第18話 ついに、戦闘ですか!?
私の剣と、フレイの拳が何度も何度もぶつかり合う。フレイの拳には、魔力とオーラが込められ剣で拳が切れることもない。権能の力か新手の魔法なのか……。
「ちまちまちまちま、うぜーんだよ。剣がよ!」
ほとんど互角のぶつかり合いに流石に飽きてきたのか、後ろへと下がる。
「こんな、狭い場所でやるのもあれだからよ。店全体を使おうぜ!」
フレイが、壁を殴ると一種にして崩れ去る。
「ほら、こっち来いよ。そこで傍観してる二人もだよ。特にパンジャンはな!」
「行きましょう。ちゃんと訂正しなくては」
「そうッスよ、やられっぱなしじゃ気がすまないッス」
私もこんな狭い場所よりも、広い方が戦いやすい。
「そうだな、それじゃあ相手してやる」
「クックック威勢がいい事だな」
フレイの後に続いて個室を出る。
ルドラだったら、この状態でいきなり背後から襲いかかったり逃げたりするんだろうけど、私はそんな事しない。それこそ、勇者の末裔という肩書きに傷がついてしまう。
「さて、始めるか」
フレイはファイティングポーズを取り、私はそれに剣を向け構える。
「後ろの奴と一緒に、三人がかりで来たらどうだ?」
「いいや、結構」
パンジャンさんが戦うと、爆発して巻き込まれる危険性がある。レンフィールドさんはどうか分からないが、念の為やめておこう。何故か危険な香りがする。
「そうか、だがあたいは遠慮なく行かせて貰うぜ」
フレイは、ファイティングポーズをとったまま魔法陣をいくつも展開し、そこから炎弾をうち出す。
「くっ!」
打ち出された弾は、私目掛けて……ではなくパンジャンさんへと向かっていく。
「狙いはそっちか!」
どうにか後へと下がり、懐から取り出した水のポーションをその火にぶつけてやる。火は弱くなったものの、完全に消えることはなく。パンジャンさんへと当たってしまう。
「熱い! 熱いです!」
「どうするッスか! 私水の魔法は使えないッスよ!」
「ふざるなよ、フレイ! パンジャンさんに引火したらこの店ごと吹っ飛ぶんだからな!」
「一体何の話をしているんだ」
ここに来て、ルドラが居ないことを悔やむとは……。ルドラさえ居ればパンジャンさん達は任せられるのに……。
仕方なく、レンフィールドさんに何でもはいる袋を投げ渡す。
「だが、まさか魔法を使うとはな」
「なんだ、戦闘にはブラフはつきものだぜ」
ここまで、あからさまとはな。拳で殴り合うタイプだと絶対に思ったのに。
「クックック、あたいは魔法がメインなんでな!」
二つの魔法陣なら、大きな火の弾と黒い霧が出現する。
「『ダークラウド・フレイム』」
火と闇。ふたつが融合し燃え盛る黒い炎となると、周りの酸素を一気に奪われたような感覚に襲われる。
つまり、闇魔法の一つのデバフ魔法の影響だろう。それが、火と融合し大きくなった所で、一気に作用したのだろう。
「おい、どうしたんだ。苦しそうだぜ」
「……」
感覚を狂わせたところに、黒い炎が襲いかかる。それを、手に持った剣で切り裂くと瞬時にそれは消え去った。
「はぁ? なんだそれは」
「敵対する相手に、言うわけないだろ」
この剣も、私の家に代々伝わる勇者が残したとされる装備の一つ。勇聖剣ジ・イクリプス。闇系統の魔法や権能に触れると瞬時にかき消すことが出来る。勇者が使うと真の力を発揮するといい伝えられている、伝説の剣の一本だったりする。
「ほう、いい剣だな。だが、これならどうだ」
十個以上の魔法陣が出現し黒炎が襲いかかるが、剣に魔力を込めると強い光を放ち全ての黒炎が消え去った。
「ちっ、その感じを見るに闇の魔法だけを消し去るのか。パンジャンが火で燃えた事を思うとな」
もし、火を打ち消せるなら最初から使っているはずだからな。まあ、この情報は仕方がないことだ。軽く後ろを見ると、パンジャンさんは消化出来ていたようだ。
「よそ見してんじゃねえよ!」
闇をなくして、純粋な炎をぶつけてくるが、それを切り裂き地面を蹴り飛ばし間合いを詰める。
「…………」
至近距離から、斬りかかろうと剣を振り上げ、その勢いのまま下ろしフレイを真っ二つにする。……が、
「無表情で斬りかかって来るとは恐ろしい奴だぜ」
「…………この程度で、やられるわけないか」
先程の闇魔法かはたまた新しく使った魔法か、分からないが幻覚か脳に作用して場所をずらされたか。
すぐさま、フレイの火が飛んでくるが後ろへとバックステップで、回避をする。少し服に当たり焦げたが、許容範囲だ。
「おいおい、もう終わりか。んなわけないよな?」
「…………」
「また、黙りかよ」
一旦距離をとり、再び剣に魔力を込めると少し右へとフレイの位置が移動した。
「なるほどな、そゆことか」
「どういうことですか、レンフィールドさん。分かります?」
「つまりあれッスよ。光がやばいなみたいな、そんな感じッスよ」
それくらいの感覚なら、倒しやすかったんだがな……。
「ハッハッハ、こいつの剣は燃費が悪いんだよ。それを何度も何度やったらすぐに魔力が尽きる。そうしたら、あたいの勝ちだな」
「そういう事ですか……。なら、やっぱり私達も戦った方がいいんじゃないですか」
「そうッスよ! 一人で全員相手にするのは流石にキツいッスよ」
「君たち……」
