第11話 魔王と裏の仕事ですか?
「なんで、裏の仕事ばっかりなんだ。もっと、まともなやつはないのか」
「盟友よ。私がなんの職業についているか忘れた訳では無いだろうな……。まあ、普通のやつもあるが。もし、ヘマをしてもそっちは責任取れないぞ」
確かに、裏の仕事ならある程度はこいつの権限で無理やり丸めこめそうだが、表の仕事だとそうもいかない。まだ、皿を割ったりだとかそろの程度ならまだしも、いきなり人体発火し始めたり店を爆破したりしてしまったら、丸め込むにはそれなりの力がいる。
それなら、裏の仕事をこなした方がいいか……。
「そうだな、ならこいつらでもできそうな仕事はないか?」
「レンフィールドちゃんと、パンジャンさんだな。レンフィールドちゃんは、別に吸血鬼だし分かるんだがな、パンジャンさんは別に普通の仕事でも出来るんじゃないか?」
「お前の言う通りだ。こいつが、普通の人間だったらな」
こいつが、転んだだけで爆発しそうな兵器少女じゃなかったら普通の仕事でもできそうだしな。いや、どちらにせよ運んでいる料理を溢しそうだから意味ないか。
「そうか、確かに兵器少女か。だが、言わなければ普通の奴らには分からないんじゃないか?」
あれ、こいつにパンジャンが兵器少女だと言ったか?
まさか、最初から分かっていた? 流石、奴隷商人の事だけはある。見る目があるな……。
「なんだ? まるでわたしが、パンジャンさんの正体を分かってなかったみたいじゃないか」
こいつ、ついに俺の心を読んできたぞ。新たな権能にでも目覚めたか。
「いや、そういうわけじゃないが……」
「まあ、確かに盟友なら分からないかもな。存在すら知らなかったんだろ? どうせ」
この野郎。本当に俺のこと知りすぎなんじゃないか? こいつのことが本格的に怖くなってきた。とはいえ、動揺を見せたらこいつが調子乗るか……。
「そんな訳ないだろ! 俺だって、それくらい知ってたさ。当たり前だろ?」
なんかパンジャンが、何言っているんだこいつという目で見てくるが無視しよう。俺は前から知っていた。
「どうせ、はったりだろ? まあいいさ、つまりもしもの為に俺の手の届く範囲で働かせたいという事か」
「まあ、そういう事だ。こいつ、ポンコツだしな。下手すると、この町も破壊しつくす可能性もあるし……。借金が増えたらたまったもんじゃない」
「ひどいこと言いますね……。まあ、否定できませんが」
事実を混ぜて軽口を叩いただけで、個人的には否定でしてほしかったが……。まあ、しゃあないパンジャンだもんな。
「大体分かった……。それで、結局どんな仕事が欲しいんだ。わたしにできるものなら、なんでも提供しよう。お金以外でな」
「やっぱ金はだめか……」
「盟友に金を渡したら、返ってこない。もしくは人としてだめになるだろ? これは、お前のために言ってるんだからな」
なんだこいつ……。お前は、俺の親かよ。というか、お前の為とか言うな気持ち悪い…………。
「まあ、分かってたからこうやって仕事場を探していたんだろ?」
昔、一度だけ金をせびったことがあった。その時は、奴隷になったら一生遊んで暮らせる金を渡してあげようと言われたりしたのだが……、忘れよう。
「実際そうなんだがな。それで、どういう職業がいいかか……」
「うーん、私はどうせなので自分の名声が上がるような仕事ですね。給料やお休みもは多いと嬉しんですが……」
そんな仕事はねえよ。あったら、俺はやってるし誰でもやってんだろ。
だが、俺の考えとは裏腹にカルスタンは意外にもそれを組んだ職場を提供した。
「分かった、つまり奴隷商人だな。王族や貴族からの信頼も得られ、そのつてを使えば簡単に名声が上がるだろう。なおかつ、給料も休みもたっぷりある」
「よし、それで決定だ」
なんて完璧な職場だ。全くそんな、職場は思いつかなかったな。さっそく準備していこう。
パンジャンは、こんな完璧な職場を提供されたのに顔を真っ赤にして声をあげる。
「『決定だ』じゃないですよ。何言ってるんですか、勝手に人の職業を決めないでください。さっき自分で、変なのって言ってましたよね!?」
「変なのだとしても、それがお前に合ってると思ってな」
「そんな事ばかり言っていたら、爆殺しますよ?」
満面の笑みで言う言葉ではないと思う。怯えているわけではないが、一応ご機嫌を取っておこう。
「まあ、パンジャン聞いてくれよ。お前は、すぐに転んで爆発したりふらふらと歩いて何かにぶつかって爆発するような珍兵器だ。だがな、そんなお前でもいいところはあると思っている。それは、頭が悪いことだ。だから、騙されて行ってくれないか」
「ぶち殺しますよ?」
何故だ、最大限褒めたつもりなのに……。
「まあまあ、とりあえずパンジャンさんはそれでいいとして。レンフィールドちゃんはどうかな?」
「正直、私は働きたくないッスが。まあ、強いて言うならまかないとかもらえる飲食系がいいッスが」
こいつはなんでついてきたんだか。まあ森が燃えたのもあるが、働く必要はないはずなんだがな。どうせ、ご飯を食べなくても大丈夫だろ。こいつだったら、そのうち光合成とかできるようになるんじゃないか?
