第6話 出会いの合コン②
すると、二人はキョトンとして固まってから、
「あ、いや……務まっちゃいけないよ? あんなヤリチ――」
「大野……!」
ヤリチ……?
何を言いかけたのか、深刻そうに口を開いた大野を津ケ谷が一喝。え、なんで? といったふうな大野に、津ケ谷は視線で何か訴えるような素振りを見せてから、
「まあ、そんな難しく考えないで。受験勉強の息抜きとでも思ってさ。気軽に楽しんでいってよ」
人懐っこそうな顔をさらに愛嬌よく笑ませ、津ケ谷はぽんぽんと眞彦の背中を軽く叩いてきた。
引っかかるものはあったが……眞彦は津ケ谷の気遣いを無為にすまい、と「はあ」と無理やり自分を納得させて頷いた。
「さて……と」と津ケ谷はふいに呟き、辺りを見回す。「そろそろ時間だけど」
「あ、そういえば……もう一人来るんですよね?」
「そうそう」と大野が苦笑しながら答え、「
『恭也を拗らせたような奴』? いったい、それはどういうことか、と訊ねる暇もなく、「おーす」と気の抜けた声が背後からした。
振り返ると、短髪の堅いのいい男が歩いてくるところで。眞彦は思わず、ぎょっとしてしまった。
他の二人とは違い、着飾った感じのない男だった。よれたロングTシャツに黒のジーンズ。ワイルドという言葉がしっくりくる出立ちだ。彼も帝南大学医学部……のはずだが、キャンパスよりも夜の繁華街を練り歩いていそうな印象。
他の二人も、ではあるが。高校でも予備校でも、眞彦が今まで見かけたことのないタイプだ。
恭也くんはいろんな友達がいるな、と呑気に思っていると、
「ん? 誰?」
目の前にずんと立ちはだかるように立ち止まったその男は、眞彦をちらりと見ると気怠そうに顔を顰めて言った。
「あ、この好青年は恭也の従兄弟。恭也の代理ね」
とん、と眞彦の肩に手を乗せ、津ケ谷が軽い調子で再びそう紹介する。
眞彦は居た堪れない想いに自然と身を縮こめながら、「すみません」と謝っていた。
「まだ未成年だから、言動に注意するように」
津ケ谷がそう付け加えると、伊吹は特に興味も無さそうに「へえ」とだけ言って、大野の方へと視線を向けた。
「なに? じゃあ、恭也は来ねぇの?」
「じゃねぇの?」
知るかよ、とでも言いたげに、投げやりっぽく幹事の大野は肩を竦めた。
すると、伊吹は鼻で笑って身を翻す。
「じゃあ、今夜は好きな女持ち帰れるな」
持ち帰る……!?
合コンの経験は無いが、さすがにその言葉が意味することくらいは眞彦も分かる。
一気に生々しさが増してギョッとする眞彦の傍らで、津ケ谷は「あー、もお」と呆れたように苦笑して伊吹の後を追って歩き出した。
「だから、未成年がいるんだ、てば。自重しろよな」
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