53、昨夜は‥‥‥今朝はお楽しみでしたね



「ニア様、おはようございます!」

 

 プリングの街。

 宿屋の俺の部屋。

 元気よくドアを開けて入ってくるレイラ。


「レイラ、まだ起きちゃ駄目。今日は医者を連れてくるから寝てなさい」


 魔法陣で城に帰還した俺達は、バルカンさんにアルフォード軍を撤退させた事を報告し、さっさと城を出てプリングの街に戻っていた。


「それが凄く体調が良くて、なんだか怪我も治ったみたいなんです」


「そんな事があるはず‥‥‥あれ? 俺も脇腹痛くないぞ‥‥‥」


 寝起きでベッドに腰掛けていた俺は、腰をひねって脇腹を確認した。

 ‥‥‥やはり痛くない。

 レイラはかなり傷ついていたはずなんだが。

 なんなら俺も一撃くらっただけだが、1000以上のダメージを受けていた。

 ちなみに、あと2回攻撃されたら死んでた事実が魔王の恐ろしさを物語ってます。


「ニア様、これはまさかRPG世界にありがちな、宿屋に泊まると全回復するシステムなのでは!」


「回復アイテムや魔法はないのに? 宿屋、有能過ぎないか?」


 寝たら治る。

 ‥‥‥なんか昔の精神論みたい。


「HPは全回復してますね」


「‥‥‥俺もだ」


 宿屋があれば医者いらず。

 今までこんなにボロボロになった事がなかったので、知らなかったな。

 一つ賢くなりました。

 死にかけたら宿屋で寝ましょう。



「‥‥‥レイラ何してんの?」


「え?」


 レイラは俺の横に腰掛けていた。

 この娘から俺に近づいてくるのは、かなり珍しい。

 普段は結構気を使うタイプみたいです。


「ニア様、私を好きにして下さい」


 下を向いてモジモジするレイラ。

 年頃の娘が何言ってんですか?

 色欲のイレイザに悪い影響でも受けたかな。


「‥‥‥急にどうしたの?」


「好きな女とは、私の事で間違いないですよね?」


 あ‥‥‥忘れてた。

 そういえば、続きを聞かせろと言われてたよな。


「もう一人にしないと約束もしてくれました」


 『ごめんな、一人にして』とか気取って言った記憶もあるな。

 ‥‥‥もう俺、告白してね?


「‥‥‥概ね間違いありません」


「では参ります!」


 ニコリと笑うと、レイラは付けていたマスクを脱ぎ捨て俺を押し倒した。

 急な攻撃に回避魔法は間に合わない。

 俺のマスクも剥ぎ取られました。

 わりとワイルド。


「‥‥‥ニア様」


 俺の胸で顔をスリスリしてるとんでもない美女。

 そっと頭を撫でたら、頬を染めて物凄く喜んでくれてます。

 猫みたいで可愛い。


 異世界から来た俺の唯一の理解者。

 ずっと一緒にいる仲間。

 確か仲間のままでいいのか? とかをちゃんと考えるんだったっけ。

 ‥‥‥考えるまでもなかったな。

 答えは『No』だ。

 


 ──俺はレイラが好きだな。

 


「レイラ、これからもよろしく」


「はい」




 今は回避魔法は使わないでいよう。

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