火よ降りて傷残る
あれから車を走らせて数十分がたった、窓から日の方向を見てみるともう既に黄昏色の日の目が見えてきた、こう見てみるとあの黄昏色の朝日を見れていること自体が奇跡なのかもしれない。
そんな光景を見た僕の目は塩らしくなってきて自然と静かな感情の高まりのようなものを感じ、生まれてからこれまでの人生の中で経験したことのない不思議な感情はゆっくりと心に刻まれていった。
そんな光景を頬を酔わせると、ティッシュを取ろうと窓から目を逸らして、テーブルにあった筈のティッシュの方へと手を伸ば
すと、未だに気絶しっぱなしの草刈さんが目に映る。
数分前に脳天をクレナイさんのマフラーで叩かれてから数十分かん、まともに動かずテーブルに顔面から突っ伏したままであったが、やっとこさに起き上がって目をシャバシャバしながらこちらに向くと。
「さっきは笑いすぎたすまん、、、、、、」とこちらに謝ってきた。
それに対しは巴は少し驚いた表情を見せる。
その巴の対応が気に食わなかったのか草刈は顔をテーブルに付けたままむすっとしたような顔になり、
「俺の対応に不満でも?」
と少々怒ったように言ってくると慌ててその態度のことを訂正しようと急いで口を出す。
「いや、何だかそんなすぐに非を認めるような人にはさっきは見えなかったもんだったんで、、、、」
と苦笑いをしながら草刈りをなだめるとこれまた少し笑いながら、ふと、こんな人が何でこんな簡単に謝ってきたのかと気になって質問をしてみる。
「と、所でなんすけど、何でそんなすぐに謝ってきたんすか?」
すると草刈は顔を上げて話し始める。
「今からでっけぇ情報を吐き出すけどよお、実を言っちまうと俺よお、まぁ、俺はな、過去の自分に関する記憶が無いんだ。」
でっ、でかい、、、デカすぎるよその情報は!、と少し混乱しかけている僕に気にせず草刈さんは話を続ける。
「そのせいでな、現世の知識がなくってよ、そのせいでな現世で俺が問題が起こさないようにと、あいつがお守りについてんだよ。」
と親指で運転席の方で運転をしているクレナイさんの方に指を刺す。
そうすると腕を頭の後ろで組みながらだるそうな顔をして、「お節介クレナイからの現世のルール!その1![相手に悪いことをしたらなるべく早く謝れ!]じゃっ!おやすみ!」
そうするとまるで気絶するようにその体制のまま座席に倒れるようにで眠りについてしまうと、そのままいびきをかきながら寝てしまう。
「ちょ、ちよっと〜」
と巴が声をかけるも、草刈りの手よりも一歩遅くそのまま草刈はあっとゆわさず寝てしまい、鼻チョーチンを膨らませていた。
その姿に巴は少し呆れながらも、困ったように「草刈さーん」と声を出しながら寝転んだ体を譲ってみるも、前の方からクレナイさんが呆れた様に、
「無駄ですよ、七は一度眠ると相当なことでも起きない限りは目を覚ましません。」
まぁ、付き合いの長いだろうクレナイさんの言葉だ、多分この人は起きないだろうと思い草刈さんを起こすのをやめて、座席に戻りどうしようか考える、まだ気になることもたくさんあるのにと、思い肩を下げているとクレナイさんが、
「話、聞きますよ?」
と綺麗な声でこっちに声をかけてくれた。
それに対して巴は良いんですかと聞くと水を得た魚の様に質問をクレナイにぶつける。
「まず何ですけど、何でこんな活動をしているんすか?」
そお、巴が入った質問に対して少し困った様に「あははは、、、」と声を出すと少し考えた素振りもしながらも、まぁ良いかと話し始める。
クレナイさんは少し深く息を吸うとゆっくりと話を始める。
「まず、巴さんって地獄を信じてますか?」
質問を質問で返され、少し驚きながらも今までのことを振り返り巴は「まぁ、妖怪が居たんですから、そりゃぁ、地獄の一つや二つくらいだって有ると僕は思うっすけどね。」
するとクレナイさんはクスッと軽く笑うとまた話し始める。
「その通りで、確かに地獄っていうものは本当にあるんです、で私たち二人は地獄から来たんです。」
それを聞いた巴は唾をごくっと飲むと少し腰をひきながら、クレナイさんに聞いてみると、少しこわばりながら、
「やっ、やっぱり、地獄からって、一体何をしに、、、、、?」
