54、賢い彼女



「あれが魔法王国か」


 プリングの街からはるか東。

 歩くと一月はかかる場所に魔法王国アルフォードはあった。

 本来であれば魔王城のある死の大地に行くには、海に面したこの国の港を利用して船で渡るそうだ。

 冒険の終盤に訪れる国。

 しかし今回は城にある魔法陣を強引に使わせてもらい、3時間程で到着してます。

 バルカンさんは依頼の順番がどうとかこうとか言って、魔法陣の使用をかなり嫌がっていたが、何を今更言ってんだという感じ。

 俺たちはその先の魔王城にまで既に行ってしまっている。

 なんならもう魔王と一戦してるんですけど。



 魔法王国アルフォードに来た目的は俺の魔法の習得。

 魔王城へ出兵時、かなりの兵士が魔法を使用しているのを見た。

 普通の人間が使えるんだ、俺だってもしかしたら使えるようになるかもしれない。

 異世界に来たんだからやっぱり魔法が使いたい。


「ニア様、やっと魔法使えるようになりますね」


「どうかな、俺は魔法の才能がないからな‥‥‥」


「そんな事ありません、ニア様ならきっとできます!」


 レイラは俺の腕にしがみつきながら、顔を見上げてくる。

 あれ以来、身体のどこかに引っ付いている事が多くなった。

 申し訳ないが、非常に可愛い。

 

「とりあえず行ってみよう」


「はい!」






「‥‥‥凄いな」


 魔法王国アルフォードは物凄く大きかった。

 街の中心にそびえ立つ城。

 周りを囲む街が果てしなく広い。

 城に続く通りは人で賑わっていた。


「さて、どうしようか」


 どこかに魔法を教えてくれるお店とかないのかな‥‥‥。


「ニア様、まず王様に挨拶しましょう」


「‥‥‥なんで?」


「勇者パーティーが、城に立ち寄ったらまず王様に会うのがRPGです」


「‥‥‥ゲームじゃないから無理だろ」


 いきなり訪問して、会ってくれる王様なんているんだろうか。


「大丈夫だと思います。依頼でここに来るってバルカンさんも言ってましたし、私の勘だと上手くいきます」


 レイラの勘は的中率の高い予言です。


「魔王城でちょっとやり合ったから、俺嫌われてる気がするんだよな」


「それも大丈夫です」


「‥‥‥なんか最近レイラ凄いな。ちなみに未来の何が見えてるの?」


「城の偉い人に、魔法を教わってるニア様が見えます」


 もう占い師ですね。


「未来が見えたら色々大変そう‥‥‥」


「今のところ大丈夫ですよ。嫌な未来が見えたら、そうならないように変えることが出来る事も分かってきました」


「魔王城で戦争を止めた時とかかな?」


 もう止めれないって確か言ってたような。


「あ、まさにそうです! 頑張れば未来は変えられるんですよ‥‥‥多分」


「やっぱり、なんか大変そう」


 『賢さ』ってなんなんだろう?

 レイラは見事に使いこなしてるが、俺の『賢さ』は完全にお飾りです。

 全く賢くなりません。

 ‥‥‥なんか恥ずかしい。


「まあ、ダメ元で行ってみようか」


「はい!」





 俺はもしかして、今後ずっとレイラの手のひらの上で転がされ続けるのでは?!


 ──俺にも未来が見えたぞ!


 ‥‥‥まあ、可愛いから良いや。

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