日の目が見えた頃

呆気ない。その終末はとても呆気なくたったの一撃で終わってしまった。

数分前、そこでは恐らくは僕が人生でこれ以上ないであろうと言うハリウッドが社運をかけたレベルの映像が目の前で流れながらその一分一秒残さずに脳へと刻まれていった。

しかし、物語にはエンディングが付き物だ。このお話の終わりはこうだった。

ミサイルのように高速で突っ込んでいった草刈はその前方にいたイタチの腹、目がけて突っ込んでいき、イタチもクレナイさんによって完全に固められてしまい、そのままイタチは防御体制をとる隙もなく、土手っ腹に突っ込まれて腹をくり抜かれたかと思うとそのまま草刈は体制を立て直し、イタチの巨体の後ろで翼は見えなかったが、恐らくは「せいげき!」っと叫ぶと次の瞬間にはイタチの体は青い火炎と共にに二つに分割にされ、断末魔も上げる隙なく地に伏し、灰へと変わっていった。

そしてここで僕の記憶な一度途切れる。


目を覚ましたところは狭いベットの上だった。

「ここは、、、、」

そう思い体を起こそうと手を突き上半身を上げると、おでこに衝撃が走る。ぐぅぅぅとベッドで悶絶していると少し離れたところから、「おぉ、起きたか!」

その覇気に満ち溢れた、年中短パンTシャツで過ごしている小学生かの様な声は間違いなく草で刈で三足す四であった。

僕は頭を押さえながら尋ねる。

「草刈さん、ここは、、、」

すると僕の方を覗き込みながら、

「おぉ、さっきお前さんと初めて会ったどころだが?」

頭をぶつけない様に首を下げながら、ゆっくりと起き上がり脚を床につけると、左足に激しい痛みが生じる、

トンネルでバイクからほっぽり出された後の痛みはどうやらこれだった様だ。

捻挫の痛みで左足では立てないと感じて、右足でけんけんする様にして近くの座席へと移る。


「おいおい、別に仰向けのままでもよかったのによお?」


「わざわざ車の中まで

運んでくれた人の前でそんな態度をとりたくないすよ。」


僕が席に着くと裾を潜り上げて右足の状態を確認する。

足首は全体が青くなっており、とてもほっといて良い様な代物ではなかった。

それを見た草刈さんも顔を顰めながら、


「コイツはひでぇなぁ、、、」


と同情の声を上げる。

取り敢えず何もしないのは良くないと、背負っているバックの中から包帯を取って巻き付けようと背中に手をやるも、どこにもバックなどない。

あれ?、と思いあたりを見渡すが、先程まで自分が寝ていたベットにも、近くの座席にもそれらしい物は見当たらない。ここらから額に冷たい汗が染み渡ってくる。

草刈さんに「バックはどこ?」と聞いてみるが、キョトンとした顔で少し考えるその瞬間僕の心臓はマッハを超え、冷や汗がダラダラと流れ落ちてきて、静かではあるがその人には聴こえぬ様な鼓膜を揺らさない焦りは耳には感じずとも、目からは感受性の低そうな草刈さんでも伝わった様で、これも又、必死に思考を巡らせようとしていた。とっ、!その時であった。ハッと、思い出した様に「そいつって、もしかして全体が緑色のやつか!」

間違いない!、そんなセンスの悪いバックの持ち主は僕くらいだ!。


「でっ!そのバックはどこっすか!」


そう僕がこの日一番の喜び様で草刈さんに聞いてみるも、

ははははは、、、などと僕から目を背けながらすまんと一言謝ってきた。


「すまん、なんか薄気味悪かったもんで置いてきちまった。あっ、あっ!もっ、燃えてはいなかったから中身は無事だ!安心せぇ!」


正直薄気味悪いと言われたのは少し腹がたつが、どうやら中身は無事そうだと一息つく。

正直草刈さんが言った言葉が嘘でも真でも何方でも今は一息つけることが嬉しかった。

バックの中に入っていた筈の預金通帳はどうやら無事の様だからなんべく早く取りに行きたい、と言うかいまずく取りに行かないとヤバくないか?、目にかけていた右腕を避け、キャンピングカー内部の壁に掛けてある大きなデジタル時計に目をやる。

午前六時とちょっと、、、、、、。

田舎の高速とは言え流石に車もそろそろ、と言うかもう既に橋でついる様な時間帯。この人たちに頼むしかないのか、、、、、。

と、考えているの不可思議なことに気がつく。

クレナイさんが見当たらない。あの見た目だ一度でも見れば例え記憶を消されたって僕は覚えていられる自信がある程には脳みそに焼き印が如く入り込み、忘れたくたって、忘れられる物ではない。

運転席の方には人影はなく、トイレなどの場所にも様子はない、目の前でもうすでに僕から興味を無くして、目の前で車用のDVDプレーヤーで見たい映画を選り好みして、メン・イン・ブラックとマトリックスのどっちを見るか悩んでやがる。


「あの、」


返事に気がついた様なのか、あら!?、と言った様子で急いでDVDを急いで僕の眼の前から隠そうと座席の下に慌ただしく閉まって万で何事もなかったかの様に肘を突き、自分のできる限りのいい顔をしながら、こっちの方を見てきた。