するとそれを聞いたクレナイさんは「何でそんなに怯えてるんですか?」と言うと僕の「へぇ?」と変な声を上げながら腰を元に戻しながら話を聞く。
「何か勘違いしている様ですけど、私たちはそんなあなたたちに危害を加える事は無いので安心してください。」
それを聞くとフゥ、と息を吐く、こう入ってはダメだからこの人たちに僕は尊敬の念や自分を助けてくれた事への感謝への気持ちは確かにすごく有るが、それと同時にあの力に僕は恐ろしさを感じて、自分の身のことを本能的に考え、どこか無意識かつ本能的に畏怖の念があってしまったのかもしれないことに今のクレナイさんの言葉で気づき、姿勢を面接の練習の時を思い出しながら整えて話を聞く姿勢へと変える。
「さっきはすんません」
するとクレナイさんはまぁ仕方がないと言うふうな態度で、「まず私たちが現世に来たのは、地獄から脱獄者が出てしまったのが原因何です。」
それに僕は地獄から脱獄者などと言われても余り実感が湧かず「?」と言う反応を出して、「地獄から抜け出すってまさか黄泉比良坂から来たってことですか?」
黄泉比良坂、古事記にて出てくる黄泉の国への入り口の様なもので、話の内容ではイザナキノカミが妻であるイザナミノカミを黄泉の国から連れ戻すために通った場所と言われており、実際に日本の島根県に存在し、ちなみに古事記に出てくる場所のほとんどは島根県に実際に存在している。ちなみに先ほどから話を聞いているこの巴もまた一度訪れたことが有る。
「その通りで地獄の門番である牛頭と馬頭を殺しその肉を食らった顔に紅いアザがある34体の咎人を自国に連れ戻すために私たち二人が現世に来たんです。」
「え、えーとその牛頭とか馬頭ってもしかしてですけど、馬頭って」それを言いながら寝ている草刈さんの左腕に目を向けて、「左腕から出てきてたあの陽気な剣ってもしや、、、」
すると草刈さんの左腕が1人でに動き出すとその手が少しずつ馬の顔に変わっていき、茶色の毛と黒い目を光らせながら「ヨォ、アッシを呼んだかい?」
明るい顔色と声でこちらに話しかけてきた。
馬はまるで生きて居るかの様にいや、普通と馬の何倍もあろうかと言うほどの表情筋を動かしながら人の手首が変質した自身の首であろう場所をニョロニョロと動かして巴の顔近くまで近づいてきた。
巴がその首にどう反応して良いのか困ってアワアワとなりかけながらははは、、と笑って居るとそれに少し怒ったのか、
「おい、おい、おい!、アンちゃんアッシのことをわざわざ呼んでおいてその態度は失礼なんでねぇ〜の?」
と目の前で鼻息を荒立てながらこちらにガンを飛ばしてくる馬頭のその様子に耐えきれなかった巴は「じゃ、じゃぁ自己紹介お願いします」とすまなそうに、困った様にしながら聞いてみると馬頭はノリノリでヒーローの前恒常のように自分について愉快に話し始める。
「おう!、アッシの名前を聞き腰抜かすなよ!
聞いたことねぇ。
いや、聞いたことがないなんて言うのは巴からしてみれば当たり前のことであり、そもそもコイツは学校での成績はもっぱら悪く、もしコイツの成績表を一般家庭の親に見せればいも言わさずに気絶してしまうほどのものであった。
しかしまぁこの男、愛想と付き合いとノリは良かったため、人に嫌われると言う事はなく、先生に愛想を使いながら逃げ切って、高校二年生からは金の件もありもう全くと入って良いほどにデタラメな行動をして、何の予定もないまま先生方から心配の眼差しを向けられながら出ていったので有る。
もちろんそんな奴が恐らくは古代中国あたりの物語など知る由もなく馬頭が言っている物語の名前などは全くと言っていいほどにはピンと来ていない。
「え、えーとばじょうきょうきんせんかんかくでしたっけ?」
と巴が尋ね返してみると、馬頭は怒った様に、
「ちがう!アッシの名はなぁ!馬上郷頭鬼千申士!フルネームで呼ぶならちゃきっとい言え!」
「バジョウきょうしつおたまとんかち?」
「ちがうわ!バジョウ以外別物のパチモンとバッタもんじゃねぇーか!」
と巴と馬頭がアホらしいやり取りをしていると前のクレナイさんが口を挟み、
「馬頭の言っている話は無視でいいですよ、そもそも天地頭山元なんて中国書物のうちのどマイナーの中のどマイナーで少なくとも私は馬頭の話以外だとそんな話、聞いたことも見たことも嗅いだこともありませんよ。」
