24、俺はもう死んでいる



 なんとか修羅場を乗り越えた俺は、勇者のいる村に向かって女神と共に街道を歩いていた。

 出かけ際にちゃんと『いってらっしゃい』と言ってくれたので、誤解は解けたと思います。

 村は歩いて半日ほどの距離らしい。


「サトシはどうやってレベルをそこまで上げたのじゃ? 転移してからの期間を考えても早すぎるぞ」


「その前に‥‥‥もうその話し口調でいかれるんですね、いいんですね?」


 読者様が混乱します。


「妾は女神の使い、この演技を続ける」


「承知しました」




「で、どうやってレベルを上げたのじゃ?」


「石をいっぱい投げました」


「‥‥‥なんかわからぬ」


「こうやって」


 袋から小石を一つ取り出し、遠くにいるネズミみたいなモンスターに投げつけた。

 ネズミは小石で吹き飛ぶと消滅してお金に変わる。


「‥‥‥なんかズルいぞ、剣を持って戦わんか」


「投擲スキルです」


「なるほど、そう言うとかっこいいの!」


 この人を騙すのは簡単かもしれない。


「因みに勇者ってどんな方なんですか?」


「ユウカは可愛らしい娘じゃ」


 ユウカとは勇者の名前。


「なんで宿屋から出て来なくなったんです?」


「向こうの世界に未練があったらしくてな。あとモンスターが怖いと泣いておった」


「全部女神様が悪い。未練があるのに無理やり召喚してかわいそうですよ、なんとか元の世界に戻せないんですか?」


「前にも言ったが無理じゃ」


「決まりなんでしょ? ルールは破る為にあるって昔聞いたことがあります」


「無理じゃ。戻った所で向こうの世界では死んだ事になっておるから、色々ややこしいぞ」


「死んだ事って、完全に人攫いですね」


 人攫い凶悪犯女神。


「何か勘違いしてるようじゃが、召喚出来るのは死んだ人間だけじゃ」


「‥‥‥そうなんですか?」


「そうじゃ、だから戻っても大変じゃろ?」


「質問良いです?」


「うむ」


「もしかして、俺も向こうで死んだんですかね?」


「多分そうじゃろう」


 あ、俺死んだんだ。

 雷に打たれたら‥‥‥そりゃ死ぬか。


「なるほど」


「サトシは受け入れるのが早いの。ユウカもそれくらい順応してくれたら良いのだが」


「俺はこっちの世界の方が楽しいですし」


「それは良かったの」


「さて、初の冒険に出たわけですし、俺はモンスターを倒しながら進むので、気にせず進んで下さいね」


 石を構えた。

 俺はレベルを上げます。

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