第13話 メタイですよ!

 隣の町が一日で着くはずもなく、俺たちの馬車は一旦休憩がてら野宿することなった。


「いやあ、本当にタスラナさんが準備してくれて助かりましたよ」

「そうッスね。ここら辺の野宿用の道具とかなかったら結構大変でしたッスよ。全く、どっかの誰かさんと違って優秀ッスね」

「だれのことだろうな。全く検討もつかない」

「それが本当だったら、病気だぞ……」

 

 なぜなら、俺は全くもって悪くない。この四日間の野宿でも、食事を得るためにちょっとパン屋の店主に土下座して耳を貰ったり、飲食店に忍び込み食べ終わり残されたものを食べ……。まあ、幸いにして捕まり一日の食事は賄えたのはラッキーだったな。


「にしてもどうしてこんな場所で止まるんだ? 野原の真ん中なんかの必要はあるのか」

「あった方がいい。もし、魔物に襲われてもここなら、いち早く見つける事ができる。それに、逃げやすさも抜群だ」

「それはそうだがよ。そんなもんなのか、確かに言いたいことは分かるんだがよ」

「それに最近。魔物たちが歩いているのが発見されたらしい」

「魔物たちが? まさか、あの森にいたとかか」

「多分そういうことだろう。私も、詳しいことは分からないのだが……。あそこを、提供していたらしい。もちろん、こっちに絶対に危害を加えないこととを条件にだがな。だが、その森を焼かれて魔力の高いものに惹かれているんだろう」


 ということは、今俺たちと同じ方向に向かってるってことか……。にしても、本格的にフラグが回収されそうだぞ。


「さっきも言ったが、心配しなくても私やほかの冒険者もいる。安心しておけ」

「そうだな、最悪俺も手伝えるしな」

「…………」

「なんで黙るんだ」

「君らは、待っていてもかまわないぞ」


 この野郎、俺らを全く信用していないな。


「安心しておけ、俺だって冒険者だぞ? 弱いわけないだろ」

「料理屋でもまずい場所はまずいだろ」

「おいこらタスラナ、温厚な俺でも怒る時は怒るんだからな」

「なんで、今までのディスリは良くて冒険者の件はダメなんですか」


 そう言われても、特に何も考えてなかったしな。


「まあいいさ、そんな事よりも君らはこの仕事が終わったあと何をするんだ?」

「特に考えてないが。まあ、今から行く街でバイトで出来そうな仕事を探してもいいし、まあ無理そうならまた町に戻って、カルスタンに頼るかな」


 それか、賞金首を追っかけてもいいが面倒くさそうだしそれはやりたくない。


「それなら私が手伝うぞ。この仕事が終わったら、ギルド長に頼んでやる」

「いいのか?」

「ああ、今回の件の一番の問題は魔王軍との交渉材料の一つの森が焼けたことが問題だからな。どうにか、この交渉を成功すれば問題ない。まあ、借金は背負ってもらうことになるかもしれないがな」

