐・・」雅也は美佐の首のあたりに手を掛ける。

雅也は焦っていた。今日こそは母ちゃんが帰ってくる前に。と時間を気にしていた。

美佐「そんなのイヤ」

雅也は、そう言う美佐を無視して、顔を近づける。美佐は、近づいてくる雅也の顔を避けようと力を入れる。

雅也は「大丈夫」と言いながら、美佐の顔が反対に向かないように手に力を入れ、キスをした。「やだ!」

ガシャン!美佐が押し退けた雅也の手がサイダーに当たって溢れ落ちる。

美佐は悲しい顔を雅也に見せて、玄関の方に走って急いで靴を履こうとしている。

雅也「美佐?ごめん。でも、、」

美佐「帰る!」

雅也「美佐!」

美佐は玄関のドアを開けて、走って出ていった。

雅也は急いで靴を履いたか履いてないかの状態で美佐を追いかけ玄関を出るが、

既に美佐は、走り去ってしまっていた。



「美佐ー!!」



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