第8話 スターチス

 強欲の魔女の居場所をエレクの魔法で特定してそこに行った。僕はもう死んでいるけど二人は…いやコハクは分からないけど、エレクは間違いなく生きているから…強欲の魔女の怒りに触れて死んだら…元も子もない。というか死者が一人いるという現状に何も驚かないんだな。

 「…この先にデジールがいる。というより僕を探しているみたい」

 「なんでお前を探しているのか…」

 「あれじゃないかな?もう人が近づかなくなったこの土地で久しぶりに人間が来たからじゃないかな。多分だけど僕以外…この土地が国として機能しなくなってから来た人はいなかったんじゃないかな?」

 …あぁ、あの日記でもうほとんどの人がこの国から出ていった…というより去ったのかな。…まぁ強欲の魔女の影響で人が死んでいく土地なんて住みたくもないだろうから…。

 だけどこの土地は資源が豊富で世界からも注目されている資源の宝庫とも呼ばれている土地。だからとある人間が強欲の魔女の伝承があっても世界の反対を押し切って国を立ち上げた。結局滅んでまた誰も寄り付かない忌み嫌われた場所になった。

 「みぃつけたぁ!」

 「っ!?」

 驚いて動けなかった僕の前にエレクが立つ。まるで僕を守るかのように…。あぁ、勇気がある。僕のことは守らなくていいのに。守るつもりではないのかもしれないけどね、相手側したら。…僕はもう死んでいるから、僕のことは放置してもいいのに。攻撃を食らってもどうせ死なない…というより消えないんだから。

 「見つけたわよぉ!ここに来る珍しい人間がぁ!元七つの大罪魔女の精霊を宿す、すごいすごい人間がぁ!」

 目をキラキラさせてエレクの方を見ている。とても興味を抱く存在…前の僕と同じ…いや分からないけど。

 「そしてぇ!隣には、私が歴代で最も興味をいだいている人間だった幽霊ぃ!これできっと!私の好奇心も満たすぅ!」

 …好奇心…こんなことを悠久にも等しい時間を過ごしても完全に満たされないからこそまだこんな所業を現代となっても続いている。この魔女の恐ろしいところはそこなのかもしれない。底知れない好奇心…それこそがこの強欲の魔女の恐ろしだ。

 「こうきしん…かんぜんにみたされたこと、ないのに」

 がっつり言っちゃったよ、コハク。…ガッツリ言ってもいいのか?確実に怒りに触れるような言葉なんだけど…。コハクは死んでいるのか死んでいないのかよく分からないんだけど…エレクは死ぬから挑発的な態度はやめたほうがいいと思うんだけど。

 「あぁ!コハクもいるぅ!最も弱い七つの大罪魔女でかなりの人間嫌いであるコハクがぁ!怠惰の魔女がぁ!人間に宿っているなんてぇ!」

 「…こういうこと。…はなしをきかない」

 うん、話を聞かなさそうな性格なのは普通に思っていたから証明しなくてもいいよ。確実性は必要かもしれないけど…まぁ性格的な面で普通に予測できるから。

 「ふふ…ふふぅ。ねぇ、もっと知りたいぃ!私、貴方のこともっと知りたいのぉ!」

 「…あ、やばい。こうげきくる」

 「え?」

 「だから水に沈んで頂戴ぃ!」

 おい、出会い頭で攻撃してこないとか思っていたのはどこの誰?…僕も含まれているよね、本当にごめんなさい。…まぁ、少しだけ時間があったとはいえ…出会い頭ではあるのかも、ギリギリ。

 大きな火球を連発して飛ばしてきた。少しだけ触れてみたけどあんまり感覚がない。少しのポルターガイスト…感覚を機能させるには部位に力を入れないといけないのか。…初めて知った。そもそも幽霊に感覚なんて存在しないと思うんだけど。死んでいるし、魂だけの存在だから。

 「あぶな…!ちょっとコハク…出会い頭に攻撃してこないって言ってたよね…!」

 氷の魔法を使って火球を凍らせている。…火を凍らせるほど氷を扱う魔法が使えるなんて…本当に魔力が多いんだな。精霊のサポートを受けているとはいえど…やっぱり昔の僕では考えられない…。

 …

 …

 「政府員になるなんて無理に決まっているだろ。君は魔力がない家系の末裔なんだから。才能なんてないんだよ」

 …才能がある…。…僕の人生は…。

 「あっははぁ!人間ってやっぱり抵抗するわよねぇ!色々な人間の内面を見てきて、もう共通の反応であることは理解しているわよぉ!」

 「…さてどうするか」

 |えれく、ばれないように…てれぱしーではなす|

 …分かった。どうすればいいと思う?…やっぱり過去を知らないと…だめなんじゃないかな。と言っても僕は知らないんだけど…。

 |そもそも、えれく…たたかわないといけないから。…かこをみるのは…ですてぃねがてきにん|

 …なるほど。幽霊だから攻撃は受けないだろうからね。

 |…わたしが、がんばってまほうを、かける|

 一時的に僕がサポートを受けることが出来ないけど…まぁ何とかするよ。…というか大丈夫なのか?専門外であるし対象の過去を見る魔法なんて最上級魔法のトップ中のトップだ。時間を遡っている、運命を見ているのと言っているようなもの。君が専門は劣化魔法だろう?

 |…くうかん、いちおう…とくい|

 …あぁ、そういえば得意だったっけ。あの遺跡も空間魔法でおかしくしていた…。…それならお願いするよ。

 |…いまから、ですてぃねに…てれぱしーでかいわする。…がんばって、たえて|

 君が言うのなら頑張るしかないな。

・・・・・

 「回避してばかりではつまらないわぁ!普通の人みたいでつまらないわぁ!」

 「…あいにくだけど僕は普通の人間なんだ。…君の興味をそそるような人間性は持ち合わせていないんだよ」

 …僕は何も出来ない。魔法を使おうとしても眠って、手を貸す事ができない。…結局…僕は何もすることが…。

 |おーい|

 「ふりゃ!?」

 …驚いて乙女のような声を出してしまった…。

 |おおきなこえをださないで。ばれる。こころではなして|

 心で話す…?…

 (こういうこと…か?)

 |うん。いまから、あなたがやるべきことをおしえる|

 (やるべきこと…?僕でも出来ることがあるのか?)

 |ある。…いまからでじーるのかこに、いかせる。まほうで|

 (…過去?なんでだ?)

 |だって、そうでもしないとすくえない|

 (…人物の過去…か。救う…僕があいつに復讐するのを願っている人物だという事は理解しているのか?)

 |してる。むだばなし、だめ。すぐさまてんそうする。えれく、しぬのはいや|

 (…)

 視界が白くなり、僕は強欲の魔女の事の過去を知るために…過去へ行くことになった。だが魔女を救うなんてまっぴらごめんだ。…復讐する相手を知ることなんて復讐という決意が和らいでしまうから。…でもあんな魔女に過去なんて…。

 「ねぇ、貴方〜!」

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