と、冷静なツッコミを決め込んだクレナイさんに対して「本を嗅いでどぉーすんだ!」などと入ったツッコミも入れずに馬頭はしょんぼりとしてしまい、ブツブツと何かを言い始める。
その様子を不憫に感じたのか、巴はなんとかしようと、「そ、その馬頭さんが活躍してる[てんちとうさんげん ]の話もっと聞きたいなーてっ。」
と馬頭に聞いてみると、馬頭は子供の様な異例な目を光らせ、水を得た魚の様にその天地頭山元と言うお話を熱く巴に語り出す。
巴も相槌を打ちながら時々質問し話を盛り上げる。
その様子を見たクレナイも少し笑みを浮かべて車を再度進める。
馬頭さんの話を聞いてはや3分。
もう嫌だ。
馬頭さんの話す話、は恐らくは相当長い様でもう既に何かの名前と言うものが数十個は出来て全く話が入ってこない。
とどうしようかと話をよそに悩んでいると、キィ!と、急ブレーキが車にかかり、わわぁ!と巴は前の方に押し出されてしまいテーブルに上半身から上がっていってしまう。怪我はなかったが、先程まで自分の出ている本について話していた馬頭の顔の温度はプラスからマイナスへと動いた様な雰囲気へと変わり、ニヤリと口上げると直ぐに元の人間の腕へと戻っていってしまおうとして、巴の声にも反応せずに戻っていき、高速道路で急ブレーキなど人生で一度あるかないかと言う様なことが起きて巴は少し混乱を起こしながらも前にいるクレナイ様子を見ようと前方に顔を向けようとすると、
「見るな!!」
と先程までの落ち着いた声からは考えられない様な大声を上げるとハッとした様にして。
「すみません、ですが巴、何があろうと絶対に外を見ないでください。」
それを言うとばっとこちらを振り向き、またも声を出して、「ナナ!」と声を上げると、それと同時に先程まで寝ていたはずの草刈さんは飛び上がり、「分かってる!」と声を上げる僕の体を抱くと床に勢いよく伏せた。
その直ぐだった。時間などなかった。聞いたこともない様な四つの刃がまるで子供の悪戯の様にぐしゃぐしゃに車の横の壁を突き破り、床に伏せたはずの自分達の直ぐ手前のギリギリのラインで止まった。
「ガがァぁァぁぁぁぁァァ!!!!」と悲痛な叫び声をあげるクレナイさん。
状況の読み込めない巴が混乱していると草刈が片腕で都前を持ち上げると「出るぞ!」と声を出して先程まで座っていた場所にあった窓ガラスを叩き割り、すまんとごめんと小声を出しながら外へと出る。
外に出ると草刈さんは着地に失敗してしまいその衝撃で僕は投げ出されてコンクリートの上を転がる。
いてぇ、とコンクリートの上に打ち付けた腹を触ると明らかに濡れていることに気がつく。
しばらくは自分が飲み物を飲んでいないことを思い出し、顔を青ざめながらしっかりと腹を触ると濡れてはいるが、傷はないことに気がつくとコンクリートが赤くなっていることに気がつく。
こんなものは無かったこんな事は起こってはいない。こんな事には気が付いてはいなかった、いや気が付いてはいたんだろう。このコンクリートに打ち付けた瞬間にはもう視界には入っていたはずなのに直視はしなかった。
だってこんなものは現実には存在してはならない。
くしゃくしゃの紙屑の様な酷い姿へと変わってしまった何かの機械のパーツがそこら中に散らばりながらも、その中にはそれよりも酷い惨状へとなってしまった何かの生き物のかけらが自分の手、膝、足下に落ちていた。
声を上げる。あげた事もない様な聞いたこともない様な声をあげ心を冷静に保とうとすると、自分の後ろから、男が「落ち着け!、俺の後ろにいろ!」
それだけを言うとこちらに背中を向けた男は数十メートル離れた場所にいる
先程まで自分達の乗っていた赤いキャンピングカーを持ち上げた化け物へと目を向ける。
白色の体毛に身を包み背中からは先に巨大な刃をつけた四つの尾を持ち、そして朝日に照らされた狂気を詰めてモナリザやミロのビーナスや古代ローマの最高峰の彫刻かの様な整ったその悪意の塊の顔には紅いアザが刻まれていた。
「ワレハ疵魔、イマフタビカエッタゾ、、、、、コイ小僧赤い妖の次はオモエダ!」
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