大鎌が振られた頃に

 パーキングエリアから走り始めて、十分ちょっと程過ぎただろうか、こんな夜遅くに走る日に限って月は真っ暗な新月でこっちに頬の一つも見しちゃぁくれない。

 そのせいで、オレンジ色に光る数メートル範囲で設置してある電気の光が、今の俺の唯一と言っていい高原だ、未だに新八さんがたが言っていたトンネルとやらは見えてはこない。

 言われた通りに真っ直ぐ風を切って、広島降りを見放して信じてきてから「これか」だよ!。

 などと抜かしながら走っていると、つい数分前の事が頭をよぎる。

 まるで、ガキの様な自分の姿と思考回路を赤の、イヤ!真っ赤も真っ赤!紅色も朱色も驚くの様な赤っ恥をかいた自分の姿から、結局のところ自分が学んだ事は殆ど無かったのだろう、俺は何で昔からこう何だろう、失敗から対して学びやしない、などと一人で反省会をしながら落ち込んでいると、ふと前にかなり大きな、何かが落ちている事が分かる。


「何だ?、あれ、、」


 そう思い近づいていくと、そこにあったものは横転して傷だらけになった一台のバイクであった。

「これって、、、間違いないこれって新八さんのバイクだ!」


 そう、そこにあったバイクは間違いなくつい二十分前ほどまで話していた笹山新八さんのバイクであった、しかしバイクになる倒れた時のせいか擦れた様な傷がついており、なんらかの事故が有ったのは事実であった。


(まずい、事故か?、だけど他の二人は一体全体どこへ行っちまったんだ?)


 周りを見渡すも、朝が近づいてきたぐらいの時刻であっても、周りはまだ真っ暗で肉眼で見えるものといえば、自分自身と自分のバイクと笹山さんのバイクと僅かな光を放つ電光ぐらいしか見えず

 俺は焦りながらも、笹山さんと他の二人を探すために一度バイクから降りて、周りを散策し始める。


「あのー!笹山さーん!、幸太郎さーん!何処にいるんですかー?」


 と大声で叫ぶも、返事は一切帰ってはこなかった。

 あくまで、憶測の域は出ないが、このバイクが笹山さんの物であろうと、俺の勘違いの赤の知らない他人のバイクであろうとも、何かしらの事故や事件が有ったのは確実、このままでは埒が開かないと、警察を呼ぼうとしてケータイ電話を取り出すも、


「しまった!、電源が切れてる!」


 普段から充電しない癖が祟ってか、携帯電話はうんともすんとも言わず、画面は真っ暗で、俺の顔を反射するだけで有った。

 携帯も使えず、急いで笹山さんのバイクを端に置いたら、自分の背負っていたバックからメモとペンを取り出し、それに


[これを見つけた方、恐らくはなんらかの事故が有ったのだと思います、詳しい事は分かりませんが、急いで警察とおを呼んでください。お願いします。私の携帯番号は057-×××-××××]


 と半端パニクりながら書き残して、自分のバイクにエンジンをかけてトンネルの方向へと進もうとする。

 本当ならば広島降りに向かった方がいいのかもしれないが、もうすでに時刻は朝の五時、いつ車が通ってもおかしくは無い。その為、此処は冷静に交通法に従って行った方が自身のためにもなるし、このバイクを誰かが見つけてくれるかもしれない。

 そう考えて、バイクを走らせ始める。








 △ △ △


 彼は気づかなかった。

彼がメモをバイクの上に置いた衝撃だろうか、その僅かな衝撃はそのバイクからすれば、逆さのピラミッドにボールぶつけるかの様なものだったのだろう。

 いや、普通はそうとは思わんのだろう、なんたって彼がバイクを動かした衝撃で、せっかくがズレてしまい、まるで魚の切り身の様に横参列に綺麗に別れてしまったのだから。







 △ △ △


 そうして走っていると、大きなカーブを曲がった先で、前の方で誰かが走っているのがわかる。


「やった、あの人に携帯を借りれれば!」


 そうして、バイクのスピードを上げてバイクに追いつこうとしていると、ふと気づく、あのバイクは幸太郎さんのものだと言うことに。

 何故か俺はこの謎の恐怖の中で知っている人に出会えたことに嬉しく感じてしまい、少し興奮しながら、恐らくは幸太郎さんであろう人に近づいて行った。

 唐突だった、いや違う、多分肉眼では認識が出来てはいたのだろう。

 だけども、こんな光景など、普通はありえぬと決めつけかけていた。

 幸太郎さんの体は力が抜けていた、服も大して汚れてはいなかったし、ハンドルからも手は離していなかったし、バイクは真っ直ぐに走行をしていた。

 そう此処までのことなどは普通なのだ。普通、普通、普通。

 だが、ひとつだけ欠けていた、人間の一番大切な場所、が無かったのだ、見事に切り裂かれた傷口はもはや、美しいとすら感じてしまうほどには綺麗であった。

 その、絶対にありえない様な光景を見た巴は恐怖や絶望感などではなく、ただただ、黙って見ているしか無かった、そこには何か変な感情もヨコシマな汚らしい感情すらなどもなく、彼の求めていた[現実離れ]に出会えていると言う、夢見物語かの様なその光景に巴は目を通して頭を通って心から見惚れてしまっていた。とっ、その時、


