100、エピローグ? プロローグ? 【完結】あまり投げなかった男〜次があったら本気出す〜
「サトシ、ちょっと見て欲しい物があるの」
突然部屋に現れた訪問者は、可愛い金髪少女だった。
「‥‥‥創造主様、プライベートな部屋に急に転移してくるのは、禁止だとあれほど言ってるでしょう!」
「大丈夫、いつもちょこちょこ覗いてるから。サトシにプライベートなんてないわ」
「変態ですね」
「サトシは私の鑑賞用ペットなの」
完全に職権濫用である。
「‥‥‥で、なんの用ですか? 餌でもくれるんですか?」
「餌が欲しいならいくらでもあげるわよ? 私で良い? 食べていいわよ」
「‥‥‥ロリコン疑惑が再燃するので、やめときます」
「そう、残念だわ」
寂しそうな顔をする創造主様。
少し前にトシゾウは完全に創造主の権限を放棄し、『天使ちゃん5号』こと、この金髪少女を後任として創造主に任命していた。
元女神様は『頑張ります』と二つ返事で引き受けたそうだ。
そしてトシゾウはというと、彼にも遂に春が来ていた。
『ラウンジ色欲』のNo.2モニカちゃんとの同棲を開始し、デレデレした生活をここプリングの街でおくっている。
本人曰く『生まれてきて良かった〜でござる』とのこと。
「創造主様、いい加減本題に入りましょうか」
「そうだわ。ちょっと天界に来てくれる? 見て欲しい物があるの」
「‥‥‥天界に? 入っていいの?」
天界には俺の転移魔法では行けない。
どこにあるのかも不明だ。
何か結果が張ってあるようで、以前女神様の元に転移しようとして失敗していたのは、女神様が天界にいたためだ。
「今回は特別よ。元創造主にも確認したんだけど、わかんないからニア殿に聞いてみてって言われたの」
「‥‥‥トシゾウめ、面倒ごとを押し付けやがったな」
後でお説教だな。
「とにかく、今は天界の結界は解いてるから、転移魔法で連れてくわ。来てもらえる?」
「‥‥‥はい。役に立つかは、わかんないですよ」
創造主様は俺の身体に抱きつくと、掌に魔力を込めた。
「‥‥‥ここが‥‥‥天界?」
「天界の一室、創造主の間よ」
六畳一間の和室。
薄暗く汚い。
その上なんか空気も悪い。
布団が無造作に敷かれ、横の座卓にこの世界では目にしたことがない機械のような物が置かれていた。
「‥‥‥完全に引きこもりの部屋じゃん」
「私が使いだす前からこの状態よ。なんか理由があるのかと思って、片付けたりしてないの。これが創造主の正しい部屋の形じゃないの?」
「‥‥‥多分、片付けても大丈夫だと思いますよ。綺麗にしましょう、心まで汚れてきそうです」
こんな部屋で生活してたから、トシゾウはダメ人間になったんだ。
「後で片付けとくわ」
「そうしてください」
「そうそう、見て欲しいのはこれなんだけど‥‥‥」
創造主様が指さしたのは、座卓に置かれた機械。
「‥‥‥創造主様、なんか俺‥‥‥凄く嫌な予感しかしないんですけど。‥‥‥これって何ですか?」
「創造主専用の物らしいわよ。私も多少使えるようにはなったんだけど、詳しい事はわかんないの。世界にありとあらゆる命令が出せたり、生物を創造したりできるの」
「‥‥‥トシゾウがこの世界に転移して来た時って、確かこの部屋しかなかったって言ってましたよね‥‥‥」
トシゾウは、あっちの世界で200年ほど前に起こった戊辰戦争で亡くなった人間のようで、気が付いたらこの部屋に1人で寝てたらしい。
「そうね。それでこれを使って、世界を創ったって言ってたわ」
「トシゾウが転移してきたのは、200年前でしょ‥‥‥わかんない!」
「‥‥‥サトシ、どうしたの?」
その時代に、これがあっちや駄目なんだよ。
「‥‥‥創造主様、俺怖いんで帰りたい」
「駄目よ! 何か知ってるなら教えて!」
「‥‥‥だって、これ、アレでしょ‥‥‥」
‥‥‥形などは俺の知ってる物とだいぶ違うが‥‥‥これって‥‥‥デスクトップのPC?
「‥‥‥サトシわかるの? やっぱりこれを見てちょうだい!」
創造主様はそう言うと、機械を操作してディスプレイを見せてきた。
「最近色々触ってて気付いたの。なんか怖い事がいっぱい書いてあって‥‥‥これって誰かからの啓示とかかな?」
「‥‥‥メールみたいなものかな? 未読が‥‥‥うわ、2,158件!」
いやいや、誰からのメッセージだよ‥‥‥。
「‥‥‥メールってなんなの?」
「‥‥‥見てみます?」
「お願い」
俺は受信フォルダらしきものを開き、飛ばし飛ばしメールを確認していく。
『ようこそトシゾウ君。僕のプレゼントは気に入ってもらえたかな?』
『フフフ、良い世界を創ったじゃないか。トシゾウ君には才能があるようだね』
『ところで君、いい加減返事をしたまえ‥‥‥』
『トシゾウ君、無視するのも大概にしてもらえるかな? 急ぎ連絡を待つ』
『おい! 君はいったい何をやってるんだ! 自分の創った世界とはいえ、好き勝手やり過ぎだ!』
『おーい、トシゾウ君、頼むから何か返事をください‥‥‥』
『わかったよ‥‥‥君がその気なら、こっちにも考えがある』
『君と君の創った世界なんて、僕にかかれば簡単に破壊できるんだからね!』
『‥‥‥もう絶対に許さないよ。近々そちらに行くから覚悟しとくように』
俺は最後のメールを読むと、そっと機械から手を離した。
横で同じ画面を見ていた創造主様と、自然に目があった。
「‥‥‥さてと、異常ありませんでしたね。じゃあ俺はそろそろ帰りますんで」
「どう見ても今の内容、やばくない?!」
「俺は何も知らないし、何も見てません!」
‥‥‥そういえば、今は天界の結界は解かれてるって言ってたな。
「コラ、卑怯者! 絶対に逃がさないわよ!」
「創造主様、トシゾウと2人でなんか頑張れ! 大丈夫、君たちなら出来る!」
目指すは我が家となった、可愛い妻たちの待つプリングの宿屋だ!
俺は掌に魔力を込めた。
〜〜〜 投げる男 完 〜〜〜
【後書きのようなもの】
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!
当初この話、こんなに長く続けるつもりはなかったのです。
……なのですが、なにを血迷ったのか筆者が軽い気持ちであるコンテストに応募したところ、題名が良かったのか読んで頂ける方が増え‥‥‥これ、もしかして一次審査通過すんじゃね?っとか思ったあたりから、期間内に10万文字という文字数達成に追われ、眠れない日々を過ごしました(笑)
最後腑に落ちない方も多いかもしれませんが、最後まで読んで頂き本当に感謝しかないです!
またどこかでお会いしましょう!
あ、最後に一言、評価などいただけると大変嬉しいです!
2022.3.9 追記
トシゾウは戊辰戦争に巻き込まれて死んだ、ただの一般人です(笑)
かの有名なあの方ではありません:(;゙゚'ω゚'):
すいません、ちょっと遊び心で匂わせてしまいました。なんか怒られそうなので、この場をかりて全否定しておきますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます