第8話 ドリーム・カム・トゥルー
幼女痴漢事件が発生してから二ヶ月が経過した。それまでは何も問題は起こらず平穏に過ごしていた。そして、今日児童たちに異変が起きた。なんと、放課後いつものように真莉ちゃんを監視していると公園へと出かけたのだ。そしてそこには由依ちゃんはもちろん他の女子や男子までもいた。童子は児童の登下校を記録していたので、誰が誰かはすでに攻略済みであった。
童子はこのことに驚きを隠せず、すぐさま勇人に電話をかけた。
「おい勇人!これは一種の事件だ!だがこれは、同時に俺たちの希望だ!」
あまりの童子の興奮ぶりに勇人は驚いた。
「どうしたんだよ!また児童に絡まれたのか!?もしそれが当たってたら、けつなあな確定な!?」
......勇人だけに
「いや、違う...。というか今から俺たちが絡みに行くんだ!」
童子ははっきりとそう言った。
「正気か!?」
「あぁ、マジだ。というか、そうでもしないと俺たちの夢の児童と戯れるという目的が実現できないぞ!」
「確かにそうだ...ッ!俺が悪かった!だが、俺たちのコミュ力で児童たちをまるめることなぞできるのか......ッ!?」
勇人は核心を突いた。童子は否定できないが、そんなプライドはとっくに捨てていた。
「そこでだ、俺に案がある。そのコミュ力を最小限に抑える方法をッ!!」
「いったいなんだよ、それはッ!?」
「俺たちが小学生のとき、一番何して遊んでいたと思う?」
と童子は質問をした。
「そんなことより早く教えろよォォ!」
そんな無視をしてくる勇人に的外れな回答をした。
「ブッブー!残念違います。」
童子は間を開けずに
「答えはドロケイだ!」
「それ普通だろォォォォォ!」
勇人が発狂し始めた。
「落ち着くんだ。シンプル イズ ベストとはまさにこのことなんだ!誰でもドロケイをするときは、泥棒役になりたいに決まっているだろう?そこを逆手に取ることでコミュ力を最小限に抑えることができるんだ。」
「つまり、誰もやりたがらない警察をやるんだな?」
勇人は澄ました顔で童子に訊いた。
「その通りだ、やればできるじゃないか。俺はお前がやるやつだと思っていたぞ」
童子は少しでも勇人の機嫌をとるために勇人を褒め称えた。単純な勇人は少し褒められただけでこう言った。
「おいおい、騒ぐな騒ぐな。こんなこと俺にとっちゃあ、もう晩飯前だぜ」
「まあそれで、俺たちが警察になるんだったら正直誰も文句は言わないだろ。」
勇人は黙って頷いていた。
「それで、さっそくだがそれは今日決行するつもりだから、雌蕊谷公園にきてくれ」
「俺が着くまで抜け駆けするなよ」
勇人は釘を刺した。
数分後、大きなグラウンドがあり遊具の多様さに定評のある公園に勇人は現れた。
「思ったより早かったな」
童子は感心する。
「ここまできちまったんだな。児童と戯れる日が!」
勇人は興奮してそう言った。童子は児童たちを指差してこう言った。
「女児から名前を言うと、真莉ちゃん、由依ちゃん、大石小雪ちゃん、大杉畑蒿里ちゃんで、男児の名前は高津幸之助くん、松葉寿也くん、木本吾郎くん、槍杉王司くんだな。おそらく全員同じクラスだろう。」
「あー、大杉畑蒿里ちゃんと槍杉王司くん俺覚えてるわ」
勇人が言った。
童子は神妙な顔つきで勇人にこう言った。
「一番最初が最も重要だな、もし断られたら俺たちの夢は終わりだ」
「どう入るつもりなんだ?」
勇人は真剣な眼差しで童子を見る。童子は少し考えて
「そうだな、真莉ちゃんに助けてもらおうか」
そして、童子と勇人の二人は児童八人の輪の中に向かって一歩、二歩と足を進める。早くも児童たちはまだ五十メートル程先にいる童子たちに気づいた様子だった。すると、予想だにしていなかったが、真莉ちゃんの方からこっちに向かってきたので流石に童子は驚いた。
そして、ついに童子は動いた。
「真莉ちゃん!楽しそうだね」
「うん!楽しいよ!」
今日、童子と会って第一声だというのに真莉ちゃんは元気な返事をした。
な、なんて眩しい笑顔なんだ......ッ!この眩しさは、メガネ越しの太陽の光の刺激にすら匹敵するッ!
