第2話 カランコエ
「…そろそろ…出ようかな。この家を」
この家の本は殆ど腐食されていた。最初の本以外は…。なんで最初の本だけは腐食していなかったんだろう?…それ以外は腐食しているのに…なんでこの本だけが?…保存状態が良かったから?それとも…この本は一番最後に書かれた本…なのかな?…様々な可能性があるから絞りきれない…。…どうすることも出来ないから結局本を読んだだけでこの建造物を去ることにした。
「…ふぅ。次はどこに行こうかな」
と言っても建造物がだいぶあるせいでどこから行こうか迷っているんだけど…あ、あの大きい建物なんていいんじゃないかな?…といか僕は一体誰に向かっていっているんだ?…独り言か…と言っても声に出していないから独り言ではないんだけどね。…ただ一人で頭に思考を巡らせているだけ。ここには僕一人しかいないみたいだから声に出すとどうあがいても…独り言にしかならないから…。
「…ここは…あ、ギリギリ読める。…でも所々かすれていて読めない。……グリ…ワー…等…魔法…デミー?」
なんだろうこれ?どんな場所かさえも分からない…。…でも何か分かるかもしれないし…入って見る価値はありそう。…と言っても色々崩れていて「校庭」ぐらいしか見えないけど。
…あれ?なんで僕、ここが「校庭」なんて分かったんだ?あれ?…なんでだろう?思い出そうとしてもまたもや理由が思い出せない。どうして…僕の思考回路はこんな意味不明になっているのだろうか?…理由が思い出せないなんて…こんな事…ありえるのかな?
「…特になにもないよね…」
「…君は?」
…え?まさかこんなところに誰かいるというの?だけどさっき…本当に声がした。…誰?どこにいるの?姿が見えない…。
「ああ、ごめん。姿を消す魔法を使っていたせいで見つけられないよね。今、解除するから」
するとなにもない場所から片目に切り傷の痕がある僕より少し年下のような青年が現れた。その青年はローブをつけていた旅人のような雰囲気をしていた。それもただの旅人ではない雰囲気を持っていた。水色の髪の毛…いや少しだけ緑色が入っている…。そんな青年が僕の前に現れた。一体何のようなんだろう?…何か僕に聞きたいことでもあるのかな…でも僕何もわからないし…僕自身のこともこの場所のことも何も分かっていないんだけど…。
「初めまして。君は…なんでここにいるの?」
先に名前を聞かれるかと思ったけどまさかのここにいる理由を聞いてきた。…名前よりも優先度が高いのかな?この人にとっては。
…う〜ん…名前もここにいる理由も分からないからどう答えればいいのか。分からない。…どうすればいいのかな…う〜ん…適当な理由をつけて話すという手もあるけど…それだと信用されそうにないし…。
「…ねぇ、このこ、だまってる」
「え?」
いきなり女性の声になった?女性というより女の子の声…青年の姿をしているのに…どうして…。というか言葉の発音がおかしかったような気がするんだけど…まるで赤ちゃんの…発音のような…。
「うん。分かっているよ。…この人が混乱するから…ちょっと引っ込んでくれるかな?」
「…ごめん」
なんか…訳のわからない人…多重人格者…なのかな?でもそれにしてはなんか様子が変というか多重人格者っぽくないというか…。
「ごめん、混乱させちゃったよね。…それでもしかして君は記憶喪失なのかな?」
いきなり話題が転換した。というかこの人かなり鋭いなぁ…だって僕が数十秒黙り込んだだけで記憶喪失まで読み解くんだから…察し能力が高いのか…たまたま言ったら当たったのか…わからないなぁ…。
「じゃあ…僕の名前を言わないとね」
そういうと彼はローブについているフードを外して顔を僕の方に向けてこう言った。
「僕の名前はエレク・ストーン。とある村から来た旅人だよ」
「えっと…エレク…さん?」
「さん付けじゃなくてもいいよ。僕は偉大な存在でもなんでもないんだからね」
馴れ馴れしい言い方なんだけど…しかもこの人とはさっきまで会ったことすらなかったのに…つまり初対面の相手にいきなりタメ口はちょっと…でも本人が許可しているんだからいいよね…?
「えっと…呼び名がないと困るなぁ…身勝手で失礼するけど君の仮の名前を考えても…いいかな?」
「いい…よ」
「ありがとう。それじゃあ…ヴァッサー…は言いにくいか。ヴァルでどうかな」
ヴァル…あぁ、それなら言いやすいかも。…どういう由来かは聞かないけど…まぁ、適当に決めて言ったんでしょう…たぶんね。
「…エレクはなんでここに来たの?」
そういえば聞いていなかった。どうしてここに来ているのかを。…廃墟なのにこんなところに来ているなんて…なにか目的でもあるのかな?…いや、絶対に目的がある…わざわざ廃墟まで来るなんて理由がなければおかしいから。…いや、行動全てに理由があるから当たり前といえば当たり前なんだけど…。
「…それは…」
エレクは言いにくそうにしていたけど、ここにいる…ここに来た目的を話してくれた。…それはどういう意味か分からないものだった。
「「それは君を消すためだよ」」
男の声と女の声が同時混じったような声。…でもそんなことは…それを聞いた僕にとってはどうでもいい…というより…その衝撃は彼「たち」の言葉の衝撃によりかき消されてしまったんだ。
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