49、鉄仮面は使う人と場所が大事
「レイラ!」
俺が魔王城に辿り着いて目にしたのは、倒れてボロボロになったレイラと、それを囲む魔族達だった。
──くそ、間に合わなかった!
「テメェやっと来やがったか! ニア、俺と勝負しやがれ‥‥‥ぐぼぁ!」
とりあえず知ってる奴がいたので、奇襲で顔に投げといた。
「お前ら、一人の人間相手にゾロゾロと‥‥‥どけっ!」
ありったけの石をくらえ。
ドスッドスッドスッドスッ!
数体の魔族は消滅させたがほとんど無傷。
石を避けた魔族は回避のためレイラから離れてくれた。
これが狙い。
「レイラ!」
急いで近づきレイラを抱きかかえた。
身体中に傷を負い苦しそうな顔。
「大丈夫か?!」
「‥‥‥ニア様! 良かった無事で」
「俺のことより、早く治療しないと!」
「私は大丈夫です。それよりあの人、物凄く強いです。気をつけて下さい!」
相当ダメージを受けているようだが、意識はしっかりしているようだ。
「‥‥‥良かった」
「相手が強くてですか?」
「俺は戦闘狂じゃない。レイラが生きてて」
正直間に合ってないが、ギリギリセーフだかな。
「ニア様、心配してくれてたんですか?」
「うん。‥‥‥ごめんな、一人にして」
「嬉しいです! もう一人は嫌です!」
首に抱きつかれました。
「さあ、早く手当てしに帰ろうか!」
「はい!」
レイラをお姫様抱っこして立ちあがった。
「‥‥‥おいテメェら、よくそこまで俺らを無視してイチャイチャできるな」
「あ、魔王軍四天王の最強戦士のイケメンヴィラル君、居たんだ! 羽は治ったみたいだね良かった良かった。じゃあ俺たちはこれで」
「居たのじゃねえよ! この状況で簡単に帰れると思ってんのか?!」
無理そうだから、しれっと帰ろうと思ったんだよ。
「ヴィラル、少し下がっていろ」
ヴィラル後方からの声。
「しかし!」
「いいから下がれ」
「‥‥‥はい」
軽く一礼して後ろに下がるヴィラル。
そして前に出てきたコイツが魔王だろう。
黒いコートを羽織り背が高い。
魔王の割に良い声をしている。
「お前がニアか」
「違います」
「テメェ、魔王様に嘘つくな!」
「ヴィラル、黙ってろ」
「‥‥‥はい」
怒られてやんの。
「ニア、お前は一体何なんだ?」
「今勝手にニアと認定しといて、何なんだとは何なんだ」
失礼な魔王である。
「異世界から来たのに女神の啓示を受けてないそうじゃないか。こっちに何しに来た?」
「魔王様は色々お詳しいようですから、逆に教えて下さいよ。俺は何しに来たんですか」
俺の情報は向こうに筒抜けのようだな。
「お前、面白い奴だな」
「20万円もする、ネタ装備の鉄仮面を被ってる魔王様ほど面白くありませんよ」
以前、俺が街で顔を隠すために使用した例の鉄仮面。
魔王は同じ物を装備していた。
恐ろしく不気味だが、かなり似合っている。
「俺はあまり顔を見せたくないんでな」
「余程イケメンなんですね」
「そうだといいんだがな」
わかりました不細工なんですね。
「では顔を見ないように、早いとこ帰りますね。ご機嫌よう」
レイラをお姫様抱っこしたまま、笑いながら後ろを向いた。
「帰れると思うか?」
「全く思えないんですよね」
実はさっきから逃げ出すタイミングを探してるのだが、この魔王全く隙がない。
「レイラ、ここで待ってて」
「ニア様、気をつけて!」
レイラを少し離れた場所に降ろし、魔族達の前に戻る。
「卑怯だぞ、そっちだけ大人数で! 魔王として恥ずかしくないのか!」
魔王と魔族、合わせて20人くらいかな。
「そちらは人間の兵士を大量に連れて来ておいて、此方だけ卑怯とはおかしな事を言うな」
「あれは俺が呼んだんじゃない、勝手に来たんだ」
むしろ足手まとい。
「じゃあこちらも言わせてもらうが、勇者レイラと戦ったのは俺一人だ。コイツらは勝手に付いてきてるだけだ」
‥‥‥ほう。
「レイラ、本当?」
「はい、一対一でした?」
少し離れた場所からレイラの声。
レイラがサシで勝負してボロボロにされたの?
レイラのレベルは487ですよ。
──あ、コイツやばい人だわ。
流石は魔王。
──さて、本気で逃げる方法を考えますか。
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