「しまっ、、、!」


 巴はバイクの運転を誤り横転してしまう、横転したバイクと巴は弾き放たれて、お互いトンネルの端と端へと追いやられてしまう、


「くそっ、、、、!、いてぇ、、、」

 強い衝撃を体いっぱいに受けた巴であったが幸運か、特に目立った傷はないが、突然の出来事に脳が状況を整理しようと必死に思考を動かし続けていて、

 今までの情報多量からか、現在に辿り着くまでに時間がかかり、上手く体を動かせない、いや違うそんな格好の良いものなどではなく単純に体を強く打って、一時的に動けなくなっているだけだ、痛みも感じる恐らくはそこまで大きい怪我ではない、そう思い、トンネルの壁を伝いながらなんとか上半身を起こす。

 なんとか情報が整理でき周りを見渡す、巴から見て少し進んだ先のトンネルの 端の方に、俺のバイクと恐らくは幸太郎さんの遺体とバイクが火炎をあげて燃え上がっている、


「まずい、、、、は、やく消さなくちゃ、、、」


 そう感じて、体の筋肉と骨と神経の悲鳴に逆らって脳からの警告のアラーム音にも無視して立ち上がり火の方へと向かう、しかし火はもうすでに高々人間のオス一人で消すには大きくなりすぎていた、おまけに恐らくはもうどちらのバイクもたとえ消化できたとしても、まともに走れる様な状態ではないだろうと、混乱した思考の中でもはっきりとわかってはいたが、

 ガソリンと鉄とゴムと鉄が焼ける匂いがトンネル内全域に広まろうとしている中、巴自身、今の彼には何をしたら良いのかなど分からず、とにかく今現在肉眼では見えている問題をとにかく解くしか、そうでもしなくちゃ事が進まないと本能的に理解してバイクの方へと左足を引き摺りながら、足をすすめていく。

 打ち付けた足をゆっくりとすすめて道路の真ん中あたりまで来た時に、トンネルの向こう側から音がする、それはこの不幸の連鎖の最後の不幸、あいつらがくればこの俺に降りかかった不幸はフィナーレを迎える。

 俺に向かってきた存在は猿よりも大きく、猪よりも速く、鹿よりも誇り高く、熊なんかよりも獲物は逃さない、そう[イタチ]であった。

 イタチはこちらに対して一切の情けもかけまいとする勢いで真っ直ぐに縦一列に並び立ち、自身の誇り高い尾に付いた狂気を振り翳して全力でその真っ赤な目で此方を睨みつけながら俺に襲い掛かろうとしてくる、巴は心の中で


(俺、、、、死ぬのか、、、、、何にもない人生だったなぁ、何でこんな事に首を突っ込んでしまったんだろう、いや、あん時は甘く考えすぎてた、チクショオ、、、、、!、こんな事なら広島でさっさと降りていりゃ良かったのかもな、でも、、、、もし、これが多分走馬灯だとしても、あん時は死んでも良いなんて考えてたけど、、、っ!いざ、こう言った何処にきてしまうと人間こう考えてしまうんだな、、、

[生きてやる!]絶対に朝日を拝めるんだ!)


 そう思うと、巴は体に鞭を打ちながらも自分を殺そうしているイタチたちよりもより、遠くに行こうと、必死に走る、そう必死に走っているとこういう時に神だか、仏だから、世界のこう言った仕組みを管理している何かは希望を与えてくれるもんだな。

 向こうのほうから高速でこちら側に向かう、赤い何かが来てくれた。

 巴は本能的に無意識のうちに叫ぶ。


「誰か!俺を助けてくれぇ!」


「おぉ、わしらが助けてやるよ、坊主!」


藁は答えてくれた。


 そのバイク何故か、ワイルドに立ちながら乗っていたスカジャンを着たニイチャンは真っ赤なバイクを止めてから勢いよく飛び降りると、巴の体を支えて留まっているバイクの背面によし掛からせて座らせる。