「っち、まあそりゃそうか。まあ、一応考えておくよ」

「そうだな、私はお前のことが心配だからな」


 こいつは、俺の親か? まあ、俺にもメリットがあるから別にいいがな。


「まあ、レンフィールドさんとパンジャンさんはルドラが受けたクエストを協力すればいいんじゃないか? そうすれば、ギルドに入らなくても分け前がもらえる」

「いいんですか、そういうの?」

「他のギルドは知らんが、うちのギルドは別にいい。まあ、ギルドに入ると色々といいことが多い。だから、普通はギルドに入るんだ」


 なるほど、つまりギルドに入ってたらギルド側が分割して報酬を渡してくれるのだが、そこらへんは自己責任になってしまうのか。


「まあ、きみらなら大丈夫だろう。それじゃあ、食事でもするか?」

「お、待ってたぜ。最近、まともに食事してなかったからな」

「そうッスね。ルドラさん、パンの耳とか人の食べ残しとかばっかでしたッスからね。あと、普通に万引きもしてましたッスよね」

「あれも、作戦だからな。刑務所で食事を得るっていうな」

「そこまで困るなら、食事くらいおごってやるぞ」


 お、いいなそれ。基本的にいつも金がないし、借金も返さないといけないしな。


「ならこれから全員で毎日行こうぜ!」

「それしたら、殴るぞ。毎日な」

「調子に乗りました……」


 マジこいつ怖え……。目が、本気だ。


「まあ、それで何を食べるんだ?」

「そんな豪華物を期待されても、ないからな。ただの肉だぞ」


 何やら袋を取り出し、その中から包まれた生肉を取り出した。


「なんですか? その袋」


 物珍しいのか、目をキラキラさせながらタスラナに質問するパンジャン。


「これは、代私の家系に々受け継がれている袋だ。この中にものを入れると、時間が止まり腐ることも無くしかもいくらでもものを入れることが出来る優れものだ」

「なんッスかそれ。伝説級のアイテムじゃないッスか。私の国にそんなものないッスよ」


 そんな価値のあるものなのか? それなら、売ったら高くなりそうだ。


「おい、ルドラ。その目はなんだ。絶対に渡さないからな」


 こいつ、俺の視線だけで察しやがったよ。一応誤魔化しておこう。


「少し気になっただけだ。その袋を悪用すれば敵を中に入れて、マグマ流し入れれば簡単に倒せるんじゃないかと思ってな」

「いや、そもそも生き物を入れることが出来ない。もし入れれたとしても他のものと干渉しないようになってるから無理だ」

「なんだそのチートみたいなやつ」

「チートか、まあそれと同じ類なのかな。言われてみれば」


 たまに、異世界から来るやつらがいるらしい。そいつらが持って権能が化け物なのだが、それをそいつらはチートだと言い、それが広まり今では次元の違う化け物みたいな力を持つ物の事をチートと言うようになったという経緯がある。


「じゃあ他にもあるッスか? 代々受け継いでいるものとか」

「……、まああるにはある。でも、今日は持ってきてないんだ。すまない」


 一瞬言葉につまったようだが、どうしたんだ? なんかやましいことでもあるのか。


「そうなんッスか。残念ッス」

「まあ、今度。見せよう」

「本当ッスか! ありがとうございます」


 目をキラキラして、物凄い笑顔でペコペコとお辞儀をする、レンフィールド。


「なんでそんなに、好きなんだ」

「そんなの決まってるじゃないッスか。伝説の物は男のロマンッスよ」

「お前は女だろ」

「まあ、細かいことはいいんッスよ」

「性別は細かくねぇだろうが」

「それ、一部の人に言ったらダメですからね。性別は身体じゃなく心に宿るんですから」

「それとこれとは話が別だ。まあ、この話は終わろう。めんどくさい事になりそうだ」


 主に作者が……。作者ってなんだ? どうしてそんな言葉が頭に!? まあ気にしないでおこう。


「そろそろ焼いていいか?」

「もちろんだ」


 軽口を叩きあっている間に、タスラナは準備を終えたらしくあとは着火するだけとなっていた。


「それじゃあ、ルドラ。よろしく頼むぞ」

「はぁ? 俺にわざわざ魔法を使えって言うのか? 言っとくけど俺の魔法は……」

「食事抜きでいい?」

「『フレイム・ラウド』」


 赤い色をした魔法陣から火の玉が出現しヒョロヒョロと飛んでいき、草に触れると燃え広がった。


「やったはいいが、俺の魔法はそんなに長く持たないぞ」

「そうなのか? まあ、それなら消えたらもう一度やってもらう」

「めんどくせえな……。まあ、肉を焼くくらいなら出来るからいいんだがよ」


 魔力を込める量によって、魔法の持続時間も違う。俺には誰がなんと言おう膨大な魔力がある。だが、それ以前に俺が使えるような魔法は、持続時間が少ないのだ。あくまでも、これは俺の魔法の問題であって魔力が少ない訳では無い。そこだけは、勘違いして欲しくない。


