第7話

私だけが取り残されて、彼らが存在したことを証明する手立てはほとんどなくなった。


死んでしまった人間には、証明も痕跡も必要ないらしい。まぁ、それはそうよね。


結局私が兄妹のどちらを好きだったのかは分からずじまい、というわけだ。

よく似た双子に恋をして、私は自分に芽生えた恋心を一切疑わなかった。


それが全ての原因だったのかもしれない。

私はあまりにも私自身が大事すぎたんだ。


「クラゲの毒で人間は死ねるものなのかしら、あおくん」


乾いた私の笑い声に返事をしてくれた「彼」はもう居ない。


果たして、絶望なのだろうか。

あるいは、虚無だろうか。

それとも、寂寥だろうか。

はたまた、歓喜なのかもしれない。


否、私の心に巣食うこの感情は愛であって欲しい。


どうしたって、愛でなければならない。


麗しい二つのそっくりな顔を並べて、ホルマリン漬けにしてみた。


狂ったようにページが増えていくスケッチブックには、彼らの造形を余すところなく描き込んだ。

それが私なりの愛し方だった。


同じ瓶の中で、すやすやと幸せそうに眠る彼らを観察して、私は今宵も安眠を得るのだ。




どぉん、どぉん――――。

夏が終わっても、打ち上げ花火の音は未だ消えない。

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類稀なる青の果てに 高殿アカリ @akari_takadono

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