23、女神の使い
「おはよう」
「わ、おはようございます!」
ベッドに座り、俺の顔を覗き込んでいるアリスさん。
新婚夫婦ですか?
「‥‥‥そんなに驚かなくても」
飛び起きて距離を取った俺を見て、悲しそうなアリスさん。
「昨日は一緒に寝たくせに」
あれは事故です。
それに何もしてません。
「違います、朝の男の子には色々あるんです」
「何それ?」
「今日も俺は元気です」
「‥‥‥あっ」
下腹部を布団で隠す俺を見て、察していただけたようです。
「あ! そうそう、あんたにお客さんが来てるんだ」
「‥‥‥こんな朝早くから客ですか?」
まだ夜が明けたばかり。
「可愛い女の子だよ」
「女の子?」
「なんか女神の使者とか言ってる」
‥‥‥夢じゃなかったんだ。
「アリスさん、今日のデートちょっと延期しても良いですか?」
「うん」
宿屋の客間の一室。
部屋に入ると可愛らしい10代半ばくらいの女の子が、椅子に座り足をぶらぶらさせていた。
「其方がサトシか」
「はい。女神の使いさんですか?」
「そうじゃ」
えらく若いな。
「女神様から聞いておるな? 其方を勇者のところに案内する」
「あれは夢じゃなかったんですね」
「女神様は凄いのじゃ。あの方は全知全能のパーフェクトなお方、敬え」
座りながら器用に胸を張る女神の使いさん。
「ん‥‥‥其方、ちょっとマスク取ってくれるか?」
「何故?」
「いいからちょっと見せてみい!」
立ち上がり強引にマスクをずらされた。
「ぎゃあ!!」
叫びながら目を覆い床を転がる女神の使いさん。
何、この人大丈夫?
「其方、何をしたのじゃ! レベルをいくつまで上げたんじゃ!」
はぁはぁ言いながら床にうずくまり、目に涙を溜め俺を見てる。
「レベル125ですって! 何これ、こんなの聞いたことない」
驚きすぎて話し方変わってますけど?
若いのに年寄りくさい話し方だと思っていたが、やっぱり演技かな?
「女神の使いさん、人のステータス見れるんですね。凄い!」
「フッフッフッ女神の力を侮るでないぞ。妾は最強じゃ」
無い胸を張り、女神の力を自慢する女神の使いさん。
「‥‥‥今のは女神様本人じゃなくて『女神の使い』を侮るなということでいいんですかね?」
「そういうことじゃ」
「一つ良いですか?」
「なんじゃ?」
「その話し方、おじいちゃんみたいで見た目と合ってませんよ。昨日の夢の中みたいに、普通に話した方が似合いますよ」
「このほうがなんか凄そうじゃろ! 女神の使いが舐められたら、女神の威厳に関わるのじゃ!」
「女神様は部下居ないの?」
「うるさい! いっぱいおるぞ、侮るな」
女神の使いさんは怒ってるが、俺の顔を直視ししてるので顔は真っ赤っか。
「あなた、女神様ですよね」
「‥‥‥え? サトシは天才か、どうしてわかったのじゃ?!」
驚く顔の女神。
女神様は少しアレな人かもしれません。
「‥‥‥なんでご自身で来たんですか?」
「‥‥‥頼める奴がおらんかった」
やっぱり部下居ないんだ。
「女神様とりあえず、座って話しましょう」
「そうじゃの」
椅子に座る俺。
その俺の膝の上、俺の方を向いて座る女神。
電車の座席で抱き合い見つめあう、バカップルのよう。
「どう考えても座るのはそこじゃないでしょ、あっちの椅子にどうぞ」
「妾はサトシの顔が気に入った。いつも近くで愛でてやるぞ」
ベタベタ触らないで下さい。
「失礼しますね、お茶お持ちしました」
扉を開けてアリスさん。
ガシャーン!
お盆ごとお茶を落とし、凄い顔で同じ椅子に座る俺と女神を見ている。
「‥‥‥あんたロリコンだったの」
修羅場ってやつですかね?
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