「あんた、、あん時の、、、、っ!」


 間違えなかった、そこに立っているスカジャンを見事に着こなしているニイチャンは紛れもなく、パーキングエリアで俺を軽く止めようとした人であった。

 すると、スカジャンのニイチャンはこちらにニッコリと見ていて気持ちの良い顔で振り向くと、


「なぁーに、俺はこう言った仕事をしていると言ったはずだかねぇ、あぁ、坊主には名前とか言ってなかったけなぁ、よしっ!、名を名乗るぞ、[草刈七クサカリナナ]本名だ!」


 そう草刈と名乗るぜ男はイタチの方を向きながら自身の左手に話しかける。


「出番だ、馬頭!」


 その瞬間、彼の左腕は第二関節からゆっくりとまんま本当に馬の首、いや顔へと変わる。

 すると、その左腕の馬が草刈に対して喋り始める


「ダンナー、ありゃ、アタシらのようのある連中じゃぁ無いでしょう、あいつに任せるか、そんなもん、相手なんかしなくても」


 と中々に酷なセリフを言う馬に対して草刈は軽く怒りながら。


「バカ野郎!、そうやって俺らが相手にしなかったからこうやって死人が出ちまったんだろうが!、悪いが俺らにもかなり大きく責任があるからな、あの三匹全員ぶっ殺すぞ。」


 それに対して馬は呆れた様


「へいへい、分かりましたよっと!」


 そう言った時に、馬は口から長い舌を出すとその舌がどんどんどんどん伸びていって、でろっとした舌は真っ直ぐ直線形になると色、ツヤを変えてみるみるうちに嘘みたいだが、僕の目の前で[剣]へと変わっていった。


「あんた、、、一体何なんだ?、、、、」


 弱々しい様な声で巴が草刈に問うと、背中を向けながらも強く、頼りになる様な声で、


「安心しろ、大丈夫だ坊主、、、」


 そう言いながら、左腕の剣をこちら側に、もうすぐそばというところにいるイタチに剣の先を向ける。


「あいつらは俺がケジメをつける!」


 そう言うと、剣先からまるで弩弓の様に三叉に別れて、鳥の群れの様な三角形状になっているイタチの真ん中にいる尾が金槌状になったイタチに狙いを定める。

 そうしていると、剣の三叉に別れた剣先の真ん中の刃が白く光始める。

 その光はこの薄暗いトンネル内では、まるで自分自身が昆虫にでもなったかの様に引き寄せられる様な神秘的にまで感じてしまうほどの光であった。

 その光は剣の先端部へと集まり出し、全てが剣先に集まったと思うと、草刈はその責任感か殺気かを込めながら、叫ぶ。


「食いやがれ!、クソッタレども!爆狐!バッコ!


 そう叫び打ち出した白く光る矢はものの見事に、3メートルはあろうかと言うカナヅチの体の土手っ腹に風穴を開けて、そのままカナヅチは声すら上げず、その場に突っ伏しながら倒れると、体から灰と化していった。

 両隣にいたイタチたちは何が起こったのかを分からず、その場で灰となってしまった仲間の亡骸を呆然とみていた。

 それに対して草刈は馬にもう一度爆狐を撃てないか小声で相談していた。


「おい、爆狐もう一発撃てないか?」


「悪いが、もう無理ダァ、妖力が今のですっからかんダァ」


 それに対して、草刈は舌打ちをすると、「まぁ、悪いな」 という雰囲気で剣を構えて、そのまま呆然としているイタチに突っ込んでゆく。

 この時巴は心の中で、


(誰か、、僕にこの現状を丁寧に説明してくれ、、、!何が起こってるって言うんだよぉ〜)


 などとほざいてる内に、イタチの片方の首に草刈の剣がかかろうとした時、


「ちぃっ!、貴様!同胞の死を弔おうとする隙すらも与むきかぁ!」


「お前らだって!、人間に死を悲嘆さてる時間なんか与えた事が有ったって言うのかよ!、悪いが俺は誇りもプライドも全て生ゴミの日に捨てちまってんでなぁ、んな時間与えねぇよ!クソッタレ!」


「にん!げん!フゼイガぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 イタチは草刈の言葉に激昂し、雄叫びを上げながら草刈にその二本の大鎌を振るおうとする。


「死に晒せぇ!、人間!」


 それに対して草刈はその二本の鎌をなんとか打ち止めると、そのまま上手く鍔迫り合いへと持っていく、と、その時にもう一匹のイタチが巴の方へと向かっていく。


「ぬかったな!人間よ!」


 相手は動けない一般人。残っているもう一匹のイタチの武器である、獣の爪の様な三枚刃は到底一般人が受け止められる様な代物ではない。

 どんな形であれ、この草刈という人間にどんな形であれ、精神的なダメージが入ることは、先ほどの言動から確実、そう思い、イタチは確信してその気持ちの悪い憎悪を具体的にしてみたかの様な気色の悪い笑顔を見せ、激しくお互いの刃をぶつけながら、高らかに草刈に煽りの言葉をぶつける。


