第40話【負けられない戦いがソコにあります】
「あ、トウマっちマイっち来た。おっはー」
集合場所の駅前のロータリーには、既に清水と3年の女性陣たちの4人がいた。
バイクをゆっくりと横付けすると、柊さんを先頭に手を振って寄って来る。
「おはようございます、皆さん早いですね」
「やっぱ遠足とかってワクワクして早く起きちゃうかんね。てかあたしらより弁当作ってくれてるトウマっちの方が早いっしょ」
「んじゃあ、俺バイク停めてくるから」
「センパイありがとうございます!」
いつの間に仲良くなったのやら、フランクに柊さんと話す卯月を降ろし、俺はロータリーをぐるっと回って駐輪場へと赴く。
時刻は9時。
電車の本数が多い時間帯ということもあり、既に駐輪場には多くの自転車やらバイクが停められていた。
どうせ直ぐ出すんから入口付近に置きたいところ。なんて願望は当然通らず、結局奥の方の空いたスペースに停める羽目になってしまった。
「って、もうみんないるじゃん」
清水たちと合流しようとロータリーに向かうと、待ってる連中の頭数が増えていた。それに彼らの隣には黒のミニバンが停車させられている。
どうやら車組も俺たちと僅差で到着していたらしい。
「おはようございます野村さん、五十嵐さん」
「桃真君おはよー」
「悪いな、また直ぐバイク取りに行ってもらうことになりそうだ」
「まぁタイミングが悪かったってことで仕方ないっすね。卯月、リュックは?」
「桔平さんの車に積ませてもらいました」
「そうか。うん、そっちの方が安全だしな」
いくら中身が動きにくいリュックと言えど、背負ってバイクに乗るより車に積ませてもらった方が良いのは自明の理。
バイクに乗り馴れてない卯月のことも考えればなおのことだ。
「桃真、お前が先走ってくれ。車組は後ろ付いてく」
「了解です。道順は昨日確認したままの通りですよね」
「ああ。渋滞するかもしれんが慌てるな」
「分かってますよ」
と、二言三言で俺に確認を取った野村さんは次に残りの部員へと振り向き、開いた右掌を頭の高さまで挙げた。
「よし、これから誰が桃真の後ろに乗るか決めるぞ。乗りたい奴は挙手」
「「「「「はーい!」」」」」
……………………は?
野村さんの突然のアンケートに卯月と清水、3回生の3人。挙げた手の高さ手に野村さんも入るのか? 結局、五十嵐さん以外の6人が名乗り出た。
いやちょっと待て。
「なんで皆んな手挙げてんの!? たかが後ろ乗るくらいで」
これに尽きる。
別に誰でもいいよ。けどバイクで2ケツすることのどこに、それほどの魅力を感じるんだ?
俺の問いに真っ先に答えたのは、半袖短パンに豹のロゴが入ったスポーツキャプというちょっと夏を先取りした格好の清水。
「桃真分かってないねー。バイクの嫌いな男子なんていないよ。それも
「葵の言う通りだ。前回は譲ったが今回はオレも乗せてもらうぞ」
「桔平君が桃真君の後ろに乗ったら車の運転はどうするの?」
「文香も免許持ってるだろ。そのミニバンもそれなりに運転してるし問題ない」
「もー!」
清水と野村さんの勢いに若干気圧されながらも、言いたいことはわかるので「あ、はい」としか応えるしかない。共感はちょっとしにくいが。
つーか野村さん、運転を五十嵐さんに丸投げするのはどうかと思う。
「アオっち何か語ってるけど、あたしらもバイクの2人乗りっていう青春っぽいことしたいんよね。別にトウマっちが好きとかは全くこれっぽちも死んでもないけど」
「「ねー」」
と、清水たちの対抗馬として口を開いたのは軽くウェーブをかけた金髪を指先で弄んでいる柊さんだ。彼女の言葉に後ろで2人の先輩が気怠げな声色で賛同の意思を示している。
2人乗りへの憧れ……まだ彼女らの言い分方が俺としては共感できる。
できる……が、なんだろう。婉曲に俺には人として魅力がないと言われてるような気がして胸が苦しい。
「大丈夫ですよセンパイ! 私はセンパイが運転するバイクの後ろに乗りたいですから!」
なんて謎のフォローを入れてくる卯月。
お前はお前で手挙げてたけど、同じマンションに帰るんだから必要ないだろ。
「行き帰りの休憩地点で交代するとして4人……やるしかないようだな」
野村さんの言葉が何を意味するのか、説明するまでもなく全員が察し拳を握る。
「ジャンケン――――――――ッ!」
最初の掛け声からまさか10分も予定が遅れるとは、俺たちは知らなかった。
**********
【蛇足】
大人数のジャンケンって意外とすんなり決着がつくことありますよね。
本来の投稿頻度に戻すために、予定日時を無視しての投稿です!
(とはいっても、そのために文章量を削っているのではなく、あくまで文字数は予定通り書いています)
【あとがき】
拙作をお読み頂きありがとうございます。
面白そう、続きを読んでみたいと思って頂ければ
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