27、絶対綺麗になってやる



「‥‥‥ユウカ」


 ユウカの肩を抱く女神様。

 魔族ヴィラルに襲われていた女性は、やはり勇者だった。

 うずくまり小刻みに震えている。


「もう魔族は居なくなったぞ安心せい」


 俺にはかける言葉すらない。


「サトシ手伝ってくれぬか。ユウカを部屋に運びたい」


「はい」


「キャア!」


 俺が女神様の反対から肩を抱こうとした時、ユウカは大きく震え顔を手で覆った。


 ──怖がられてる。


 魔族ヴィラルとの人知を超えた戦い。

 俺も化け物に見えたのだろう。

 勝手に召喚され勇者に祭り上げられ、戦いに無理やり駆り出されるユウカを少し不憫に思えた。


「すまない」


「待って下さい!」


 距離を取ろうとする俺の手をユウカが握ってきた。


「‥‥‥なんて呼べば‥‥‥どちらの名前で呼べば良いですか?」


 名前?

 ‥‥‥サトシとニアの事かな。


「じゃあニアで」


「‥‥‥ニア様」


 顔を上げたユウカの顔は物凄く赤かった。

 あ、マスクがない。

 燃えたんだね、ヴィラルめ弁償しろ。


 俺の魅力は勇者をも堕とす。






 宿屋の一室。

 ユウカのプライベートルーム。


「無理強いはしない、女神だって無視したらいい。魔王は俺が倒すから気にするな」


 ベッドに座る勇者ユウカを見下ろす俺。

 ユウカをベッドに運んだ後、女神様は退出させられていた。

 去り際に『最悪、色仕掛けでなんとかするのじゃ』と捨てゼリフ。

 無理やりユウカを戦わせるつもりはなかった。


 俺はレベルを上げてもっと強くなる。

 一番強いであろう魔王も俺が倒す。

 この世界で最強になるために。


 ──そう、魔王は俺が倒す。


 正直ヴィラルとの戦いが物凄く悔しかった。

 

 



「ニア様、私も名前を付けて良いですか?」


「名前とは?」


「ニア様のようなゲーム的な名前です」


「なんで?」


「この世界で生きていく為に必要かなと思いました」


「良かった、部屋を出る覚悟ができたんですね」


「いえ、勇者の名前がユウカでは変でしょ?」


「勇者? なるの?」


「私はレベルを上げて綺麗になりたい。ニア様のお嫁さんになるために」


 勇者の旅立ちの目的が、綺麗になる為とはいかがなものかと思います。



 最強になりたい俺。

 綺麗になりたい勇者。

 なんとも奇妙なパーティーが結成された。

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