第7話 ハナズオウ

 …僕は全てを話した。二人に…あの頃の出来事のことを。たった数日間の出来事のことを。…僕が強欲の魔女に出会い、そして自殺するまでの日々のことを。…何も隠さずに打ち明けた。そして僕以外の人も同じ被害に遭っていたと思われることも。

 「…なるほど」

 「えれくとおなじようなことしてる」

 「え?それって…」

 「あぁ、違う。僕も前に強欲の魔女に才能を植え付けられた事があってね。…今でも残っているんだけど…。…それで僕は魔女の子だと勘違いされていたんだ」

 …この人も…被害者だったんだ。強欲の魔女に人生を奪われた…被害者だったんだ。それなら僕の話も共感してくれるはず…。…強欲の魔女は消さないといけない。そもそも魔女自体を…この世から消さないといけない。…それは被害者である僕達なら分かることだよね。

 「それで…消すと言ってもどうやって」

 「はなしあい」

 「…はぁ!?待て!相手は強欲の魔女なんだぞ!?話し合いなんてまともに出来るわけがない!」

 自分勝手でブレない強欲の魔女だから…どんなに交渉したとしても、何も決意はブレないはずだ!好奇心がある限り…何も変わらない!

 「…確かに。コハクのように話し合いは出来ないかもね。…まともに」

 「なら話し合い以外の…」

 「でもそれしかない」

 「…は?」

 それしか…方法がない?そんなわけ…ないだろ。それだと強欲の魔女を消すのはほぼ不可能じゃないか…!

 「あいつは…消せないのか…!?」

 「なんでそう思うの?」

 「だってあいつは被害者の気持ちを理解しない…最低最悪の加害者だろ!それなのに制裁の一つも与えられないっておかしいだろ!」

 消すことが制裁になると思っていたのに…消したら平和が訪れて…またこの土地に人間が来るようになるって…思っていたのに!…魔女は…許されない。この世にいてはいけない存在だ!それなのにどうして!?どうして神様は魔女に制裁を与えない!

 「…確かに魔女が今までやってきたことには制裁が必要かもね」

 「そうだろ!それなのに…」

 「だけど魔女が今でもやっていることは僕達、人間に対する制裁だよ」

 「…はぁ…?」

 この所業が…人間に対する制裁?…僕達が一体何をしたというんだよ…!何もしていないだろ…!それなのになんで制裁を受けなくてはいけない!…理由を教えてくれよ!どうして制裁を受けなくてはいけない!おかしいだろ…。

 「…魔女って訳アリなんだよね。魔女になった理由は人間に裏切られ、捨てられたから「大勢を見て少数を見ない」神にすがらず、「全員を見ている」悪魔にすがった。…助けてほしいから、人間に復讐したいから悪魔に助けを求めた」

 「…わたしも。いみことして、いせきにとじこめられた。…にんげんにふくしゅうしたい…からべるふぇごーるにすがった」

 「元魔女が言うと説得力が違うね」

 「…」

 じゃあ…強欲の魔女は一体何をされたというんだよ…。…悲しい過去があったとしても僕が何かされたことは変わらないから…そこまで受け入れられないんだよ…。…いきなりそんなこと言われても…受け入れるわけ無いだろうが。僕は…人生を奪われていたんだから。

 「…強欲の魔女の過去は知っているのか?」

 「知らない。僕だってコハクの過去は彼女の口から聞かないと知らなかったわけだから。…一回しか会ったことないから知らない」

 「わたしも、しらない」

 ならどうしようもならないじゃないか…。それなら話し合い出来るわけがない。そもそも自分から過去を明かすやつなんているわけないだろ…。…コハクはエレクのことを信頼しているから…自分の過去を打ち明けたんだろ?あいつは僕達を信頼しているのか?いや、そんなわけない。

 「…じゃあどうすればいいんだよ!」

 「頑張るしかない。まぁ、攻撃してきたら対処しないとね」

 「たぶん、であいがしらにこうげきされることない」

 「あ、そうなんだ」

 「まじょだから…あるていどのせいかくはりかいできる」

 「そうなのか?」

 「うん、あったことあるし…かいわしたことある。かこはしらないけど。…でもでじーる、にんげんをうらんでいるわけじゃない」

 …まぁ、たしかに。態度を見る辺り…恨んではいなさそうだな。人間を道具だとは思っていそうだけど…恨んではなさそう。

 「だから…すこしだけならはなせるかも」

 人間が嫌いなら、速攻で人間を虐殺しそうだから…というか人間を見たら速攻で殺すかもしれない。…それをしないってことは多分…人間嫌いではないかもしれないけど…あの頭のネジが数本外れていそうな強欲の魔女がまともな会話することが出来ないやつと話せるのか?

 「じゃあ、強欲の魔女を探そうか」

 「えれく、ごーよくのまじょにきょうみをいだかれてる。…えっと…あなた…なまえは?」

 「あぁ…僕の名前?…僕の名前は…」

 デスティネ・マレディだよ。

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