計画始動!~キャンプ編~

第10話 田中太郎⑥


 あれから一週間が過ぎた。あの日を境に七貴に対する一部のクラスメイト達の認識が変わったのか、時折雑談している姿を見かけるようになった。

 七貴の奴は受け答え自体は普通に返すし授業態度も悪くない。あいつに絡むのは夢ノ中くらいだ。


 俺はといえばクラスメイト達とも順調に友好を深めていっている。ただやはり一番初めに仲良くなったおかげか、フィーリングが合うのかよく西郷君と一緒に行動している。


 ともあれ、最初はどうなることかと思った高校生活もうまくいきそうで一安心。やれお嬢様、お坊ちゃまっていっても話せば案外普通だったりするもんだな。

 ちょいちょい金持ちあるあるをかましてくるけど。株の話とか、プレゼントの桁がおかしかったりとかetc...。


(しかしそのくらいなら問題は無い・・っ)


 そう。俺は予てよりの計画を実行する為とある三人を呼び出していた。


「田中君。わざわざ屋上に僕たちを集めてどうしたんですか?」

「せやね。昼休みに屋上は定番やけど、日に焼けるから教室帰らへん?」

「ったく、これで下らねぇ話しだったらぶん殴るぞ」


 昼休みの屋上。そこに西郷君に七貴、そして交通事故から人を助け入院し、昨日復帰した更科健太の三人を集めた俺は司令座りしながら声を発した。


「彼女が、欲しい」

「「「・・・・は?(はい?)」」」


 ぽかんと間抜け面を並べる三人に、俺はもう一度大きな声で叫ぶ。


「だから、彼女が欲しいのです!!!」

「「・・・」」

「(ぐっ)」

「待って!更科帰ろうとしないで!?七貴、その握りこぶしを下ろして!!お願いっ!!?」


 だって俺高校での第一目標彼女作ることだかんね!?周り全員男子男子男子男子の中学じゃねえんだよ!いいじゃん夢なんだよ!好きな子とデートとかしたいんだよ!!


 俺の必死のお願いによって何とかジュースを奢る代わりに話を聞いてもらうことに。苦笑いやらを浮かべる二人と違って協力的な西郷君マジ感謝カンゲキ雨嵐。スマイラゲン。


「でも彼女が欲しいと言っても僕たちは一体何をすればいいんですか?」

「そもそも田中好きな子おるんか?」

「いや、残念ながらいない」

「「「・・・・」」」


 何だろう。西郷君まで凄い微妙な目になってしまった。


「や、でもさ!俺あんまり一目ぼれとかしねえし、そりゃかわいい子っているけど付き合うとなると別じゃん??」

「田中、めんどくさいで...」

「うぐっ!?」

「あはは...。では一体どんな子がタイプなんですか?」

「一緒にいて楽しい子!!」

「「「はぁ......」」」


 揃ってため息を吐かれた。解せぬぅ...。


「で?結局俺たちに何をさせるつもりなんだ?気になる奴でもいなけりゃ手伝いようがねぇだろ」


 めんどくさいと言いながらもちゃんと考えてくれる七貴マジツンデレ。


―――ゴッ!!


 ごめんなさい。



 そこで俺は頭をさすりながら三人にとあるお願いをした。要約すると、


一つ。まず俺がその子の事を好きにならないといけないので、積極的に女子を遊びに誘う。

二つ。その時にいいムードが生まれるように協力してほしい。

三つ。お礼は必ずします。


 具体性も無いスカスカな内容だが、先に話しておくことで三人にはフォローして貰えるし心強い。下手な妨害食らうとか嫌だしな。後々他の男子にもお願いするかもだが、大々的に俺が彼女を欲しているって認知されると何かあれ軟派な奴に思えて気が引ける。


「んじゃまず最初は誰を狙うんや?」

「狙うって、いやまあそうなんだけども...。 そうだな、なら最初は水原さんかな?」

「ほぉ~。そらまたなんでなん?もしかしてお前、ロリか?」

「断じて違う!てか普通に失礼だかんな!?」

「理由は?」

「いや、ほら先週何か言いたげに俺の顔をジーっと見てただろ?」


 神崎カフェテリア誤解事件のときだ。


「先週なんかあったんか?」

「実はですね―――」


 西郷君が更科に事の経緯いきさつを話し終えたタイミングで補足を加える。


「で、そもそも興味のない奴に態々近寄らないだろ?だからかな」

「ふ~ん。まあええんちゃう?」

「そうですね」


 三人とも俺が水原と仲良くなることに、あるいは付き合うかもしれないことについて問題は無さそうだった。もし誰かが少しでも水原のことを気になってるやつがいれば俺は止めておくつもりだったが大丈夫のようだな。


「うし、話はそんだけなんだけど、ありがとうな!」

「まだ礼を言われるようなことしてへんで?」

「それでもだよ。よろしく頼むわ!」


 そこからは他愛のない話をしながらそこで昼休みを過ごしたのだった。





「・・・」――スッ


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