39、教会の下のパラダイス



 ダンジョン地下3階。

 松明の明かりでは頼りない程暗い。

 凹凸のある岩壁。

 数メートル先までしか見えない為、洞窟の先がどこまで続いているのかまるでわからない。

 進むたびに闇に飲み込まれて行くような錯覚に陥る。


「‥‥‥ニア様、怖いです」


 俺の服の裾を掴みながらレイラ。

 今にも泣きそう。

 洞窟内で時折り響く音。

 その度に小さな悲鳴をあげていた。

 おそらくモンスターの生活音。


「リアルお化け屋敷だな」




「キュー!」


「ひぃ!!」


 現れた黒く光る金属スライムさんの声で、ヘナヘナと床に座り込むレイラ。


「レイラ倒しちゃえ! いそげ逃げちゃうぞ!」


「‥‥‥すいません無理です、動けません」


「仕方ない」


 俺が石を投げて殲滅する。




【経験値90,210 獲得】


レベルが186に上がった

力3

素早さ4

身の守り2

かしこさ3

魅力2

HP6

MP3

それぞれ上昇



 ‥‥‥このダンジョンは、やばいかもしれない。

 さっきから金属スライムさんにしか出会ってない。

 そしてたまに出てくる黒光りする金属スライムさんは、経験値を90,000もくれる。

 


「レイラ、大丈夫?」


 レベルも上がったしホクホク顔の俺。

 

「‥‥‥駄目です、立てません」


 完全に腰を抜かしたようだ。

 仕方ない。


「おいで、急ごう」


 レイラの方に背中を向けて屈む。


「やった! おんぶしてくれるんですか?」


「奥が気になる、急ごう」


「はい!」


 レイラをおぶりながら、奥へ進む。

 もう正直『勇者の剣』よりも、このダンジョン自体への興味が強くなった俺。

 

 後ろでこっそり俺の背中に顔をスリスリしてるレイラを乗せて奥へ奥へ。

 




「‥‥‥凄い」


 ダンジョン地下5階。

 ずっと続いた細い洞窟が急に終わり、開けた場所に出た。


「‥‥‥綺麗、プラネタリウムみたい」


 背中でレイラの声が聞こえた。


「確かに」


 洞窟の広い空間。

 至る所でボンヤリと岩が光っていた。

 凄く綺麗。

 先程までの細い洞窟と違い、薄っすらと辺りが見渡せる。

 かなり広い、奥がどれくらいあるかまでは流石に岩の光源だけでは把握出来なかった。


「レイラ、あれなんだと思う?」


「モンスターですかね?」


 先程から遠くで丸いブヨブヨした物体が動いてるのが目に入っていた。

 軽く2メートルはありそう。


「狙撃してみようか」


「‥‥‥物凄く強かったらどうするんですか?」

 

「その時は逃げる」


 俺たちが通ってきた、洞窟の通路を通れなさそうなサイズ感。


「そうですね」


「じゃあやってみる。えい!」


 ガンッ!


 洞窟に響く金属音。

 

「ギュー!」


「あ、怒った!」


 一撃で倒せなかった。

 レイラをおぶってるとはいえ、それなりに力を込めてる筈なんだが。


「こっちに向かって来てます!」


「気持ち悪!」


 丸い大きな物体はドロドロ状になりながら、こちらに凄いスピードで向かって来る。


「やばい! もう一発!」


 ガギンッ!


「まだ生きてます!」


 こいつ強いぞ!

 スピードを落とすこともなく、こちらに向かって来る。

 むしろ早くなったか。


「よし! 逃げる」


「はい!」


 距離がかなりあったので、レイラを抱えながらでも余裕で通路に逃げ込めた。


「ニア様、来てます!」


「やっぱり気持ち悪い!」


 ドロドロ状になってるので通路に入って来てしまっている。

 ブチュブチュとかゴボゴボとか変な音を響かせながら迫り来る物体。

 流石にスピードは落ちている。


「これでどうだ!」


 俺は大きめな岩を出して通路を塞いだ。

 隙間はあるが簡単には通れまい。


「うわ、隙間から出て来てます!」


「もう気持ち悪いな!」


 隙間からドロドロと溢れ出る物体に向かって石を投げつけた。

 攻撃すると一度引っ込むのだが少しするとまたウニョウニョと出てくる。


「こいつしつこいな、魔族より強いんじゃないか?」


 合計3発投げた時ドロドロは消滅した。


「あ、消えましたね!」


「‥‥‥この洞窟はやばいな」


「私も、もうこの洞窟嫌です」


 泣きそうな声のレイラ。


 


【経験値1,082,520 獲得】


レベルが187に上がった

力3

素早さ3

身の守り3

かしこさ5

魅力4

HP7

MP4

それぞれ上昇


 

 桁がおかしい。

 一、十、百‥‥‥100万!


「‥‥‥レイラ」


「どうしました?」


「‥‥‥俺ここに住もうかな」


「え?!」




 パラダイスを見つけました。

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