第13話 ナマケモノ木から落ちる

 我が家みんなで、数日前からウキウキ楽しみにしていた据付の日。前日、娘はてるてる坊主を作り、晴れるように家族みんなで吊るした。

 その直後の担当さんからのトラブル報告で、まさに天国から地獄。ナマケモノ木から落ちる。木から落ちて重傷です。


 夜中までに及んだ据付前夜の話し合いは、会社が現状を把握するのに時間を要するだろうし、どうやっても据付はもう止められないと言うし、今日これ以上話してもしょうがないということで、終わって帰宅しましたが、怒りとショックと後悔でナマケモノの頭は真っ白。それでも明日はやってくるのでとにかく寝ようと、家族でどんよりしたまま眠りについた。

 そして据付当日。止められないと言うので、とりあえず据付は実行される。これから話し合いを本格的に重ねていく予定だが、一応、立ち会いで夫が現地に見に行った。しかし、どんな気持ちで見ていいのかわからない。トラブルの事情を知らない方からは、おめでとうございます!と声をかけられるが、ありがとうございますと言いながらどんな顔していたか自分でもわからないほどの複雑な心境だったそう。ナマケモノは見る気にもなれず、普通に仕事に行き、沸々と湧く怒りと疑問から、一時の現実逃避。


 あの「前夜アクシデント祭」以降、担当営業マンMさんは外され、担当は上司のKさんに代わり、今の状態がどうなっているのかを精査し、これからどうするかを考えていくことになった。

 それが進めば進むほど、尋常じゃないずさんさがわかってきた。

 まず、参考にと出してもらっていた金額は、今まで打ち合わせで決まった分がすべて入って、かつ、多めに見積もっていると思っていたが、いろいろ見積もり漏れてるわ違ってるわ、しかも謎の割引き率で全体的にかなり安く見積もり過ぎてるわで、なんの参考にもならない金額だった…それであんな高額なら、我が家は契約していません!これは確かです。

 値引き率の幅があり、そのなかでどうにか希望額に近づくよう調整するようなことはあるようだけど、Mさんは、限界を超えるような率で見積っていたとか。

 なぜそんなことを…と思ったが、そこには、あの謎の空白の2ヶ月間が大きく関わってくるのでした。

 半年前、ほぼ2ヶ月打ち合わせが無かった期間があり不信に思っていたあの頃。Mさんが担当する他の施主さんのスケジュールが追い込みに入り立て込んでいたと説明を受けたが、それ以外にもう一つ担当していた案件で、かなり進んだところまで打ち合わせをしていたお客さんから、理由は不明だが途中でキャンセルをされていたよう。空白の2ヶ月は、それの引き止めに時間を割いていたのではないかと思う。そして結局キャンセル。そんなことがあった上での我が家の件で、見積りよりかなり高額になりそうで、Mさんの中で、立て続けにキャンセルを受けたくないとの焦りがあったのではないかと想像する。

 それにしても、金額をごまかしたまま、細かな確認もしないまま発注を出そうなんて、焦るにも程がある。

 何かおかしいなと思ったら、面倒でも、一度立ち止まって考え直さないといけなかった。せっかく一大決心で家を建てるのだから、思い残すことなく精一杯向き合ってと思っていたのに、わたしはフルで仕事をしながら、家族も日々の生活を送りながら、そして、我々の場合、お試しで引っ越した先で生活をしながらだったので、可能な限り早く元の土地に戻りたいとの思いも重なって、少しずつ、いろんなことに目を瞑り進めてしまったところがあるかもしれない。

 ナマケモノの最短で行きたい欲が、裏目に出たのだろうか…

 どうするのがいいのだろう。なんとかならないかな。どうにかしなければ。

 ナマケモノは家を建てられない?

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