第17話 バスケは命だ 人生だ(2)
岩田「よし!同点だ。まだ行くぞ!」
相手コーチ「4番を二人で行け!」
3p 七郷 54-54東郷
試合再開
東郷、いつも通りパスをまわすが、中、外と巧みに使って、
シューターのヤツが放ち、見事にスリーを決めてすぐさま勝ち越す。
3p 七郷 54-57東郷
七郷、木崎がドリブルから東郷のディフェンスを窺う。岩田が手を挙げて中に入る。東郷のディフェンスも岩田についていく。木崎は岩田に出すふりをして、村山にパスを出す。村山は東郷の大きい男に邪魔されながらもシュートを決める。
「おー!!村山ーいいぞー!!」七郷2年生が、同期の応援に大声を上げる。
その後東郷、七郷も点を稼ぎたく攻めるが、お互い点は入らず、ディフェンス合戦のような守り合いが続いた。
ブー!3p終了 七郷 56-57東郷
村田「いいぞ!ここまでよく来た。大丈夫!大丈夫!慌てずに行け。岩田も焦らず行けよ。」
東郷コーチ「ディフェンスを力抜かないことと、4番にやらすなよ。最後にウチの底力見せてやれ。」
4p開始 七郷 56-57東郷
「七郷!七郷!」「東郷!東郷!」
場内は、両校の応援で声がこだまする。
七郷の5人をベンチから送り出す。
雅也「がんばってください!!」雅也は、大声でエールを送る。
(5人ともかっこええ!こんな真剣な顔の先輩達見たことない。きっとやってくれる。)
七郷からの攻撃、木崎が「よし、行くぞ!」と気合を入れてボールを運び出す。岩田、柴山、菅田、村山も「よし、行くぞ」とポジションに散っていく。
木崎から菅田、岩田がまた手を挙げて中に入ってくる。東郷のディフェンスが岩田についていく。それを見た菅田は、村山にパスを出す。村山はジャンプシュートを決めに行くも大きい男が更に上を飛んでブロックされた。
東郷、そのブロックしたボールを取り、一瞬にしてゴールに走りこんでいるヤツにパスをして入れた!
七郷 56-59東郷
岩田「オレに出してくれって!」
菅田「ごめん」
七郷、気を取り直しての攻撃、また木崎が気合の入ったドリブルでボールを運び、柴山にパスをする。柴山は東郷のディフェンスを気にしながら一度木崎に返す。木崎が改めて岩田にパス。が、東郷2人のディフェンスがバッと付いて、岩田は動きようがない状況だ。
岩田「ちっ、負けねぇよ。」
岩田は、左右にドリブルをして相手を振り、ディフェンス2人の間を強引にドライブで入って行って抜いた!と思ったとき、 ピッ! (チャージング)
岩田「えー!」
ドライブ時に肘を出してしまったようだ。
岩田、4ファールとなる。
雅也(わ、やべー、イワケンくん4ファールかぁ、あと1つしないでなんとかもってくれ。)雅也は祈るように、手を合わせた。七郷を応援するすべての人が雅也と同じ気持ちで祈っていることだろう。
東郷、自分のチームのペースに持ってくチャンスだと、一気に攻めまくる。小さいヤツはドリブルでかき回し、七郷を苛立てる。そこから、隙を狙い、やはり大きい男に回す。すかさず、村山が「入れさせない」とつくが、大きい男にグイグイと押し出されシュートを決められてしまう。
七郷 56-61東郷
七郷、木崎はふたたび「気持ちで負けんなよ!」と叫び、ボールを運ぶ。岩田はまたも東郷のディフェンスに完全に封じられている。柴山が走って行くのが見え、木崎が柴山にパスを出す。受けた柴山はサイドからスリーを狙う。が、惜しくも、リングに弾かれる。
リバウンドを取った東郷は、素早くオフェンス体制を作る。小さいヤツがドリブルをしながら、岩田を挑発している。そして、あからさまに大きい男にパスを出そうとする。村山が大きい男の前に守りに入る。
(村山じゃダメだ!また入れられる!)岩田は村山の更に前を、大きい男に向かって飛んで行った。
・・・・・
ピー!無情にも審判の笛が鳴る。
ボールが転がる。
岩田は、床に蹲る。
周りは、時が止まったかのように硬直している。
柴山「マジか、ファールか」
岩田は飛び込んで、思い余って、大きい男の腕に当たってしまった。
「うそー・・・」七郷ベンチ、七郷応援団、七郷を応援するすべての人が、悲鳴のような声を発する。
「えーマジかー、うそだろう、わ、マジかぁ」雅也も絶望のどん底に落とされたように声を発する。
七郷 4番 ファールアウト
岩田はフラフラになりながらベンチに戻り、頭からタオルを被った。
七郷応援団、静まり返る。麻衣子も呆然と棒立ちしている。
七郷応援すべての人が信じられない状況のまま、プレーは再開され、東郷は岩田がいなくなったことで、放出されたダムのように、ものすごい流れで攻め出し、もはや岩田のいなくなった絶望の七郷メンバーは、それを止めることができなかった。
ブー! 試合終了 七郷56-71東郷
負けた。
東郷中に負けた。
惜しいとこまで行ったけど、東郷に負けた。勝てなかった。
七郷中は敗退した。
ベンチに戻ったメンバーは、悔しい思いを隠し切れず涙を浮かべている。
さっきまで真剣な顔をしていたのに、顔を崩して泣いている。
雅也ももらい泣きだ。
「あー、悔しい。」「マジで悔しい。」
イワケンくんはベンチに座ったまま、さっきと同じくタオルを被ったままだ。少し震えているように見える、イワケンくんも泣いているのか?
村田先生は、パイプ椅子から落ちたまま、いまだ動けなくなっている。
2階を見ると、やはり泣いている人もちやほら。麻衣子もきっと泣いているのだろう。誰か女子に抱きかかえられている。
久我山学院のコーチが帰って行くのが見える。
東郷応援団は握手したりして、勝った余韻を分かち合っている。
うなだれている先輩達を見ないふりをして、オレら1年はベンチを片付ける。(悲しい。本当に悲しい。スポーツって、楽しいけど、悲しい。なんて悲しいんだ。)
三年生はこれで卒業だ。短い間だったが先輩達と練習したことが走馬灯のように思い出す。
(オレはバスケが彼女、恋人だから。)(バスケはオレの命だ。人生だ。)
イワケンくんの声が響く。
イワケンくん!悲しいっす。本当に本当に悲しいっす。でも、イワケンくん、最高にカッコ良かったっす!
雅也は心の中で、岩田を称えた。
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