第23話 シューティングゲームにもいろいろある
「すごい数だな」
日曜日。俺は、朝からルージュさんから届いた動画のリンクを片っ端から見ていた。
テーブルスペースの帰りに送ってもらって車を降りる直前、サクッとスマホを出して連絡先を交換したというかさせられたのである。
母親が高校生の先輩と連絡先を交換する光景に紅理子ちゃんが微妙な表情をしていたが、俺としてはこれから教えを請う先生の連絡先をいただいたようなものと割り切っていた。
その後、しばらくしてから怒濤のように情報が届いたのだ。まずは動画を観て勉強するというか『弾幕を見慣れろ』ということらしい。
「全部あたしのプレイ動画だから、解説いるときは言ってね!」
というメッセージが添えられていたのだが、解説を求められる段階にも至れていない。
まずは、馴染みのある蜂を見る。
何をやっているかはさっぱりわからない。倒し方のコツがあるのかルージュさんに聞いてみたら「攻撃を当てながら気合で避けるのよ」というなんとも中身のない返事だった。
しかも、蜂は色々いた。シリーズになっていて、それぞれに最後には隠しボスとしているらしい。
その全部をRUG、つまりルージュさんは危なげなく撃破して動画をアップしているようである。というか、結構大々的にRUGリンク集とか、スーパープレイ動画とか、色んな形でまとめられていた。
「本当に、トンデモない人だな」
そりゃ、こんな人がゲーセンに行ったら注目される。あの真っ赤な出で立ちは目立つし。
動画の中には、あの穴場にあった弾幕シューティングに分類されないシューティングのプレイ動画もあった。今回は弾幕シューティングをテーマにするつもりだが、俺の知る数少ないゲームでもあるので、見てみることにした。
「んん? なんだ、これ?」
弾幕シューティングは基本的に自機はほぼ弾を撃ちっぱなしで「やられる前にやれ!」とでもいうようなプレイに見えた。
だが、このゲームは無駄弾を撃たない。
どころか、敵を全滅させていない。
「同じ色を狙っている?」
解説をいくつか見てみると、同じ色の敵を倒すとボーナスがあり、スコア=経験値でスコアを稼がないと弾の威力が上がらない、というようなシステムらしい。
ゆえに高得点を狙う必要があるということだ。シューティングゲームにロールプレイングゲーム的な要素が加わり、やっていることは敵の色にあわせて撃ったり逃したりするパズルのようだ。
見ていて、ちょっと面白くなってきた。
「このゲームも雪花は知っているようだったな」
弾幕だけにこだわらず、こういう要素も入れてみるか?
弾幕シューティングをメインに据えるが、それだけでは足りない気もしたのだ。このゲームの要素も取り入れれば話を膨らませられるかもしれない。
とはいえ。
「話のネタだけじゃなく、弾幕シューティングの勉強はしないとな」
自分でプレイするのはあまり難しくない方がいいだろうと、いくつかのゲームを紹介してもらっていた。その中の一つをパソコンでダウンロード購入する。
妖怪的なものがモチーフとなった和風のゲームだった。シリーズが沢山あったが、その中では一番古いものを選んでみた。
「これなら、いける、か?」
やってみると、蜂のゲームよりは敵の攻撃は解りやすい。その上、難易度調整ができるのでEasyで遊んでみることができる。雪花は俺にあわせた弾幕を創ろうとしているのだ。プレイする分には身の丈にあった難易度で十分だろう。
物語のネタにしたからと言って、作者がそのネタにしたものに卓越した技術を持つ必要はない。できる人を取材して、学べばよいのだ。
ルージュさんの動画で観て勉強して慣れ、身の丈にあった実践だけをそのゲームで行う。
こんな方針で十分だろう。
一日ゲームに埋もれて疲れ果てたが、ぼんやりと作品の構図は見えてきた。これを形にしていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます