55、おじいちゃんにも効くの?



「其方が勇者レイラか」


 玉座前で跪く勇者レイラと俺。

 

「はい」

 

 凛として答えるレイラ。


「美しい女性だと聞いているが、何故顔を隠している。まさか偽物ではあるまいな?」


「美しいかどうかは知りませんが、誰にでも見せるものではありません」


「見せてみよ」


 アルフォード王は例えるなら、顔の良いちょい悪オジサン。

 逆らう事を許さない威圧感がある。

 

「嫌です、私は好きな人にしか顔を晒さないと決めましたので」


 あ、逆らった。


「ふん、ならば其方らと話すことはない。帰れ」


 うわ、めっちゃ怒ってますよ。


「後悔しても知りませんよ?」


 相変わらず凛としているレイラ。


「余は美しい物は腐るほど見ておる。後悔とは面白い事を言いおる」


 ニヤリと笑うちょい悪王。


「ニア様、顔見せても良いですか?」


 俺にだけ聞こえるくらいの小さな声でレイラ。

 

「‥‥‥いいけど、これ上手くいってるの?」


「任せてください。これで全て上手くいくはずです」


 この娘には一体何が見えているんだろうか。

 俺は完全に蚊帳の外です。


「ではどうぞ」


 立ち上がりマスクを脱ぎ捨てるレイラ。

 なんかカッコいい。


「‥‥‥ぐぬっ!」


 あ、苦しそう。

 ちょい悪王は顔を手で覆い、うずくまった。

 王の脇をかためる国の重鎮達数人もふらついている。

 相変わらず凄い攻撃力です。


「いかがですか。まだ信用できませんか?」

 

「‥‥‥勇者レイラ、その振る舞い気に入ったぞ。この国で好きにするが良い、力になろう」


「ありがとうございます」


 めでたくちょい悪王が堕ちました。



「して勇者レイラよ、何を望んでこの国に来た?」


「魔法を教えてもらいに来ました。詳しい人を紹介してください」


「シャラサード!」


「はっ」


 王の脇に立っていた、あの黒ローブのおじいちゃん。

 さっきレイラの顔を見てふらついてたいのを知ってるぞ。


「お前に任す」


「はっ!」


 跪くシャラサード。


「こやつはこの国の筆頭魔法使いだ。申し分あるまい?」


「ありがとうございます」


 何事もなく全て丸く収めたレイラ。

 脱帽です。

 

「勇者レイラ、余の第二婦人となるが良い。この国は其方の思うままにできようぞ」


 ん?

 ちょい悪王、ご乱心か?


「考えておきます」


 おや?

 レイラ、断らないの?


「良い返事期待しておるぞ」


「期待せずにお待ちください」


 アルフォード王はニヤリと笑うと、玉座から立ち上がり奥に下がっていった。


 俺は完全にいらない子でした。






 アルフォード城の一室。


「ニア様、上手くいきましたね!」


 暫く厄介になる事になったので、ちょい悪王が俺たちに部屋を用意してくれていた。

 ニコニコしているレイラ。


「‥‥‥なんかごめん、俺の為に」


「なんでニア様が謝るんですか?! 謝るのは私です、顔を見せてごめんなさい」

 

「いや、それはいいんだけど‥‥‥」


「アリスさんに言われてから、顔はニア様にしか見せないと決めていたんです。でも今回はそうしないと、話がややこしくなるみたいだったので‥‥‥」


 レイラの予言だな。


「王に求婚までされてたし」


「このまま放置しとけば大丈夫なはずです」


「そうか」


「‥‥‥ニア様、怒ってます?」


「え? 怒ってないよ」


 感謝はあれど、怒るなんて事があるわけがない。

 

「‥‥‥なんか暗いです」


「そうか?」


 本当に怒ってない。

 でも別に楽しくはない。

 魔法を教えてもらえる事になったのに何故?


 ──あ、わかった。この感情は‥‥‥。


 よし、悟られないようにしよう!


 が、占い師レイラにはバレたよう。

 急に顔を赤くして腕を掴んできたと思ったら、そのままベッドに押し倒されました。


「ニア様、嫉妬してくれてます?」

 

 目の前にあるレイラの顔は赤い。


「‥‥‥そうみたい」


「凄く嬉しいです。次から男の人と話す時は気をつけますね!」



 なんか幸せでごめんなさい。

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