第14話 誠実と有能

 会社との話し合いの中、そういうことだったのか…と徐々に家を建てるための本来の流れを我々が分かっていくのと同時に、上司の方も、我々から話を聞くことで、我々が受けていた打ち合わせ等の流れや内容が、いかにずさんであったかを初めて知っていくのでした。

 そういえば、Mさんは、途中小さな問題が生じた時、自分の保身のため、上司に少し違う説明をしてしまったと言っていたことがあった。そこで気がつくべきだった。 

 今回の大問題もその本質は変わらず、我々にした説明と上司にした説明にだいぶズレがあったようだ。修羅場突入のあの夜、Mさんが我々にした謎深き説明と、上司を呼ぶときにした状況説明は全く違うものだったのです。  

 噛み合わないわけです。嘘をつかれ、突然呼ばれた上司Kさんも気の毒です。

 保身のために双方に都合よく話してしまったとMさんはすぐに過ちをみとめたのです。すぐにバレるのに…より混乱するのに…まさにご乱心ですよ。

 そして、お店のほうの設計がかなり困難を極め、滞っていたことを、上司にも周りの誰にも他の部署にも相談も協力依頼も問い合わせすらもろくにしていなかったのです。

 上司としても、一応、ポイントポイントでのチェックはしていたものの、その都度Mさんが作り上げたであろう書類上では問題なく、新人でもないMさんの「問題ありません」を信じて決裁していたよう。

 お店の部分に関しては、一般的な居住部分とだいぶ違う。まず入り口をつけるところからも、すんなり解決できず、一度壁で作って組み立て後に穴を開け入り口にするしかできないと言われ…。そんなの壁を作るお金と穴開けてドア作るお金とダブルでかかっちゃうじゃん!なんでよ!

 入り口を地面とフラットにも出来ず、渋々ステップを付けるのだが、住宅の玄関以外の場所にステップをどう付けるか、ただただ何週間も悩んでいたMさんを思い出す。リフォーム部門もあるんだから、新築だけどイレギュラー案件だからリフォーム部門に相談とかしてみればいいのに、してなかったMさん。なに?恥ずかしがり屋さんなの?っって仕事なんだからそんなんで許されるか!

 

 最初の印象はあまりよくなかったMさん。営業職のわりにあまりニコニコもせず軽妙なトークもなく、お昼ぐらいに会ったのに後頭部に寝癖。お昼寝してた?そして、我が家の状況や条件を聞いて、ちょっとうちでは難しいかもと言われたり。

 しかし、その後に、我が家の条件に合う案内を電話してきてくれたり、土地などの物件も我が家に良さそうなのがあると連絡してくれたり。そんなところから、何がなんでも売るとかって感じがなくて、なんだか誠実さを感じていたのです。

 打ち合わせ中も、事務的な感じがなくて、ちょっと希望通りにならなく行き詰まって、こっちが、もうこれでいいんじゃない?ってなっても、いや、ちょっと待ってください、こっちのほうが…とかこれならいけるかな…と、その場で時間をかけて考えてくれたり。ただ、そのおかげで、打ち合わせの時間がめっちゃ長いのが、効率的ではないなぁとは感じていた。

 誠実さは感じるし、人間味もあるが、少し、大丈夫かな?と不安を感じる部分も見えてきた。毎回、図面に決まったことを書いていくのだが、前の打ち合わせで直したところが直ってなかったり、打ち合わせ後にもらう図面も、今回打ち合わせて変わったところは変えてあるが、それ以外のところが最新じゃなかったり。こちらでは記録してるので大丈夫ですと言われそれを信じた。

 そして、チラリと見えるカバンの中は書類がごちゃごちゃで、いつもゴソゴソと探してる。不器用なのかな?整理が苦手?とは感じていた。片目を瞑って、中堅のようだし、経験もあり、まぁ大丈夫でしょと思ってしまっていた。

 さすがに、最新の図面がもらえないのは、こちらも分からなくなって困るので、夫がPCに自分で間取りの図をつくり、その中に、決定したもの、仮のもの、未定のものと色分けをして、日付も入れて更新していくようなデータを作ってくれた。ナマケモノには考えられない細やかさと手間をかけてやってくれて、わたしとしては、そこまでするぅ?と思っていたのだが、のちにこれが大変重要な証拠や手がかりとなるのです。

 

 結局は、お店部分でうまく進めることができなくなり滞ったことで、住居部分の検討、確認にも手が回らず、建築期限を間に合わすために、最終契約もできないまま注文を出してしまったということらしい。検討確認、変更契約ができなかったのか、する気がなかったのか、うっかりしたのかは不明だが。

 上司のKさんと話し合いを初めた当初は、双方、計画を軌道修正して進める方向で動いていたが、聞けば聞くほど、我が家サイドは、納得がいかなくなるのです。

 止められなかった据え付けだけは済み、そこで一旦工事は全て止めて、会社vsナマケモノ家で話し合うこととなったのです。

 こんな中、精神的に重傷を負い地を這うナマケモノは、なかなか思っていることを、すぐに言葉にできないのです。一方、夫は、思ったことは思った時に、全て言葉にして相手に伝える能力を持ち合わせていたのです。これが非常に助かった。

 ナマケモノは、話し合い後になんかモヤモヤする。それを夫に話すと、すぐに電話をして担当の方に伝えてくれる。夫としては、何が問題?と思うことも、私が、いじいじ理屈を説明すると、なるほど!それは問題だね!となり、すぐに先方に伝える。とてもよいチームワークです。というか夫に感謝です。

 ハウスメーカーのほうも、上司のKさんは有能な方ですが、半年間のMさんとのやり取りやMさんの仕事内容を、即座にすべて把握はできないのは当たり前で、現状把握にも中々な労力を必要としたのです。問題発覚した当日は、据付で建ってしまう部分に関しては払ってもらわないとみたいな、まるで我が家がクレーマーであるような対処をされた時には、さすがのナマケモノも夫を通さずに、直接不満を訴えた。とても冷静に。

冷たくて静か…

のちに、ママはあれが一番怖かったよねと、夫からも娘からも言われる一面を出す場面もあった。

 

 何よりも信じられないのが、いつの打ち合わせで何を決めたとか、何は保留で確定でとかの記録が、残っていないとのこと。Mさんの、記録はありますとの言葉を信じてたのに。こんなのアリなわけないので、もう弁護士にお願いしてでもこの契約を白紙にしたいと告げる。だって払えないもん。それに、お店部分もできるって言ったことが全くできてないもん。記録も残ってないなんて話にならないもん。

 

 いよいよ、ナマケモノ家を建てられなかったにタイトル変更か?!

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