「そこでなんだけど、楽しそうに遊ぶみんなを観てたらおにいさんたちも遊びたくなっちゃったんだ。いいかな...?」
さあ、運命の時だ。勇人も顔には出していないが、心臓はバクバクしていた。
「みんなべつにいいよね?」
真莉ちゃんはその場にいた同級生たちに訊いた。すると、皆が頭を縦に振った。そう結果はオッケーだった。
その光景を目の当たりにした童子は興奮して早速次のプランへと移った。
「じゃあ、皆んなで楽しめそうなドロケイにしないかい?警察はおにいさんたちがやるよ!」
すると、その場は静かになった。予想外の展開だった。
まずい、実は警察の方が好きだったのか!?思わぬ事態が起こってしまった!
すると真莉ちゃんが口を開いた。
「ドロケイってなあに?」
まさに盲点であった。ドロケイと言えば小学生、小学生と言えばドロケイという、固定概念を童子は持っていたため、このような事態は予想外であった。
童子は最悪のケースでないと安心して説明をした。
「ああ、ドロケイはね、泥棒役と警察役にわかれて....................」カクカクシカジカ
「という遊びなんだ。まあ、実際にやってみないとわからないよね」
という感じであっさりと児童対ニートのドロケイが始まった。
童子と勇人はある程度走るスピードを遅くしていたが、小学生相手にその速さは充分であった。
開始十分後、二人は全員を捕まえてしまった。
童子と勇人は久しぶりの感覚に感動していた。見たところ児童たちも捕まってしまったが楽しそうであった。
そして勇人は言った。
「じゃあ次は三人くらいに警察を増やそう!警察も一度は経験しておいた方がいいぞ!」
そうは言うものの、勇人は泥棒をしたかっただけだった。
そんなこんなで警察は小雪、寿也、王司となった。
序盤、童子は公園に生やされている草の影に隠れていると、寿也くんに瞬殺で見つかってしまった。童子はびっくりして慌てて逃げた、スピードも考えて。すると、後ろの方から声が聞こえた。
「いたっ!!」
寿也くんが盛大にこけたのだ。
童子がそれに気づいた時には寿也くんの脚からは血が流れていた。もうドロケイしている暇はないと思った童子は寿也くんをつれて水道のあるところまで行き着いた。
水で血を流した後に童子は常備している絆創膏を寿也くんの脚に貼り付けた。
すると、寿也くんは呟いた。
「けがしたら痛くて何もできないし、いいことないなあ、」
童子も皆んなと遊んでいた時、自分だけ怪我をして、切ない気持ちに何度も陥ったことがあるので気持ちはよくわかった。
「でもね、その怪我を経験することで、次はどうすれば同じことにならないか、っていう学びもあると僕は思うよ。何か失敗することでわかることはたくさんあると思うんだ。社会に出た時に失敗しないためにも、傷は今のうちにたくさんつけておくべきだと思うな。」
童子は自分でもらしくないことを言っていると感じたが、なかなか爽快であった。ニートなのに社会人、気取っててわろた。
「あんまりよくわかんないな、」
寿也くんは少し困った顔をしていた。それを見た童子は思わず苦笑してしまった。
「でも本当にけがをしていいことなんてあるの?」
寿也くんは訊いた。
童子は少し考えて言った。
「自分がつらい目に遭っているのに、何も得ることが無いというのはあまりにも理不尽......」
寿也くんは真剣な眼差しで童子を見ていた。
「だからどんなことにも何かしらプラスはあるのだと、僕は思いたい」
童子はこれ以上変なことを考えたくなかったので、無理矢理笑って話を終わらせようとした。
「うーん...、今はわからないけど、でもそう思ってるうちにいつのまにか本当にそうなってる...気がする、かな...?」
寿也くんはそう言って苦笑いをした。
「そうだ!運動は出来なくなってもゲームはできるよね!おにいさん持ってきてるんだ!」
童子はそう言って勇人のカバンからゲーム機を取り出した。
「スマ○ラ、知ってる?」
寿也くんは頷いた。
すると、そのとき他の子たちも戻ってきた。
勇人が駆けつけて言った。
「何勝手にゲームやってんだよ!」
「なりゆきで」
童子はそう言った。
勇人はやっと寿也くんの脚に気づいた。
「あー、じゃあもう今日は皆んなでゲームするか!」
というわけでその日は、その場にいた十人でゲームを使い回していた。どうでもいいが童子はパックマン使いであった。
そして6時半頃、みんなとはまた遊ぶ約束をして、お別れの挨拶をした。
色々あった今日という日を童子と勇人は噛みしめた。ここまで本格的に身体を動かして遊んだのは久しぶりであった。ついに、「児童監視員」を結成したときからの夢を叶えることができたのだ。
そして一週間が経ち、みんなと遊べると意気込んでいた童子たちは公園に着くとすぐに驚いた。そこには高校生らしき女子がいたのである。
8話 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます