第3話 吸血鬼ちゃん!?

「お前が、吸血鬼か?」

「え、なにさっきまで喧嘩してたのにすぐに切り替えらえられるの? まっ、まあいいや。うん、ひとまずそれは置いておいて……、我が名は高貴なるレンフィールドの末席。アルタナ・レンフィールドじゃ。ふっふっふ、ハッハッハ! ゲホゲホ」


 変な高笑いをしたせいで、むせているじゃないか……。なんなんだ、こいつ。見ため的にも吸血鬼っていうのはわかるんだが……。

 

「お前って、本当に吸血鬼なんだよな?」

「うむ、私は吸血鬼だ。ふっふっふ、怖いだろう?」

「吸血鬼って、再生するんだよな? ちょっと指を折ってみてもいいか?」

「何を言ってる!? そんな、真顔でいきなり怖いこと言うな!」


 なんか、吸血鬼ってこんなのなのか? なんか、弱そうなんだが……、というかさっきまでのオーラは何処にいったんだ、この寒さはどこから来るんだ。


「それで、君らは何をしに来たんッスか? こんな、森の奥に」

「えっと、俺らはお前を討伐しに来たんだが」

「ふむふむ、討伐ッスか……。え? 私の討伐。本気ッスか?」

「本気だ」


 そう告げると、レンフィールドと名乗った吸血鬼は全身をガタガタと震わせる。

 こいつ、知らなかったのか。人間を何人も殺してるんだろ?


「まっまあ落ち着ついてくださいッス。私を倒したところで、何もならないッスよ!」

「いや、お前人間を襲ってるんだろ? だったら、討伐されるのは当たり前だろ」

「ええ? 私は別に脅して遊んでいるだけで、殺してはいませんッスよ……」


 殺していない? だが、俺の聞いた話だと既に二人程死体が見つかったらしいが……。


「そんなウソを言っても、だまされないからな!」

「本当ッスよ! あまり言いたくなかったッスけど、私は血液が嫌いだからなんッスよ! だから、人間を襲う必要はないんッス」

「血液が嫌い? 吸血鬼なのに?」


 吸血鬼って、言葉通り血を吸う鬼という意味のはずだが。流石に、血液が嫌いって言うのは無理があるんじゃないのか?


「あの生臭い感じが嫌いなんッスよ。私レベルの高貴な吸血鬼になると、血液を摂取しなくても生きていられるんッスよ。もちろん、その代わり肉やら何やら食べなければいけないッスが。まあ、その代わり血液じゃなければ、身体が成長しないッスが」


 確かにそれなら、筋は通っているな。この身体の発育具合といい……。


「なんか、言いたいことがありそうッスね」

「だから、お前は幼女なのか」

「幼女って言うな! 血液を摂取すればいくつになっても成長出来るんッス! ま、まだ成長中ッスよ……」


 屈辱的な目でこちらを見てくるレンフィールドを無視しつつ、俺は物思いにふける。

 にしても、この話が本当なら何故二人も死亡者が出ているんだ。子供でも遊びに行けるようなこの森で、冒険者が死ぬというのは考えにくい。だが、吸血鬼じゃないというとなるということは、別の真犯人がいるって事か。


「なあ、お前って冷気放ったりすることは出来るのか?」

「冷気? そんなもの放てるわないッスよ。吸血鬼を何だと思っているんッスか」 


 じゃあ、さっきのオーラもこいつの物じゃなくて別の奴が……。


「じゃあ、ロリ吸血鬼。お前意外にここに住んでいる吸血鬼……、いやなんでもいい。ここに他に住んでいる奴はいるのか? 人じゃなくても魔物とかでいいんだが」

「住んでいる奴? 一応氷の獣みたいなぬしっぽいやつが住んでいるッスけど、それがどうかしたんッスか?」

「「それだ!」」


 おもわず、俺とパンジャンドラムは同時に声を上げた。やはり、あの寒さやオーラはレンフィールドじゃく、別にいたんだな。このロリがあれを放てると思えなかったし。ギルドが言っていた、吸血鬼が現れて魔物が逃げ去ったのもそいつのせいの可能性が高い。たまたま、吸血鬼を見つけ濡れ衣を着せられたのかもしれん。

