第11話 激しい勘違い
「ひっぐ、ひっぐ」
「おーよしよし、あとは家まで送ってあげるから」
「・・・・・・おんぶ」
「いいよ。ちょっと待ってろ」
小学3年生でおんぶとか恥ずかしくなったりしないのだろうか。まぁ、まだ低学年ってことで大目に見てあげよう。
「よいしょ。めっちゃ軽いな」
「重いって言わないのはお約束」
「ちょい、もうちょっと上にいって」
「ほい」
ほんと、紫乃ちゃんは軽かった。20キロあるよね?随分と華奢な体をしてらっしゃる。
さてと。
仙山線。枯葉が線路に溜まったら運休になることで有名な電車で帰ろうと思ってたんだけど、どうやら今日は地下鉄で帰った方が良いらしい。
だけど・・・。
うっかり俺は手紙に載っていたこの子の住所を記憶も何もせずに忘れていたのだ。
「紫乃ちゃんちの住所わかる?」
「手ちょうのうらに、書いてあるよ」
そう言って学生証を渡された。小学校で学生証って・・・この子何者なんだろう。
「オッケー。タクシーで帰ってもいいけどどうする?」
「タクシーはくさいからいや」
地下鉄もほどほどに臭いけどね。
「・・・しののこと、おバカだと思ってる?スマホくらい持ってる!」
住所が言えないことで勝手にプライドが傷ついたのか、おもむろにスマホを取り出すと話し始めた。
「HEY Sea Lee.家の住所おしえて」
『わかりません』
「おバカさんなSea Lee.電話番号をおしえて」
『管理者権限により、表示できません」
「・・・けちんぼ!」
勝手に自爆して怒ってる。
耳元で話されるから少しうるさいけど、元気があるのは良いことだから気にしないでおこう。
最初はおとなしい子だなって思ってたんだが、そうではないらしい。姉あっての妹ここにありって感じで。
「のぼる、ごめん。ちっともお役に立てなくて」
「おじさんが電話かけてあげるから、とりあえずロック解除してよ」
「今のしのは探偵だから。昼の顔と違う」
「もう18時だけどまだ明るいから!まだ夜の紫乃ちゃんにならないでよ」
「・・・仕方ないなぁ」
おそらく紫乃ちゃんが顔認証でロックを解除すると、俺の目の前にスマホを構える。大量の電話やらLIMEが。お父さん、お母さん、それに美兎ちゃんからの連絡で埋め尽くされていた。
そのグループLIMEに投下したのは紫乃ちゃん。
しの『生きてるよ』
父『ま じ か !!』
母『もう!心配させてっ!!」
美兎『バカしのっ!今どこ?』
しの『のぼるのとなり』
美兎『ほんとに!?はーとマーク』
美兎『♡♡♡』
しの『ねーちんうざい』
美兎『迎えにいく!!!!』
美兎『待っててね』
しの『地下鉄の駅まできて』
・・・なんか、内容見ない方が良かったかな。めっちゃプライベートじゃん。
「ってことで、エスコートよろしくのぼる」
「紫乃ちゃんどうやって来たの?」
「・・・Sea Leeに聞きながら来た。近くのおいしい焼肉屋って聞いたら2番目に出てきたよ」
「2番目か、惜しいな」
「ううん、のぼるものぼるのお店もすごいよ。最初は店がイブくさくてバカにしてた。ごめんね」
「確かに換気良くはしてるけど、焦げ付く匂いは強いよなー」
「・・・それが無くなればお客さんいっぱい来る」
ん、もしかしたら紫乃ちゃんは匂いに敏感なのかもしれない。動物園とか行けないかな?水族館は?
って・・・なんで俺は今この子とおでかけしようとしてるんですかね。
「ねーちんの、言う通りかもしれない」
「何が?」
「のぼるは白馬の王子さまで筋肉マッチョでライトセーバーで肉食系男子!」
ライトセーバーじゃなくてライフセイバーな!後、他の3つは何にも合ってないぞ?
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