23・彼女は死なず

「で、その残りの連中はどこに?」

 シェイジェが問う。

「ヴェイグ、お前がもうラズーにたどり着いてる事は奴らに知られてると思うか?」

「いや、まだの可能性がだいぶ高いよ。もう牢を出てる事も知られてないんじゃないかな」

「ならキング階級のラズーは自分の部屋にいる可能性が高いな」

「まあほぼ間違いないね」

 ラッカスとヴェイグの断定。

「奇襲をかけれるな」とエリザ。

「あの、イザベラさんはまだ”命の書”を持ってるんですよね?」

 唐突なアミィの質問。

「はい、しっかりと」

 頷くイザベラ。

「なら、逃げるのは」

「正直、それはやめた方がいい。今、逃げたら、おそらく奴らは僕らを、グランデを襲撃したテロリストと、それを手引きした協力者として公表すると思う。ルメリアどころか全世界を敵に回す事になる」

「だろうな」

 ヴェイグの言葉にすぐ頷くラッカス。

「戦うしかない。今ならラズーとアシャナさえどうにかすれば、丸く納めることすら出来るかもしれない」

「まあ、やり手政治家の後ろ楯もあるしな」とヴェイグを知っていたエリザも頷く。

 そういう流れで6人は、ラズーの部屋があるキング階級のエリアへと向かった。


ーー


 グランデに侵入した仲間が、ラズーの元へ向かうのを決めたのと同じ頃。キーリアが意識を奪われてるために、機械兵団は新たに出現しなくなり、残っていた者も全て倒しつくしたレグナ。

「シオン」

 そこでグランデの方を見て、キーリアをシオンが抑えている事を知ったネイサ。

「いい仲間を見つけたものね」

 聞こえた声に、すぐにその方向にレグナと共に振り向く。それは聞こえるはずのない声であり、機械兵団の残骸の山の上に立っていたその女性は、そこにいるはずのない人物だった。

「ルイーヤ」

 驚きよりも、喜びよりも、ネイサはその声と表情に恐怖を滲ませていた。

「師匠とは言ってくれないのね」

 平然と、昔と変わらない笑みを見せるルイーヤ。

「それにそんなに驚いてないわね」

「あなたが」

 そう、実際そんなに驚きはしなかった。

「あなたが生きてるとは思ってた」


 ”命の書”を継いでから2年ほどだったあの日。

彼女が死んだはずのあの日。


「ほんの少し前からだけど、生きてるだろうなって気づいてた」

彼女が死んだはずの瞬間。その時から、ほんの少し前まではネイサも彼女の死を信じていた。

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