第21話 衝撃の事実的な

「じゃあ、今日はこれでお開きにしましょ!」


 前は先に帰らされたが、今日はみんなでゾロゾロと帰ることになった。

 囲炉裏さんとゴージャスさんとは玄米テーブルスペースが入っているビルの前で別れ、


「あたし車だから、乗ってく? というか乗ってきなさい!」


 とルージュさんに強引に誘われて、車で送ってもらえることになった。近くの駐車場に止めてあるのを、ここまで回してくれるということだ。


「今日のはどうだったッスか?」

「そうだな。前のとは大分趣が違ったけれど、これはこれで楽しめたな」


 すると、kurikoちゃんはレンズの奥の瞳を細め。


「前回ほどの衝撃はなかったみたいッスね」

「今回はTRPGがどういうものかは知ってる状態だったからな。そこはネタバレしてたようなもんだから衝撃はどうしても少なくなる。それでも、前回のゲームよりも自由度が段違いに高くて、それでいてキャラクターとして奔走していく軌跡として物語が生まれていくって感じは新鮮だったよ」

「笑太パイセンらしい理屈っぽい感想ッスけど、得るものがあったならよかったッス。できたらまた遊んで欲しいッスよ」

「そうだな。さすがに二週連続はしんどかったけど、またいずれ遊んでみたいとは思うな」


 正直な気持ちだった。


「では、少し時間を置いてお誘いするッス。約束ッスよ!」

「ああ、約束だ」


 なんだか強引に約束を取りつけられた気がするが、まぁいいだろう。TRPGは俺の創作に色々といい影響を与えてくれる。雪花を笑顔にするのにも役立つだろうしな。


 そこで、目の前の道路に真っ赤な車が止まり後部座席のドアが開かれた。見るからにルージュさんの車だろう。


「あ、先に乗るッスね」


 当たり前のようにkurikoちゃんが乗りこみ。


「鐘太パイセンもどうぞッス!」


 続いて乗りこむように勧めてくる。


「あ、ああ。えっと、お邪魔します?」


 勝手が解らず、運転席のルージュさんにひとこと言って乗りこんだ。


「おやおや、なんだか不思議そうだねぇ」


 後部座席のドアを閉めても、まだ発車しない。


「いえ。なんというか、kurikoちゃんがあまりに自然に乗りこんでいたので」


 さきほど誘われたのは俺だけだ。事前に乗せてもらう約束をしていただけかもしれないが、それにしては、勝手知ったる感じで乗りこんでいったのが引っかかったのだ。


「そりゃそうッスよ。これ、うちの車ッスから」

「え? ルージュさんの車なんじゃ?」

「だから、うちの車なんスよ」


 どういう、ことだ? いや、想像はつくが。


 ルージュさんと、kurikoちゃんを見る。

 低めの背丈と、それに反して大きめのとある部位。

 紅を意味する名前のルージュと、紅理子という名前の紅。

 ルージュさんはフルリム、kurikoちゃんはアンダーリムと形は違うが、赤い縁の眼鏡。

 運転席からこちらを振り返る顔と、隣の顔。

 よく見れば、顔立ちがかなり似ている。


「もしかして……姉妹ですか?」


 ルージュさんに尋ねると。


「おやおやおやおや、嬉しいことを言ってくれるね!」

「やっぱり、そう見えるんスね」


 嬉しそうなルージュさんと、なんだか疲れた様子のkurikoちゃん。


「あんまり調子に乗ると紅理子に怒られるから、ちゃんとしますかね」


 ルージュさんは居住まいを正し。


「運転席から失礼しますね。いつも娘がお世話になっております。三田紅理子の母の三田真紅しんく(四十二歳)《かっこよんじゅうにさいかっことじる》と申します」


 と丁寧に、年齢もつけて自己紹介された。

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