第16話 式部春の決意
式部さんの部屋は、化粧品や鏡、女性ものの雑誌(全て綺麗にまとめられている)の他に、漫画やラノベ、アニメキャラのグッズなどが置かれている、二次元オタクなんだということが一発でわかるような部屋だった。
そんな部屋に対するドキドキを抑えながら、聞くべきことを聞くことにする。
「じゃあ、何があったか聞かせてくれる?」
「わかりました」
僕が聞くと、式部さんはそう言ってから自身に起こったことを話してくれた。
式部さんに起こったことは一言で言ってしまえば、今日、試験を終えた後の友達との会話の中でアニメの話が出た時に、ついいつもの調子で夢中になってアニメの話をしてしまったことをきっかけとして友達に二次元オタクであることがバレてしまったらしい。
といっても、二次元オタクであることがバレたことで気持ち悪がられたとかではなく、式部さんが友達に自身が二次元オタクであることを隠していたことを友達は怒っているようだった。
「私、美咲ちゃんたちに嫌われたくなくて、必死にオタクであることを隠してたんです。でも、美咲ちゃんたちからは『私達のこと、信用できなかった?』『私達が春が二次元オタクだから嫌うって思ってたんだ……』って言われて、美咲ちゃんたちみたいな人達に偏見を向けてるんだって気づいて……それで、何も言えなくて……そのまま帰って来ちゃって……このままじゃ、夏祭りも一緒に行けないなって思って先輩に電話したんです。でも、先輩が電話に出てくれた時、やっぱり美咲ちゃんたちと夏祭り行きたいなって、そう思っちゃって……私、どうしたらいいのかわからなくて……」
二次元オタクではない人の中には、連のように二次元オタクを受け入れてくれる人もいるが、二次元オタクというだけで嫌ってくる人も少なくはない。
僕も過去、友達だったやつに二次元オタクだとバレたことで拒絶されたこともある。
だから、式部さんの二次元オタクであることを隠しておきたい気持ちもわかるし、二次元オタクであることを友達に隠している式部さんを別に悪いとも思ってはいなかった。
だが、式部さんの友達が式部さんが二次元オタクだから拒絶したのではなく、式部さんが隠し事をしたことに怒ったというのであれば、式部さんがやるべきことは一つしかない。
「謝るしかないと思う」
できるだけ優しい声音になるように心掛けながら、式部さんに言う。
「謝るしかない……ですか?」
「うん、自分が偏見の目を友達に向けてたこととかは反省してるみたいだし、後できることは謝ることだけだと思う。だって、式部さんの友達は式部さんに隠し事なんてしてほしくなかったはずだから、まずは、隠し事をしていたことについてはしっかり謝らないと」
「……そう、ですね。私、謝ります」
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