第12話 試験勉強と助言
僕、筒谷、式部さんの三人でアニメショップに行ってから一か月ほどが経過した日。
僕は筒谷と一緒に創作研究会の部室で大学の試験に向けて試験勉強をしていた。
何故、創作研究会の部室で勉強しているかというと、筒谷が一緒に試験勉強をしたいと言ってきたからだ。
別に僕の家か筒谷の家のどちらかでしても良かったのだが、筒谷が僕達のどちらかの家ではラノベを読んだりアニメを見てしまったりして集中できず、かといって大学内にある図書室はシンとしており、集中しなければという圧が強すぎるというから却って集中できないというので、筒谷のある程度人の声が聞こえる場所の方が集中できるという要望に応えてこの場所で勉強しているというわけだ。
僕一人ならば、最近公務員試験の勉強を始めたこともあって、自分の家でも集中できるのだが、筒谷が一緒にやろうと言ってきて断る理由はない。
そう言うわけでそれなりに集中して試験勉強をしていると
「何してるんですか?」
と声を掛けられた。
声のした方に顔をあげると、そこには式部さんがいた。
僕はとりあえず試験勉強を中断し、式部さんの質問に答える。
「大学の試験勉強。そろそろやり始めた方がいいかなって思って」
「もう試験まで二週間くらいしかないですもんね」
「それは式部さんもでしょ。サークルに参加してて大丈夫なの?」
「私は大丈夫ですよ。試験で成績評価する科目は二科目しかないですし、それ以外の科目は出席とレポートで成績評価しますけど、レポート課題はもう出てて、その課題も殆ど終わってますからね」
僕は式部さんの話を聞きながら、自分が一年生だった時のことを思い返す。
確かに、試験で成績評価をする科目は少なく、レポート課題で成績評価をする科目が多かった記憶はあるし、このくらいの時期に大量のレポート課題に追われていた記憶もある。
一年生の間に取る科目はどの学科を選んでも殆ど同じだということを考えると、式部さんは、当時の僕が必死になって終わらせたレポート課題をもう終わらせているということになる。
やっぱり真面目なんだなと思わず感心させられる。
「そう言うわけで大丈夫かなと思ってサークルに来たんですけど、先輩たちが勉強してるのなら私は帰りますね」
僕がそんな風に感心していると式部さんが机の上に置いていた荷物を肩にかけて部室を出ていこうとする。
まあ、確かに男二人が試験勉強している場所にずっといてもらうのも悪いだろう。
そう考え、一緒に趣味の話をできないことを謝ろうとしたところで、一つだけ式部さんに助言するべき事を思い出し、式部さんに伝える。
「式部さん、一つだけ助言なんだけど、試験が二科目しかないからと言ってあまりなめてかからないようにね。筒谷も一年の時試験をなめてかかって一科目単位を落としているから……まあ、式部さんは筒谷みたいに勉強しないで単位を落とすなんてことはないだろうけど」
僕自身、式部さんが筒谷のように試験勉強を怠って単位を落とすなんてことはないとは思っているが、それでも助言しておくに越したことはないと考えたのだ。
「助言、ありがとうございます。単位は落としたくないので今日からしっかり勉強しますね。それじゃあ、また」
「うん、またね」
そうして別れの挨拶を交わしたところで式部さんが部室を出ていった後は、一時間程度男二人でそれなりに集中しながら勉強してからそれぞれ帰宅したのであった。
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