「残念だったなぁ!、人間よぉ!また犠牲者が出るぜぇ!ザマァねぇなぁ!でゃははははは!!!!!」


 その言葉にを聞いた草刈はイタチを小馬鹿にする様に、


「お前さんは、二つ間違えてんだよさっきから」


「はぁ?、何を抜かすか?、」


「一つ、俺はただの人間ではない、二つ、、、もっと俺の言葉を節々まで聞いておくんだな、いつ?、俺がさっきっからと言っているぞ?。」












 △ △ △ △


 巴は、その朦朧とした意識の中でも、草刈とイタチの激しい戦闘を目にしていた。

 目にも止まらぬ刃同士のぶつかり合い。到底自分が介入できる様なものでも、何かのサポートすらも今の体では出来ないだろう。

 だが、巴はその非、現実的な光景に目を奪われてずっと見ていたいとすら思ってしまった。

 そうして、戦闘に目を奪われていると、二匹のうちのもう一匹のイタチが自分のところに迫ってきている事に気がついく、


(まっ、まずい、、、っ!、逃げ、、なくちゃ)


 到底、あのイタチに自分が出来ることなどはもう既に自分の中では分かっている。

 そう思うと、なんとかヨロヨロとはしながらも、もたれかかっていた真っ赤なバイクのハンドルを握る。


(コイツで、何とか逃げられれば、、、)


 そう思い、座席に乗ろうとした時、突然とバイクのライトが光、


「悪いですが、私のハンドルに触らないでもらえます?」


 と、女性の声がバイクからしたかと思うと、バイクは急速にエンジを回して、巴を軽く弾き飛ばして、前輪を上げてウィーリーをしながら、


「今なら、コイルがまだ冷えているので。」


 そう言うとバイクは、ウィーリー状態でイタチの方へと向かってゆく。


「何だぁ!、あのバイクは?!、100はバイクはぶっ壊してきたが!、まさか、ひとりでに走るバイクとは!、まだまだ新しい発見はあるのぉ!来てみやがれ!バイクゥ!」


 イタチが、少々混乱しながらもハイテンションでそんセリフを言い、その倍に立ち止まり、バイクを切り裂こうとその場で三枚刃を振りかざす。

 その時だった、真っ赤なバイクは走りながら、その車体を変形させてゆく。

 その体は美しい赤色と合わさり、まるでバイク全体から[レッドゾーン]を出しているかの様に、前輪は真っ二つに割れて、後輪も変形して、ボディは回転し、ハンドルはまるで髪の様に一つにまとまって、ポニーテール亜種の様になると、フロントカウルの部分がフードの様に後ろに押し倒されて、そこから顔が出現し、振り落とされた刃を何故か前輪側についていた二本のマフラーをまるでトンファーの様に回転させて、見事に三枚刃を受け止める。い

そのバイクの顔は表情筋こそ無い、例えるのならばスペースコブラに出てくるアーマロイドレディなどと言った女性形ロボットかの様なその顔からはイタチに対しての嫌悪感が出ているのが雰囲気とオーラで分かる。


「失礼、化け物さん、悪いですが私はと、単品で呼ばれるのは少々気に食わないため、せめて名前で呼んでください。」


  そうすると、イタチは気持ちの悪い顔で笑顔をしながら、余裕の表情でバイクに対して、


「ほぉ、ならば、名を名乗ってみなぁ」


 とねっとりとした口調で言うとそんなことには気を触れず淡々と、


「私の名はマリー・クレナイ、そしてもう一つ言わねばならないことがあります。」


「ほぉう、何だってんだぁ?バイクぅ〜〜?」


「貴方を、今すぐに地獄送りにします。」


「はぁ?、何おっ、、、」


 マリーが言葉を言う終わると共に三枚刃を跳ね除けて、マリーとそのマフラーは空中に飛び上がり、そのまま回転しながらマフラーから火炎を出しながら、左腕のマフラーの火を爆発させるかの様に勢いよく火を出して急速に加速して、自身の倍のデカさはある巨大なイタチの懐に入っていき、そのまま右手の出しているかの炎で熱したマフラーをイタチの首に叩きつけて、イタチの苦悩の表情と共に首をそのまま熱によって切断する。


「油断、慢心、怠惰、残念でしたね。Mr.名の知らぬ化け物。」


 見た目とは裏腹に、その情熱かの様なボディから出た言葉は氷河期の様に冷たく冷静な声であった。


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