44、魔法王国アルフォード



「大変ですぞ!」


「‥‥‥もう、なんなんですか」


 洞窟ライフは一ヶ月が経過していた。

 生活は充実しレベルも上がっている。


「魔王城に外堀と城壁が追加されました!」


「‥‥‥戦争でもするのかな?」


 定期的に魔王軍の動きを宿屋に報告しに来てくれるバルカンさん。

 別に頼んではいない。


「今回の外堀の追加でいよいよ攻め難くなりましたぞ!」


 ひと月の間で、魔王城はゴリゴリと防衛能力が上がっているそうだ。

 城壁は3重になり、外堀まで追加された。

 城壁の外側には対馬用の馬防柵まで設置。

 ‥‥‥俺たち馬乗らないし。

 戦国時代の城ですか?


 なんか魔王は防衛の方向性を間違ってる気がするんだが‥‥‥。


「魔王侮り難し!」


 眉間に皺を寄せるバルカンさん。


「‥‥‥じゃあ、もう少し防衛に徹してもらいましょう。レイラ洞窟行こうか」


「はい、ニア様!」


 レベルが物凄く上がり、色々と神の領域に達してしまっているレイラ。

 『魅力』もさることながら『賢さ』がやばい。

 本や地図など一度軽く読むだけで、全て記憶しちゃいます。

 そして極め付けは数秒先の未来を予知出来るらしい。

 本人曰く、現在起こってる事象の演算をしたらなんとなく想像出来るようになったとかなんとか。

 もうなんか怖いです。


 一方、俺の記憶力諸々は変わらずそのままなんですけど。

 ステータスの『賢さ』は上がってますよ。

 なんでしょうこの違いは。

 俺はもしかしてアレなのか?


 当のレイラは最近『宇宙の真理が見えてきました』とか言い出してます。

 もう何かの宗教ですか?

 恐ろしい娘に成長しました。


 

「待って下され! 他にも厄介な事が起こっておりまして」


 席を立つ俺たちを引き止めるバルカンさん。


「まだ何かあるんですか?」


「実は、その魔王城に攻め込もうとしている国が出て来まして‥‥‥」


「え? なんで?」


 守りを固めた魔王城へ何故わざわざ攻め込む。


「その‥‥‥言いにくいのですが、女神の啓示を受けた勇者があまりにも現れないので、痺れを切らし自分達だけで魔王を討伐すると言い出しておりまして」


「女神の啓示を受けたレイラはここにいるよ?」


「本来であれば、旅立った勇者はその国にも依頼で立ち寄る予定だったのですが、それをニア殿達は飛ばしてしまわれているので‥‥‥」


「俺たちは修行中だって言えば? それにその国そんなに強いの?」


「魔法王国アルフォード、我が国を凌ぐ軍事国家です。もともと女神様に対する信仰も薄い国なので、我々の話をまるで聞きません」


 魔法王国。

 なにその胸がときめくネーミング。

 ‥‥‥行ってみたい。


「わかりました。とりあえず一度その国に行ってみます」


 魔法王国なんだから、もしかしたら魔法を教えてもらえるかも。

 せっかく異世界に来たのに、相変わらず俺は魔法が使えません。


「いえ、それがすでに魔王城に向かって兵を進めているようで、そろそろ到着してしまうようです。行くなら魔王城の方に‥‥‥」


「言うの遅くないですか? どう考えても間に合わないでしょ」


「これでも急いだのですぞ」


 魔王城はかなり遠い。

 俺たちがいるこの大陸から海を越えてずっと東。

 死の大地と呼ばれる島にあるらしい。

 向かってる途中で戦争始まっちゃうよ。


「‥‥‥機密情報なのですが、我が城から魔法陣で魔王城の近くに飛べます。本来であれば、船を手に入れる依頼など諸々こなしてから向かってもらうのですが‥‥‥今回は仕方ありません」


 初めから使わせろ。


「じゃあ、さっさと行って戦争をやめさせましょう」




 魔王城なんかどうでも良い。

 俺の興味は完全に魔法王国。


 ──俺も魔法が使いたい!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る