第14話 戦闘ですよ! もっと描写をしっかりしてください!

「ルドラさん、起きてくださいッス」


 気持ちよく、地面に寝そべり眠っていたのだが……。突然、レンフィールドが起こしてきた。


「なんだどうした。吸血鬼だから、夜に性欲が強くなるのは分かるが。俺は幼女に興味ないんだ。残念だったな」

「べ、別に性欲が強くなるとか関係ないじゃないッスか! そんな事よりもルドラさん。大変です、モンスターの襲撃ッス!」


 モンスターが? ちっ、こんな変なタイミングでフラグ回収されただと!? 普通、この話をしてる時に襲ってくるもんだろうが。


「それなら、さっさと準備しろ」

「準備ッスか? 戦いに行くんッスか! 私も頑張るッスよ」

「んわけねぇだろ。さっさと安全な場所に避難するんだよ。どうせ、タスラナがいるんだから勝てるだろ」

「そうッスよね。ルドラさんが、わざわざ危険を犯して戦いに行くわけないッスよね」


 護衛に雇ってる奴が居るんだったら、そいつらに任せて何が悪いんだか。まだ、負けそうなら戦うが、タスラナが居るなら負けることは無いし、戦いたいなら勝手に行けばいい。


「分かりましたッス! 私一人で戦うッスよ!」


 そう言い残して、一人走り去っていた。 

 むしろ、レンフィールドが行ってもあとでまといになりそうだが……、止めるのはやめておこう。


「さて、一応パンジャンも起こしてやるか」


 立ち上がり、軽く体のコリを解しつつパンジャンの側へと歩み寄る。


「おーい、パンジャン起きろよ」


 軽く身体を揺さぶりながら、起こそうとするも全く目覚める気配はない。

 こういう時は、どうすればいいいくつか方法がある。まず、鼻の中に香辛料をたっぷり入れる。他にも、水を含ませて窒息させてもいいし、起きるまでボコボコに殴ってもいい。この中で、安全かつ俺のストレスを発散出来るのは……。


「水……だな」


 それで死んでも、知ったこっちゃない。起きない方が悪いんだしな。まあ死んだら、死んだで。今から行く魔王軍にでも提供して今回の件はなかったことにしてもらおう。兵器少女は強いらしいし、死体でも高値が付くだろう。


「フフフ……」


 レンフィールドが夜起きた時に飲みたいと言って、タスラナに出してもらったコップの中にまだ水が残っていたので、それを鼻に近づけると……。


「ハッ! なんか、悪寒がして……。って、ルドラさん何してるんですか!? 待って、待ってください! 起きましたから! もうバレますから、やめてください!」

「うるせぇ、お前が起きるのはサブクエストだ! メインクエストは俺のストレス発散じゃボケ! 殴らなかっただけ感謝しろ!」

「どこに感謝しろと!?」


 無理やり鼻の中に入れようとしたが、腕を掴まれて押し返された。流石に力負けしたので、素直にコップを近くに置く。


「全く、たまにルドラさんが何をしたいか分からなくなりますよ」

「俺がしたいのは、金稼ぎだが」

「欲望に忠実過ぎませんか」


 相手を騙すわけでもないのだから、自分の目的を言って何が悪い。それくらいも言えないやつの方が恥ずかしいと俺は思う。


「それで、なんですかこの騒ぎは」

「ああ、モンスターが襲ってきたらしいんだ」

「モンスターですか!? ついに、私の名声をあげるチャンスが来たという訳ですね!」

「なんで、レンフィールドといいお前らは好戦的なんだか。逃げるに決まってるだろうが」

「冒険者なのに、そんなすぐ逃げようとするのはルドラさんくらいですよ……」


 絶対、俺だけじゃないと思うが……。


「行きましょうよ、ルドラさん!」

「いいや、俺は絶対に行かないからな」

「でも、雇われてもない人がモンスターを退治したら、お金を貰えるかもしれませんよ?」

「よし、さっさと行くぞ。ほら、何をボーっとしているんだ。早くいくぞ」

「本当に、ルドラさんって自分の欲望に忠実ですよね……」


 寝る際に、そばに置いておいた短剣とステッキを持ちすぐさま向かったのだ。



***



 たどり着くと、善戦をしている冒険者達の姿があった。相手は、ゴブリンの部隊だがここまでの行軍で疲れ果てているせいか、あまり動きが活発ではない。これは、俺でも倒せそうだ。


