28、まだ冒険は始めない



「ニア様! またレベルが上がりました!」


「もうレベル15か」


 勇者レイラが嬉しそうに駆け寄ってきた。

 『レイラ』とはユウカのこの世界での名前。

 名前は俺に決めて欲しいとせがまれた。

 ボキャブラリーが皆無な俺は、苦し紛れにレイラと名付ける。

 ‥‥‥やっていたエロゲのヒロインの名前とは言えない。

 本人は大喜びなので良しとしよう。

 知らない方がいいこともある。



「どうです? 私、綺麗になってますか?」


「‥‥‥魅力いくつ?」


「43になりました!」


「そうか、まずまずだな。もっと頑張ろうな」


「はい! ニア様に振り向いて貰えるよう、私がんばります!」


 正直に言おう。

 レイラはめちゃくちゃ可愛い。

 もうそこらの美人さんでは、到底太刀打ち出来ないレベルです。

 俺を見る周りの人の気持ちがわかった。

 二人でレベルを上げまくって素顔で街を歩けば、災害クラスにやばい気がする。






 宿屋の一室。


「其方ら、頼むから早く城に行ってくれんか。妾の威厳に関わるのじゃ」


「女神様、今更何を焦ってるんですか?」


 俺達はまだレイラが引きこもっていた村にいる。

 どうせなら少しレベルを上げてから城に向かおうと言う俺の提案に、レイラが乗った形。


「初めの城に行くのは低レベルでいいのじゃ。まだ冒険すら始まっておらんのに、勇者のレベルが15とは上げすぎじゃ!」


 そんな細かいことは知らない。


「サトシも密かにレベルを上げるでない! なんじゃレベル147って!」


「だって強くなりたいですもの」


「‥‥‥ニア様凄い」


 レイラとレベル上げしててわかった事。

 一緒に戦っても、経験値は1人にしか入らない。

 モンスターに多くのダメージを与えた方に、経験値は全て入ってしまう。

 俺が瀕死にしたモンスター相手に、レイラがトドメを刺しても俺に経験値が入るのだ。

 パーティープレイするなって事なのか?

 レイラが危険な時のサポートはしているが、基本暇なので俺は金属スライムさんを狩ってます。

 金属スライムさんは割と何処にでもいるようだが、動きが恐ろしく速い。

 剣を振るう今のレイラではまず追いつけないので、俺が美味しく頂いております。


「後生じゃ、これ以上遅くなると妾の言うことを誰も信じなくなってしまう」


 崩れ落ちる女神様。


「日頃の行いのせいでは? こういう行動が威厳を落とすんです」


 椅子に座る俺の膝の上に崩れ落ちている女神。

 

「妾は悩んでおるのじゃ、少しくらい優しくせい。頭を撫でておくれ」

 

「撫でません。降りて下さい」


「サトシ冷たいぞよ」


 膝から転がして落とすと、床をゴロゴロしてる女神様。


「ニア様、元はと言えば私が全て悪いのですが、なんだか女神様がかわいそうになってきました。そろそろ城に行ってあげませんか?」


「おお! ユウカはやっぱり優しい娘じゃ!」


 まあ、別に城に行きたくないわけでもない。

 いい加減、王様に会いに行きますか。

 

「わかった、明日の朝出よう」


 そう言えば勇者を見つけた報告もいるんだっけ?


 ガッツポーズする女神様はとりあえず無視しとこう。





【勇者レイラ】

レベル15

力32

素早さ27

身の守り25

かしこさ53

魅力43

HP62

MP52


【ニア】

レベル147

力403

素早さ372

身の守り368

かしこさ421

魅力385

HP679

MP364


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