第10話 尾行者Xの謎
えっと、誰かにつけられてる?
うちの店の営業時間は16時までという昼特化型だ。まぁ、17時から別の居酒屋が同じ場所で店を開くから、賃貸料も半分になっていてコスパが良い。
だから、17時には店のオーナーが交代する形で俺は帰宅できるんだけど、店を出てまだ陽が差して明るいアーケードを歩いて、Destinyストアのところで振り返ると、水色のジャンバーがゲーセンの入り口からひょこっと出るのが見えた。
あれ、紫乃ちゃんじゃね・・・?
まだ明るいと言えど、もう夜の人たちが活動し始めるこのエリアにいるのはまずい。親はどうしたんだろうか?
一緒にゲーセンで遊んでいるなら話しはわかるんだが・・・なんかプールの時みたいに1人だけ目を離してしまう怖さが頭をよぎり、そのジャンパー目掛けて行ってみた。
「紫乃ちゃん、何してんの?」
「・・・・・・しのじゃないよ?」
黒髪おかっぱの紫乃ちゃんは座敷童みたいで目立つ。どう見ても紫乃ちゃんなんだけどな。
パッと駆け出す紫乃ちゃんがクレーンゲーム機の奥へと消える。
俺、嫌われているんだろうか。
嫌われているかは今は置いといて、俺がこの後すべきことは、おそらく二階のメダルゲームコーナーにいる両親に声をかけることだろう。
エスカレーターで二階に行ってみる。麻雀ゲーム台を抜けて、メダルコーナーに到着したが、いくら歩きまわってみても、今日会った親御さんと一致する顔が見当たらない。
もしや、一人で来たのか・・・?
時間も時間だし紫乃ちゃんが危ないと思って階段で駆け降りる。
すると、プリクラ機のかげに紫乃ちゃんがいた。クレーンゲームの景品を両手に持っているいかにもっていうメガネ男もいた。
「ぐふふふ。こんなところで何してるのかな?」
「・・・・・・」
「黙ってたらわからないよ?ぐふふ。お兄さんについて来なよ」
紫乃ちゃんが口をパクパクさせて固まって・・・否、怯えていた。どんどんと壁のほうに押し込まれていく。
俺はとりあえず持っていた傘の柄を男の股間に通し、前の方から後ろにおもいっきり引っ張ってやった。
ガッ!!
「ぐぎゅおげのびおりどるるるる!!」
奇声を上げてその場に男が崩れ落ちた。
「おい、うちの子に何をしてるんだ」
「ひっ!?親ぁ?」
「何をしてるんだと聞いている!」
「な、なんでもないですー!!」
メガネ男は股間を押さえながら慌てて逃げていった。
「さてと、おじさんにどういうことか説明できるかい?」
親がいなかった。つまり、この子は一人で来たということだ。確か、小学3年生、教えてもらった住所はここから地下鉄で5つ離れている。
「の、のぼる・・・」
「やっぱり紫乃ちゃんじゃないか」
「こ、怖かったああああ!!」
飛び付いてきた紫乃ちゃんを優しく抱きしめてあげた。
怖かったのか、しばらく俺の胸で泣いてしまった紫乃ちゃんであった。
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