不関係劇団

木の影から突然と姿を表した不思議な人間は一声上げると、牛とパンダの方へと歩いていく。

人間が二体の前に仁王立ちをするとどちらもその態度が気に入らずパンダは、ぺっ!、とタン唾を人間の顔に付けると、イラつきながら、


「なんだかしんねぇが、そこどけねぇと殺すぞ、」


牛も声こそは発しなかったが、静かに人間へと殺意を向けるが強大な二体の殺意になど一切構わず、すぐ近くにあった切り株の上に座り込むと、


「悪いけど、歩き旅で疲れてるから座りながらでやるね。」


と笑顔で言うと、二体に対して話し始める。


「君たちはどんな存在が強いと思っているの?」


すると二体は、はぁ、何言ってんだコイツ?、と不思議そうな顔をしながら、互いの顔を見ながら目をパチクリとすると、パンダはため息をつきのしのしと人間の目の前に立ちはたがる。

人間とパンダの身長差は大きく、ただパンダがその場に居る。と言う事実のみですら恐怖、いや強さを証明するに等しかった。

パンダは自身の影の中にいる人間を睨みつけて、どうした、これが恐怖だとした主張に対して人間もまた同じくゆっくりと切り株から立ち上がった。

ただ、立ち上がっただけなのだ、身体だって別に大きくないし、肉を貫けるツノも持ってないし、足だってそこそこの位であろうに、何故かその人間はおぞましい何かを発していた。

パンダはそれに瞬時に気づくと突然、四足歩行の体制を取り、ゆっくりと下がっていき、少し離れるとそこからは完全に黙り込んでしまった。

その様子に怖くなって牛が、


「ど、どうしたんだよ!いつもの威張り散らかしてるお前らしくないぞ!人間程度お前の敵じゃねぇだろ!」


と喝を入れようとするも、うるせぇ!とパンダは結構しその腕についた爪で牛の首を掴みかかると、顔の歪めながら。


「野郎を人間でなんて見るな!、ありゃ人間なんかじゃねぇもっと凄い何かだ───」


と、普段のヤツからは見せないような声と表情をしたパンダはそのまま黙り込み、牛もまた同じようになってしまい、その他のウサギなどの動物たちすらもその場で足が沈んでしまったかのように、まともに動けずにいた。

その場にいた前生命体が突然と現れた乱入者によって、全てを崩される。

今までと彼らの中ではこの少なぃ数十種類の動物たちがいるこの山と麓にある人間の集落しか行動範囲のなかった者たちからすれば、この乱入者は読んで字の如くルールブレイカーであろう。

それから段々と動物たちはとぼとぼとその場から離れていき、最後に残ったのは龍とキツネの死体とちんぴょうな一匹の物好きなイタチだけであった。

龍はただ一匹何故かその場に残ったイタチを不思議がりながらも、まぁいいかと軽く無視をして死体の元に向かう。

イタチもわざわざ死体の場所に行く姿を不思議がりながらも興味本位で一定のスペースを取りながらも近づいていく。


「ん、どうしたんだい?」


「ナントナク、キニナッタ。」


「まぁ、私は構わないけど.....」


そう言うと龍は吹っ飛んだキツネの首と胴体を近づけてなるべく吹き飛んだ細かい肉や骨も集めたいといたちの方を向いて、


「すまないのだが、破片を拾うのを手伝ってくれないか?」


「クウナラ、モット、イイモノ、アル。」


しかし龍は違い違いと手を前で振りながら、食べるんじゃないよと優しく物言いでイタチに対応する。

イタチは不思議がりながらも、生き物の死肉なぞ食うか腐るのを待つ以外知らなかったため、何をしようとしているのかと気になり、小さな肉を拾い始める、

数十分ほどたちだいぶ集まって来ると、龍がじゃあやるか!、と言い集めたいと肉と死体の隣に座り込むと、腰巾着から小さな刃物を取り出す。

肉を剥ぐような物にも皮を剥ぐための型では無かったため、イタチはそれは何だと龍に質問すると、龍は少し笑いながらも、


「何かを傷つけるためだけに刃物ってのは存在してるんじゃないよ」


と言いながら片手の手のひらに刃の付けて軽く傷をつける。その手の傷から出た血が死体の上に数滴かかる。

その瞬間死体から不思議な光とオーラが湧き上がり、イタチは思わず驚いて声を出してしまう。

キツネの死体はゆっくりとまるで時間が巻き戻っていくように傷が戻っていった。

イタチはその光景が現実なのかどうなのか理解が追いつかず、ただその場でその光景を見ているしかなかった。

それから少しして、首と胴体が完全に繋がったキツネは目を覚ますと、不思議そうにあたりを見渡し、身体に異変がないかとへ触るも異変はなく、何が起こったと隣に何故かいた人間とイタチの方を見ながら、


「なっ、何がっ、、、、」


困惑しているキツネの手を取ると龍優しく、微笑みながら、


「大丈夫、君は何も怖くない、大丈夫安心して住処に戻りなさい。」


優しい、人の里で聞いた音の出る筒みたいな、聞いたこともないような声で優しく囁いた龍の声を聞いたキツネは何の答えも出ていないというのにそのままフラフラと林の中へと消えてしまった。

イタチは不思議に思い、どうやったのかと龍に問う。


「ナンデ、キツネ、アンシンシタ?。」


すると龍は何でもなさそうにほくそ笑みながら、何でもなさそうに、


「別に変なことなしてないさ、ただ彼が怖がっていたから安心できるようにしただけだよ」


龍は笑顔でこれを言っているが側から見れば怯えているものをただの声色ひとつで安心させてしまう、この何者なのか分からない存在にイタチは畏怖の念と尊敬の念を合わせもっとよく知りたいと願うようになってしまった。

そのままイタチは感情に身を任せて龍の目と前にたち、


「ロン、オマエ、モット、シリタイ」


それに対して龍は「そうか、我なんかを見ていてもつまらないとは思うが、、、、、まぁ、君の好きにして構わないよしばらくはここに留まるつもりだし。」そう言うと森の中へ入っていってしまった。

あわててイタチもその跡を追いかけて森へと入っていった。


こうして、とある小さな国の中に完全なる部外者が入ることとなってしまった。

だが、ここまでのお話は全てとある場所に余計なことが入ってきたからであろう。そして、これもまたそうなのであろう。













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