第3話.死刑の国 前編

12月4日

国についた私が最初に思ったことは、この国の人間はほとんど暗い顔をしていると思ったことだ。

まるで生気がない。何かに絶望しているかのような顔で歩いていた。

私は住民達は収めるべき税金が高く、住民全員に余裕がないから暗い顔をしていると思っていた。

夜、あれを見るまでは

ーーーーーーーーーーーーー

「奴隷商人さん、貴方は早くこの街を出て行った方がいいよ」

店の準備をしていると60代くらいの男性が俺に話しかけて来た。

「どうしてですか?ここでは奴隷売買は禁止されてないと聞いたのですが」


「それは前までの話だよ、今の王様になってから、奴隷売買は禁止になったんだ」


「ああ、そうでしたか、これは失礼しました。今日中にここを出たいと思います。わざわざ教えていただいてありがとうございます。」

こう言うことはよくある。奴隷が反乱を起こし新しく法律を作ったり、王様が代わり国の方向性が変わったり、今回は王様が変わった場合のようだ。

反乱を起こした場合だと王様や貴族がまだ労働力が欲しいからと裏で奴隷を買ってくれるが、

王様が変わった場合はそうもいかない。

王様を恐れて貴族も買うのをやめるため、この国にいても旨味がない。

夜になったらここを出て行こう。


「所で何故、私に奴隷制度が廃止になったと教えてくださったのですか?貴方に教えるメリットはないと思うのですが」


「…お前さん、夜になったら出ていくんだろ?」


「ええ、その方が目立たないですし」


「じゃあ、夜の7時に広場に来てみるといい、理由がいやでもわかる」


「?わかりました」


そういうと男性は帰っていった。

夜の7時か、今が午後4時だから3時間後…余裕で間に合うな

まあ大丈夫だろう。深夜まで暇だし、いってみるか

そう思いながら私は荷物の整理を始めた。

ーーーーーーーー

7時まで後30分と言う所で、おそらく王国の兵士であろう人たちが住民にボタンのようなものを配っているのが見えた。

「なんだあれ?」

兵士に見つからないように隠れながらその様子を見ていると、

「国民の皆様、今週もこの時間がやってまいりました。7時までに準備をお願いします。」


そのアナウンスを聞いた瞬間、市民達の顔は真剣な顔に変わった。


7時まで5...4...3...2...1...0

瞬間市民達が一気にボタンを押した。


「罪人の死刑が完了しました。皆さんご協力ありがとうございました」


「…なんだこれ」

「あのボタンはな、ギロチンにつながっているんだよ」

前を向くと昼に話しかけてきたの男性がたっていた。

「ギロチンと?」

「そう。ギロチンと、国民全員に死を意識してほしいとはじめられた政策でな、みんなで一斉にボタンを押して、死刑を執行するんだ。」

つまり…この国では国民全員に殺人の片棒を背負わせてるってことか

イかれた国だな…

「だからおまえさん、早く逃げたほうがいい。この国は死刑執行のボタンを押さなかっただけで死刑にするイカれた国だ」


「何がいかれてるって?」

後ろを振り向くと鎧を着た騎士のような人間が5人立っていた。

「奴隷法禁止法、および国家侮辱罪で逮捕する」

「何…ぐっ!」

突然頭に鋭い痛みが走り、私は気を失った。

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奴隷商人の日記〜これは裏の世界の物語〜 春海レイ @tanakazaurus

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