 それはともかくこれ程のオーラを放つような化け物が居るってことは……、


「よし逃げるぞ、パンジャン。倒すべきは吸血鬼こいつだが、氷の獣なんて倒しても金がもらえるわけでもなければ、名声が上がるわけではないからな」

「で、ですが。それでも、氷の獣を倒した証拠と今までの事を教えればいいんじゃないですか! 吸血鬼は犯人じゃなかったって」

「じゃあ、おまえは氷の獣に勝てるのか? てか、本当にお前って強いのか? 今更ながら、お前が強いと思えないんだよ。吸血鬼だったら、まだこの森を焼き払えばにお前が言ったように日光の力で倒せるかもしれなかったがな」


 それに他にも吸血鬼対策として、様々なものを持ってきた。だが、氷の獣に対しては何も対策をしてない。それこそ、パンジャンが本当に強くないと、勝ち目がないからな。

 確かに、兵士が兵器少女の事を強いと言っていたが、それだけを信じる程俺も馬鹿ではない。それでも勝てると踏んだからこそ、ここまで来たわけで……。


「私は強いんです! それを今から証明します。そこまで言うなら、ルドラさんは付いこなくていいですから。私一人で倒してきます」

 

 そう言って、一人更に森の奥へと進んでいくパンジャン。その後ろ姿は、そこはとなく寂しげであった。

 出会ったばかりなのに、どうしてそんな気持ちを高ぶらせることができるんだか。


「えっと、なんか気まずいッスね」


 この空気に耐えられないのか、レンフィールドそんな事を話してきた。


「気にするな。これならこれで、俺の考えたルートへと進んでいる」

「どういう意味ッスか?」

「簡単だ、ここでパンジャンが怪我でもして氷の獣に勝てないとなっているところに、颯爽と俺が現れる。それを、助けることによって、大きな恩がうれるじゃないか」


 そうれば、あいつは俺に利用されざる負えなくなるって訳だ。


「あんた、ゲスいッスね……。まあ、私には関係ないッスけど」

「何を言ってるんだ? お前も手伝うんだよ」


 そう告げると、レンフィールドの目が点になった。

 普通に考えて、俺一人で勝てるはずもない。だが、こいつを連れていけば勝てる可能性が高くなるからな。高貴な吸血鬼らしいし、最悪レンフィールドを置いて逃げればいい。


「ええ……、嫌ッスけど」

「まあ、それでもいいがな。もし手伝わないならお前の正確な居場所をギルドにばらしてやる。今、ギルドではお前を殺そうとやっけになってるからな。やらせないために、俺を殺したとしら今まで手を付けてはいなかったとはいえ、前科が付くなあ? もう一度聞くが、手伝ってくれるか?」

「あんたは人間の皮をかぶった悪魔ッスか!?」


 利用できるものはすべて利用し尽くす。それで、悪魔と言われようがゲスと言われようがそんな事はどうでもいい。俺のやりたいようにやれればな。

 ちなみに、実際のところ。もし俺を殺しても、黙認されるだろう。むしろ、お金が貰えるかもしれん。もちろん、そんなことは黙っておくが……。

 

「分かりましたッスよ。手伝えばいいんッスよね。その代わり、私の正しい情報を広めて人を襲わないことをギルドに言うんッスよ」

「それくらいなら別にいいだろう。短い付き合いだが、よろしくだな」


 この条件なら、俺が殺されたり下手に裏切られることはないだろう。


「ちなみに聞くが、お前ってどれくらいの事が出来るんだ?」

「私は基本的に、人間の血があれば物凄い魔法を使うことが出来るんッスけど……、この状態だと不死身ということと、あとは軽い魔法くらいしか出来ないッスね」


 つまり、一撃で倒せるような強大な魔法はないと……。


「っち、役に立たねえな」

「じゃあ、あんたは何が出来るッスか」

「よし、さっさとパンジャンを追いかけるぞ。死んでしまったら、元も子もないからな」

「あんた、逃げただろ」


 後ろから何か言っている声が聞こえるが、無視しよう。そんななことよりも先を急がなくては……。

 そんな事を考えつつ、俺達は足を急がせるのだった。


 

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