カルスタンは立ち上がると、ポッケからあるものを取り出し……
「じゃあ、わたしの下で働いてもらおう。安心してくれ、給料は大量に出すし毎日が休みだ。その代わり私の家に居てくれれば……」
「奴隷よりはまだましだとしても、嫌ッスよ! それに、その取り出したものはなんッスか!」
「何って、特注の手錠だが?」
その手錠でなにをしようとしてたんだかこいつ……。 まあ、奴隷商人だからあれだがよ……。
「もういやッスよ、この人。助けてください、ルドラさん」
「なんでだ、家に居るだけで金がもらえるんだぞ。いいじゃないか、ほらやれよ」
「他人事だと思って……。ルドラさん」
実際他人事だしな。もし、逆の立場でこいつがロリコンじゃなければ俺はすぐに了承するがな。ロリコンじゃなければ……。
「さて、二人ともわがままが多いな。今更ながら冒険者にはならないのか? ルドラは嫌われているとはいえ、ギルドに紹介出来るんじゃないか?」
「ハッハッハ、バカなことを言うな。それが出来たらこんなとこに来ねえよ」
「なんだ、また何かしたのか?」
またってなんだまたって……。まるで俺が、いつも問題を犯しているみたいじゃないか。俺はこれでも毎日、頑張ってみんなのために行動しているんだがな。
「ルドラさんは近くの連魔の森に火を放ったんですよ。そのせいで、ギルドから追放されてしまったんですよね。それに、そもそも私はギルドに入る事が出来ませんし……。レンフィールドさんは吸血鬼で入れるか分からないんですよね」
「入れない……。なんかの条約があった気がするが、それのことか。じゃあ、一つ聞くがパンジャンさんはやレンフィールちゃんはどれくらい戦えるんだい?」
「私ですか? えっとですね……、都市を一人で壊滅できますよ! 頑張ればですが」
そう意気込んではいるが……、こいつは何を言ってるんだ。
『パンジャンドラム』が、全部前へと進み尚且つ紅茶を大量に摂取できるような環境があれば出来ると思うが……。そんな状況を、どうよういすればいいっていうのか。むしろ、味方を全滅させるまであるぞ。
「私は、炎の魔法が使えるッス。あと、吸血鬼なので人間を噛めば眷属にすることもできるッスよ」
それが普通の吸血鬼ならそうかもしれないが、レンフィールドの場合は血が嫌いだし眷属にすることはしないんじゃないか。
「なるほど、君らはそんなことが出来るのか。ならいっその事、冒険者になれないのが悔しいな。なら、魔王軍の幹部の護衛とかはどうだ? 最近近くに、魔王グラード・ツヴァイ軍の奴が来ているらしい。それの護衛をするのはどうだ?」
「魔王軍……か」
魔王、その称号を持つのはこの世界で七体しかない。普通の王とは違い、ある程度の力や条件を達成することによりその存在に進化することができる。その際に、更に強くなり権能が手に入るという。
そのうちの一角がその、グラード・ツヴァイなのだ。
「なんだ? 言ってなかったか、魔王達と取引きしているの」
「いや、昔言っていたから分かっている。ただ、あまりに魔王の情報が少ないしあんまり、信じられん」
魔王の情報と言えば、幼女が好きで監禁したり首輪を付けたり逃げられないように腕輪で魔法を使えなくさせようとさせたり、それくらいしか知らない。それも、どの魔王なのかはたまたどれが真実なのかも分からない。
別に、魔王だからって敵視しているわけじゃない。他国の王も別に誰も信じてないしな。噂をうのみになんてせず、自分の目で確かめない限り信用はしない。
「でも、賃金は高いぞ?」
「よしさっさと行こう。今すぐ行こう。すぐに行こう」
時に、信用は金で買えるのだ。
「ルドラさんの思考回路って、たまにすごく単純になりますよね」
「やっぱそうッスよね。一つの物事しか考えれないッスね」
ちっ、こいつら人の事を散々バカにしやがって。
「まあまあ、魔王軍の相手も嫌だと言うなら他を当ててやろう。ある者のと一緒に隣の街で今回の事件のことに対して行かなければならなく、それへの付き添いだ」
「なんだその依頼。それなら、別にギルドのヤツらにでも頼めばいいんじゃないか?」
わざわざ、裏の仕事に頼まなきゃいけないようなやつなのか?
「なんか、お忍びって訳でもないんだがな、一応ギルドには知らせてはいけないらしい。だから、冒険者ではなくこういう裏の仕事に流れ着いてきた訳だ」
なんか、胡散臭いな。まあ、それはともかくとして……
「はぁ、それはどれくらい貰えるんだ?」
「馬車代とかは全部払ってもらえて、もちろん帰りの代金も貰える金貨五枚だ。しかも一人あたり。更に、相手は三人を望んでいる。これだけ盟友らにピッタリな依頼はないんじゃないか?」
「いいだろう。そっちの方が、魔王軍のよりも楽そうだ。よし、さっさと行くとするか……」
「まあ、私は別に魔王よりもこっちの方がいいんですけどね」
「私はどっちでもいいッスよ」
二人ともいいようだ。
「それじゃあ、どこに行けばいいんだ」
「ああ、それはな。他の町に行く馬車乗り場があるだろ? そこで、この手紙を持っていけばいい」
俺はその手紙を、奪い取るように受け取りすぐさま外へと出た。
「待ってくださいよ!」
「なんで、私たちを置いてくんッスか!」
要件が終わったら一刻も早くこんな場所からでなくては……。何をされるか分かったもんじゃない。
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