43、写真うつり失敗してもイケメン



「‥‥‥あんたら、もう人間じゃないよ」


 膝から崩れ堕ち、床で突っ伏すアリスさん。


「アリスさん急に入ってきて、失礼の極みですね」


 俺とレイラは2日程洞窟ライフを満喫した後、一度様子を見に外へ。

 宿屋の部屋で今後の作戦を立ててる所です。


 レベルは相当上がりレイラは185、俺は259まで上がっていた。

 地上に出た時、現れた神父がノーマスクのレイラの姿を見てひっくり返ったので、レイラも嫌々だったがマスクを付ける事にしている。

 今は部屋なので2人ともノーマスク。


「ちゃんとノックしたよ」


「部屋でマスクする人がどこにいるんですか!」


 バンと机を叩く俺。


「‥‥‥確かにそうね。あ、2人にお客さんだよ」


 フラフラと立ち上がるアリスさん。


「客? 誰ですか?」


 俺たち2人を知ってる人間は限られる。

 まさか女神様?

 魔王‥‥‥なんて事は流石にないか。


「城の偉い人みたい」


「あ、そっち‥‥‥」


 またくだらないお願いとかに来たんじゃないだろうな。


「どうする? ここに入ってもらう? 一応空いてる部屋に待機してもらってるけど」


「じゃあその部屋に行きます」


「わかった。後でお茶でも持って行くわ」


「レイラ、一応マスクして行こうな」


「嫌です」


 マスク問題だけは物凄く嫌がるレイラ。

 いつもは何でも言うこと聞いてくれるんだけど。


「また誰かひっくり返っちゃうから」


「マスクしたらニア様に見てもらえなくなるから嫌です」


 実は洞窟でノーマスクレイラをずっと見ていた俺は、最強の回避魔法を会得していた。

 レイラには内緒だ。

 今も絶賛使用中。


「あんた男心がわかってないね。そういうのは2人きりの時に見せる方が効果あるんだよ。自分だけが知ってる秘密とかの方が男は萌えるんだってさ」


「そうなんですか?!」


 アリスさんの話に食いつくレイラ。


「多分ね。だから2人きりの時に存分に見せてやんなよ」


「そうします! ありがとうございますアリスさん!」


 ペコリとお辞儀してマスクをするレイラ。


「行きましょう、ニア様!」


 レイラはルンルンで部屋を出る。


「あんた、その変な顔は最近流行ってるの?」


 レイラの後に続く俺にコッソリ話しかけてくるアリスさん。


「え? そんなに変ですか?!」


「‥‥‥そのうちバレると思うよ。むしろまだバレてないのが奇跡だね。しっかり見てやったら? 」


 ポンポンと俺の肩を叩き、ニヤニヤしながら退出するアリスさん。

 

「‥‥‥どうしてわかったんだ」


 瞼を薄く開け白目の俺。

 全てがボンヤリ見えるんです。

 

「そんなに変かな?」


 魔法を解除し俺も部屋を後にした。


 






「ニア殿、大変です」


「嫌です」


「まだ席に着いたばかりですぞ」


「席に着いたばかりで、厄介そうな話を急にする方が悪いです」

 

 客は騎士団長のバルカン。

 騎士団長が簡単に城を空けるな。


「急ぎお伝えしに来たのです。勘弁して下さい」


「‥‥‥もう、なんですか?」


「魔王軍に大規模な動きがあり、各地に散っていた魔族達が魔王城に集結し始めたそうです」


「‥‥‥ほう」


「こんな事態初めてなのです! なにか嫌な予感がします!」


 焦るバルカン。


「まさか、魔王ってわりとアレなのかな?」


 レイラの方を向く俺。


「‥‥‥あの魔族、ちゃんと伝えたようですね。まあ良いです、今度会ったらなんか理由を付けてやっちゃいましょう」


 物騒な娘。

 色欲のイレイザ、ここまでレイラを怒らせた貴方は凄いです。

 

「ワシには話が見えませんぞ?」


 キョトンとするバルカンには後で説明するとして、これで俺たちにはもう少し猶予ができた。


「なんか相手も勝手に守る準備を始めたようだし、俺たちも今のうちにレベル上げしとこうかレイラ」


「はい! 頑張ります!」



 洞窟ライフはまだまだ続く。

 

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