「よし、行けパンジャン。今なら、珍兵器でも倒せるはずだ」

「珍兵器じゃないですから! まあ、それは後にしときますよ」


 パンジャンは、両手に出現させた魔法陣同士を合成し一つの大きな魔法陣を生み出した。そして、その魔法陣に見合ったパンジャンが兵器モードになった時と同じ大きさの『パンジャンドラム』を出現させた。


「私も、やろうと思えばできるんですよ。まあ、これを出現させたら燃料がほとんどからになりますがね」

「それなら、小型の『パンジャンドラム』を大量に出現させてぶつけた方が絶対にいいと思うんだが?」

「……ッハ! 確かに言われてみればそうですね」


 これだから、珍兵器って言われるんじゃないのか? 能力だけじゃなく、頭も馬鹿だしな……。


「なんか、ものすごく不名誉ないことを思われてる気がしま……す」


 いきなり、パンジャンは膝から崩れ落ち地面に寝そべる。


「どうしたんだ、パンジャン。眠くなったのか?」

「いえ……、燃料が無くなったので倒れただけです。おぶってくれませんか」


 それだと、どっかに居そうな爆裂魔になるだろうな……。まあ、それはともかくとして、これは絶好なチャンスじゃないのか? 燃料はないし、爆発しても周りに被害を及ぼすこともない。


「どうしたんですか、なんかまた悪寒がしたんです……が。ちょっと何してるんですか重いんですけど!」

「ちょっと、背中に思いっきり体重をかけているだけだ」

「それ、文法間違ってないですか⁉ ちょっと、おもいっきりって! というか、やめてくださいよ。早く、降りてください!」


 まあ、やり過ぎても学習してこれから同じくらいのパンジャンを出さなくなってしまうだろうし、やめておこう。


「まあ、疲れたくないしおぶらないからな。それで、この『パンジャンドラム』はどうやって動かすんだ?」

「私なら、全部能力の範囲内なので点火することができますが。燃料もないので、火系の魔法かなんかで点火してあげて下さい。って、せめて体を起こしてください」

「そうか、点火なら『フレイム・ラウド』」


 車輪についているロケット弾に点火していく。


「お前ら、どいてろ。これで、全部ぶっ飛ばしてやるから!」


 激しい音を出しながら、その大きな車輪を動かし前へ前へと進んでいく。


「なんだあれ?」

「分からんが、とにかく逃げた方がよさそうだぞ」


 雇われたと思われる冒険者たちが、その場から引いていく。さて、俺もこの場からさっさと逃げておくか。こっちに来そうだし……。

 『パンジャンドラム』がゴブリンたちの方へと向かっているうちに俺は、パンジャンより後ろへと逃げる。


「ちょっと、ルドラさん! 私も連れてってくださいよ!」

「何言ってんだ。あれは、お前の分身みたいなものだろ。そして、お前は、あれに誇りを持っている。つまり、あれはっこっちに来ない。な?」

「な? じゃないですよ! いや、別に信じてないわけじゃないですよ? 一応、私も連れて行ってほしいなと」

「そうか、じゃあな」

「ちょっと!」


 信じるなら、最後まで信じるべきだ。まあ、それよりも助けて逃げたくないのが本音だがな。

 そんなことを考えながら、後ろ振りむく。パンジャンはちょうどゴブリンの目の前まで接近していた……が、『パンジャンドラム』がそう簡単にまともに動いてくれるはずもなく。


「こっちに来るんじゃねえ!」


 少し、後ろに引いた冒険者達へと『パンジャンドラム』ドンドン進んでいく。


「おい、パンジャンさっさとあれを止めろ! 味方がやられるぞ」

「だから、そうなってるんですか! 地面しか見えないんですよ。早く、お願いですから起こしてください」

「お前を起こしたらこっちに来た時の防波堤が無くなるだろ! 起こして盾にしてもほとんど直撃だから意味もない。どうにか、その状態でやれ!」

「結局自分が、かわいいだけだけですよね! 頼みますから、起こしてください!」


 さて、パンジャンはどうせ燃料切れだし起こしても役に立たなそうだな。いや、よく考えたら、燃料切れで『パンジャンドラム』を止めることすらできないんじゃ……。


「おまえ、本当に使えないな」

「いきなりどうしたんですか! というか、これを動かしたのはルドラさんですからね」

「おい、これは流石に責任転換だぞ。俺はお前が動けないから、変わりに動かしてやっただけだからな」


 今回の件だけは、さすがに納得できない。

 