まぁ、仕方ないと切り替えて見当たらないクレナイさんが何処にいるかと聞いてみると、「あぁ、そこにいるぜ。」

そう言って時計が掛けてある壁の方を指を指すとそこには、いた。


いた、いた、いた、ただ、たった一つだけ変わったところが見てわかった。

何故か上半紙のみがまるで動物の首の剥製の様に此方を見ていた。

そして最大に驚いたのはもうすでに僕がこと一日、いや数分の間でこの様な摩訶不思議な現象に対して「慣れ」がきていたところであった。


「なに、、、してるんすか?、、、。」


するとなにを聞いているのかと言う調子でこちらの方を見ながら、


「車から身体を半分出しているんですよ?」


「いや、そう言うことじゃなくて、、。何でそんなことができてるんすか!?」


すると興味なさげに、はぁ、とため息をつくとそのまま狭い穴を通る様に両腕で壁に手を突き力を入れて埋まっていた下半身をくぐり抜ける様に出ると、何事もなかったかのように、いやよくよく考えたらこの空間は草刈さんとクレナイさんの二人の空間なのだろうから日常も日常なのだろうがここに水に油を入れるように拒絶反応が出てきてしまっているのだろう。

しかし、そんな僕の何とも言えない顔をしながら、驚きの反応を見せるところをよそ目にフラフラと運転席の方絵と向かいそこの座席に付いているカップの中に入っていたコカコーラを勢いよく掴むと胸についてあるガソリンキャップを外すとそこにコーラを突っ込み「んんん!!!!」とカラカラの喉を潤した時の様な声を出しながら給コーラをする姿にコーラの飲めない僕も思わず喉奥の奥の奥から欲していた程であった。

そうしてコーラの中身が空になると満足した様に鼻歌を歌いながら「ふふ〜ん!」とこちらの方へと来ると元の壁に戻ろうとしていると、


「ちょ!、ちょっと待ってくださいっすよ!」」と急いで呼び止める。


するとはい?、とこちらを振り向き僕に向かって、どうしたのかと尋ねてくる。

しかしこの人たちに一体なにを尋ねたらよいのだろうか。

あの左腕は何なのか?、バイクから変形していたけど一体何者なのか?、亡くなってしまったであろう新八さんたちはどうなったのか?、いや今はまず新八さんたちについて聞いておこう。人の生き死にはやはり嫌な意味で気になってしまう。どこか分からないが嫌な恐怖心が襲って来る、その理由は何よりも明白ではあるが。

そう思うと、新八さんたちはどうなったかと二人に尋ねる。

すると草刈さんは馬鹿にした様な態度でこっちの方を指差しながらこれでもかと言うほどの大爆笑を始めて僕を置いてきぼりにしながら、僕に対して半分馬鹿にした様に態度でヒーヒー言いながら「ありゃ人間じゃねーから安心しろって笑、ありゃあのバケイタチどもの幻影だっての!」

「それをお前は笑!、今の今まで気がついていなかったのかよ笑笑笑笑笑!!!!!」と顔を真っ赤にしながら言ってきていると、ゴォン!!とすごい金属と頭蓋骨のぶつかる音と共に草刈さんは目の前が真っ黒になった様にぶっ倒れてしまい、そのまま後ろで左腕を振り下ろしたクレナイさんは呆れた様な感じで左腕のその手の方から出てきている煙を取っ払うとこちらに対して丁寧に、


「あの人たちはイタチたちの手によって作られた偽の人間みたいな物で、まぁ、端的に言えばチョウチンアンコウの頭の電気と同じです。」


要するに僕は竿にかかった鴨だった訳だ。それはこの人も笑うわなと思うと同時に何故初めて会った時に何故もっとちゃんと止めてくれなかったのかと思ったが、今の様子を見れば何となく予想がつく。


「後追加情報ですが、草刈バカはあのイタチたち全員を始末してから先ほど言っていた燃えていた筈の新八さんたちのいくら何でもすみ一つ残っていないことに気がついてから、やっと気づいていましたよ。車の中で遠目から見ていた私でさえ気づいていたの言うのに。」

と呆れた様に言っていて何だかとてつもなくこの人がカッコ悪く感じてきた。


あの感動を返せ!。


そうしているとクレナイさんが「所で先程まで言っていたバック、取りに行きますか?」


「良いんすか!?」

僕の目の前で希望が広がった。


「五分後には出るのでそれまでに準備しておいてくださいね」


それだけ言うとクレナイさんは壁の中へと戻っていってしまった。そしてなんやかんやで僕は無事バックを撮りに行けることととなったのである。




















憎め 憎め 憎め 我らを侮辱してしきたいあの人間と妖魔をぶっ殺せ今や我らは魔獣なり 奴ら仕留めよ我らは三位一体究極の生命体である。

誰も通らぬトンネルには二十台の車と三十二の人が居た そして トラックと車が七十二分の一になりながら 人は千十二分の一になりながら血と肉を吐き出していた。

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