「それなら、私が魔法を使うッスよ。ルドラさんよりも、上位の魔法をいくつも使えるッス」

「そうなのか? それなら頼めるか?」

「任せてくださいッス!」


 無い胸を叩くと、ゴンと言う鈍い音がなったレンフィールド。少し、しょぼんとしながら草木へと炎を放つ。

 成長の余地があるとか言っているがやっぱり気にしては居るようだ。


「これなら、最初からレンフィールドに頼めよ」

「レンフィールドさんが炎魔法使えるなんて知らないしな。お前が使えるのは知っているが」

「俺に、嫌がらせしたかっただけなんじゃないのか?」

「お前に嫌がらせをしたいなら、二度と魔法が使えないように、徹底的にいたぶるぞ」

「え……、やらないよな? 本当にやらないよな」

「…………」

「黙るな!」

 

 たまにこいつは、サイコパスみたいなこと言い始めるからな……。本気でやりそうで怖い。

 にしても、タスラナの反応を見るに吸血鬼が全部が全員火系統の魔法を使える訳じゃないってことか。色んな場所で戦ったりしてるタスラナが吸血鬼と戦ったこと無いわけないもんな。


「タスラナさん! 紅茶ってありますか? 私、紅茶で動くんですよ。水でもいいんですけど。私の権能を使うんで、燃料みたいなものなんですよ」

「ああ、そんな設定あったな」

「設定じゃないですよ! 私の死活問題ですから!」

「フーン」

「カチンと来ましたよ! ルドラさんこそ、なんですか。自分が強い強いみたいなアピールして、格好付けちゃって。なんですか、恥ずかしいですよ! キャラ付けですか、キャラ付けなんですか!」


 ふー、よし殺すか。


「ちょっと待て二人とも! こんな所で、というかこんなくだらない事でで殺し合いをするなんて馬鹿らしいぞ」

「うるせぇ、これは俺の尊厳をかけた戦いなんだよ!」

「そうッスよ、負けられない戦いがあるんですよ!」

 

 ステッキを取りだして、魔法陣を出現させる俺と『パンジャンドラム』を出現させるパンジャン。


「なあ、レンフィールドさん。いつもこんな感じなのか?」

「そうッスね。たまに私もここに加わったりするッス」

「ルドラが、心を許してるのはいいけど。流石にこっちに被害が来るのは面倒臭いな」


 こいつら、俺達の事を何も考えてないな。流石に、タスラナを本気で怒らせるのはまずい。ここらでやめておくか。


「仕方ない。タスラナの頼みだここはやめといてやる。タスラナに礼を言うんだな」

「そうですね。ルドラさんこそ、タスラナさんにお礼を言うんですね」

「「…………(互いにメンチを切る)」」

「マジで二人とも、それ以上やるなら。私も本気だすからか」

「まじですいません」


 怒らせるの、ダメ絶対。


「にしても、なんでルドラさんはタスラナさんにだけそんなに消極的になるんですか?」

「いやまぁ、タスラナは別格というか。絶対に勝てない相手には逆らいたくないんだ」

「そうなんッスか? なら私達には……」

「完封できると思ってる」

「パンジャンさん。私がルドラさんに特攻して抑えるので、その間に」

「分かりました、爆殺すればいいんですね」

「ほらほら、もうレンフィールドさんも加わらないの。出来たからさっさと食べるぞ。パンジャンさんにはこれをあげるから」


 水を受け取り上機嫌になるパンジャン。そして、俺達は食事中もずっと長いこといがみ合いをし続け、何時間か経った頃特にモンスターが攻めてくる事もなく眠りへと付いたのだったが……。


 


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