あの、ルドラの友人だというのにものすごく良い人達だ。あの、ルドラの友人だってのに……。もしルドラなら、絶対にこの戦闘には参加しようとしないだろう。一人で逃げるか、傍観を決め込む。
「それなら、皆で戦うとするか」
厳しくなったら、この二人をどうにか逃がせば問題ない。
「それじゃあ、やってやりましょう! これで私の、評価も上がります」
「絶対に私も帰りたくないッスし!」
やる気十分で、私の挟むように並ぶレンフィールドさんとパンジャンさん。
「ハッハッハ、ようやくこれでパンジャンを狙えるな!」
フレイは、四つの魔法陣を出現させ巨大な火の玉を放出する。
「耐えられるかな!」
向かってくる、火の玉を二つ程切り裂く。残り二つは、パンジャンさんとレンフィールドさんへと向かっていく。
「この程度なんてことないッス! 『アルスフレイマ』」
「行け! 『パンジャンドラム』ちゃん!」
火の玉をレンフィールドさんの炎が包みこもうとするも威力の違いにより弾き飛ばされそのまま直撃を受けてしまう。
「熱い、体が燃えるるるるるるる」
それに対し、パンジャンさんは。自分の投げた『パンジャンドラム』により火の玉を、かき消す事には成功したが至近距離から、爆発を受けてしまう。
「痛ててて……」
この二人、本当に大丈夫か? 既に心配になって来たぞ。
「ふふふ、まだ私は負けわけじゃないですよ!」
「負けどころか、勝手に自爆してる奴が何を言ってるんだ」
「安心してくださいよ、タスラナさん。レンフィールドさんは、いつも燃えなれてるので」
「それをどう安心しろと!? あと、何故燃えなれてるんだ」
本当に、本当に大丈夫だろうな? ものすごく、心配になってきたんだが。
「なんだ、てめぇの仲間は。役立たずだらけじゃねえかよ」
「……否定、出来ない」
「否定してくださいよ! 大丈夫、今からちゃんとしますから!」
「そうッスよ! 今度こそまかせて下さいッス」
手に『パンジャンドラム』をもつパンジャンと、火が消えが体が焦げたレンフィールドさん。
このバカコンビ……、どうしようか。
「本当に大丈夫なんだな?」
「「はい!」」
この二人を見ていると、ルドラがまともに見えてくるな。いやあいつはあいつで、性格がねじ曲がってるか。
「話し合いは、終わりかよ!」
剣を構え直し、新たに出現した火の玉を斬り進んでいく。
「そっちはそっちで自分で対処してくれ」
「任せてください!」
『パンジャンドラム』を、投げつけ爆破させる。その衝撃がこちらにも来て、少々ダメージを負うが問題ない。
「ちっ!」
真正面からの、炎も断ち切るフレイが間合いへとはいる。
黒い霧をまとい姿を消そうとした所を、剣に魔力を込めそれを取り去る。
「面倒だな!」
フレイが、拳を振り上げるよりも早くその腕を刈り取った。
「ぐふ…………、やりやがった。なんてな!」
刈り取った腕が、突然爆破しその衝撃をこらえると。その隙を狙い、フレイは
「オラよぉ!」
もう片方の腕を使い、私の腹目掛け重い一撃を入れてきた。
「あァ、ぶぐほぉァ」
その衝撃で後ろに吹き飛び、壁へと激突する。体中の骨が折れたのか、痛みで立ち上がる事が出来ない。
「てめぇさ。本当は、勇者でも何でもないんじゃないのか?」
「なにを……言ってる……」
「ああ、前に勇者と戦ったことがあってな。あたいはそいつに惨敗した。ほとんど無限のような魔力を剣に込めて襲いかかってきたし、てめぇとは大違いだな。その剣も使いこなせてなかったし、認められてないんじゃねえのか?」
「…………」
「おっと、なんだ? 図星か」
私は勇者の末裔であっても、勇者では無い。勇者の権能というものがこの世にはあるらしいが、私はそれに目覚めていない。私の、母や今までの家系全ての人達が覚醒しているが、私だけは覚醒してなんてない。つまり、私は落ちこぼれ。でも、その分は毎日剣を振り、街の人達を守り続けてきた。そのおかげで、今ではギルドの幹部まで登り詰めた。でも、やはり勇者としてはかけている。こんな、幹部程度の敵にすら勝てないのだから……。
それでも、私は……。
「皆を守るために、立ち上がらなきゃ行けないんだ」
「ふん、立ち上がるのか? なら、徹底的にやらなきゃな!」
「私の事も忘れないでくださッス!」
いつも通りに、燃えて倒れていたレンフィールドさんが、いきなり立ち上がりフレイに飛びかかり羽交い締めにしようとするも、完全に力負けし逆に頭を捕まれ地面に叩きつけられる。
「クハ!」
さすがの威力に気を失ったのか、一撃で動かなくなった。
「おいおい、お前の守りたかった奴らもこのザマだぜ」
「……これでもくれてやるよ」
歯を食いしばり、痛みを堪えて立ち上がる。最後のすべての力、全ての魔力を剣に込めて解き放つ。
「『ブレイブ・クラウ・シャルーサ』」
店は、光に包まれありとあらゆる闇を浄化していく。
「クッソタレガ!」
だが、この必殺技は最後に剣で刺すところまで完成だが。もうそんな力は残っていなかった。私は、最後の必殺技を使ったのちその場に倒れてしまう。
「あとは……、任せるぞ。ルドラ……」
そう言い残し、フレイは気を失ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます