第8話 初日の恥はかき捨て ⑧
夜、ボーッとテレビでネタ番組を見ていたら、堀川先生から電話がかかってきた。
「ごめん、ほんっとゴメン、気遣えなくてごめんね。私、すっかり忘れてたんだわ、友利主査の悪い癖」
癖? あれ、癖なの?
「く、草尾さんに聞いたんですか」
「え? 草尾さん? なんで? 私は友利さんから聞いたんだけど。松島先生の手を握ったら逃げられた〜って」
「あ、当たり前でしょ!!!」
「本当にごめんね、二人にしたら危ないって気付くべきだった。本当にゴメン」
「ってゆうか、なぜ、友利主査が先生に・・・そんな事を」
だいたい、二人は電話番号交換しあってるの?
「ゴメンね、一応、友利さんも、冗談と、限度以上のハラスメントの区別はついてると思ってたんだけど、松島先生には嫌な思いさせたかな?」
「・・・」
「今度やったら、盆の窪突き刺すってキツく叱っといたから、本当に申し訳ない」
「・・・先生は、平気なんですか」
「ん? あー、私、冷たい?」
「いえ、そうじゃなくて、何だか、当たり前のことみたいにサラッと話されるから」
「ああ・・・そうか、うーん・・・私はね、ま、今まで色んなことがありすぎて、心が麻痺しているのかも。手を握るくらいイイじゃん、とは思わないけど、まあ、慣れてしまってるかもね。あれで、友利さん、小心者だし、それ以上のことはしないだろうって思うからかな」
「・・・」
「以前ね、以前って言っても、そんな昔のことじゃないけど、友利さん、市大病院でレントゲン技師だったんだけど、そこの若手に軽くちょっかいかけたら、何と、相手が本気になっちゃって、それで保健所に異動してきたって過去があるの。だから、ちょっかいかけてもいい相手を選んで、ほどほどにしか寄って来ない、はずなんだけどね」
あまりに衝撃的な話で、もう脳がついて行っていないんですけど。
「だからって許されるはずないよね。どうしよう、セクハラで訴える?」
「・・・そんな大事にするつもりはないです」
「そうか・・・ホントごめん、ありがとう。・・・友利さん、あんな人だけど、仕事は出来るし、男気もあるし、何だかんだで頼れる人だから、許してもらえて、本当に嬉しい」
あんなおじさんの肩まで持つんだ、この人。
「で? さっき、何を言いかけてたの? 草尾さんがどうしたの?」
「え、え、ああ、いや、何でもないっす、イヤ、ホント」
「ん? 何かあった?」
「何っっにもないです、本当に。大丈夫です、いや、わざわざお電話いただいてしまって有難うございました、じゃあ、また明日もよろしくお願いします、失礼します!」
「え、あ、はい、じゃあまた明日ね」
・・・で、結局私は明日からどうすればいいのでしょうか。
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