「おい、二人共。あれはなんだ」


 ちょうどそのタイミングで、ゴブリンの返り血を浴びて、服が紫に染まったタスラナがやってきた。


「何って、『パンジャンドラム』だよ。こいつが兵器を生み出しただけだ。」

「じゃあなんで、味方を襲っているんだ! コントロールは」

「ふ、パンジャンドラムを甘く見るな。あいつは、最恐の兵器だ。味方諸共消し飛ばす」

「なんでそんなものをこのタイミングで……。それじゃあ、パンジャンさんはなぜ倒れている」

「んなもん、燃料切れに決まってんだろ。これだけバカデカい奴を作ったんだから」

「なんだ、やっぱり度々思っていたが……。パンジャンさんって馬鹿なのか?」


 遂に気づいたか……、この心理に。


「そんなことあるか? いや、今はそんな考えている場合なんかじゃない。ひとまずあれを止めに行くぞ、ルドラ!」

「何言ってんだ、逃げるに決まってるだろ」

「この、剣で切るぞ」

「すんません」


 タスラナは、剣を俺へと向けて脅してきやがる。そのための、剣じゃないだろ全く……。というか、紫の血が付いてるのがグロくてきもいんだが。


「君のたまに使う必殺技はダメか?」

「『レスコントロール・テンペスト』か? いや、そんな事しなくても軽い刺激を加えれば簡単に爆発するぞ」

「なら、あれはなんだ」


 タスラナが刺す、指の方向にあった『パンジャドラム』は様々な冒険者の魔法を食らってもびくともしていなかった。


「っち、どうなってんだよ! おいパンジャン」

「あれですよ。たまに、こうやってなぜか硬かったりしっかりとまっすぐ行ったり。変な奴が出るんですよね」


 なんで、こんな時に限ってそんなものが……。運がないって、レベルじゃねえぞ。


「私は、ゴブリンを退治してくる。ルドラはあれを破壊してくれ」

「ちっ、分かったよ。やればいんだろ? たくもう、なんで俺が」

「ふ、頼りにしてるぞ」


 そう言い残し、タスラナはゴブリン達に向かって、全速力で走り出した。獲物を打つ、狩人のごとく……。


「頼りにしてるって言われてもな……。俺が頼りにならない人間だってな。後で金を要求するか。おい、パンジャン。お前はここに置いてくけどいいよな?」

「ええ!? ちょ、この状態でモンスターに襲われたらどうするんですか」

「大丈夫、お前が死んでも損失はない。むしろ金が貰えて一石二鳥だ……。むしろ、囮としてモンスターの中に」

「すいません、行っていいです。頑張ってきてください」


 こいつなら、なんとかなる。大丈夫だろう。そう、俺は信じている。

 『パンジャンドラム』の向かった方へと足を動かす。周りにいる者たちはへとへとで、きっと『パンジャンドラム』に追っかけられたのであろう。別に、『パンジャンドラム』は、早いわけではないので幸いにもすぐに追いついたのだが……。 


「ちょっと、待てやあああああ!」


 『パンジャンドラム』はなんと馬車の傍まで来ていたのだ……。

 っち、やるしかねえってのかよ! 

 心を落ち着かせ、両腕に力を込める。そして、『パンジャンドラム』を…………!

 尻目に見てくるりと振り返りそこから逃走した。


「このままじゃ、爆発に巻き込まれる!」


 全力で足を動かして逃げ走り、そして数秒後に後ろから爆風が飛んできた。これは、見るまでもなく馬車が壊れたな……。

 その調子で、走っていると更に紫色に磨きのかかったタスラナの姿があった。


「おい、ルドラ。あれはどういうことだ? ゴブリンを殲滅してさっさと来たんだが?」

「いやぁ、俺が着いた時には既に『パンジャンドラム』が馬車のすぐ側にあってな」

「そうかそうか、ハッハッハ! まあどうせ、お前のことだから爆発に巻き込まれないように逃げてきたんだろうな」


 こいつ、心を読む権能でもあるってのか。


「それじゃあ、ルドラ。歯を食いしばる準備は出来たか?」

「心の底からごめんなさい」


 謝ったが、それで許して貰えず本気のアッパーを食らったのだった……。


 





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