第10話 先輩・後輩のお出かけ4

 そうしてさらに三十分ほどショップ巡りをしたところで全員の買い物が終わったので、僕達はそろってショップから出る。

 買ったものは筒谷が今期アニメのヒロインのグッズを数種類、式部さんがラノベ、漫画を数冊ずつと、アクリルキーホルダーを何種類かで、僕はラノベ、漫画を数冊(式部さんに勧められたものも含めて)とSDキャラのキーホルダーを一つである。

 そんな感じで買い物を終え、現在時刻は昼の十二時半。

 そろそろお腹もすいてきたなということで、僕達は二階にあるフードコートに向かう。

 フードコートへ向かう道中、僕は前から歩いてくる人を気にしつつ、パンフレットに描かれている館内の地図に目を落とし、フードコートにどんな店があるかを確認する。

 流石は大型ショッピングモールというべきだろうか。

 フードコートでは人気のステーキ屋やラーメン屋、チェーン展開されているファミレスや牛丼屋など幅広く展開されているようだ。

 何を食べようかと適当に考えつつ、買った商品について二人と見せ合いながら歩いていって、フードコートにたどり着いて

「まあ、予想はしてたけど、これほどとは……」

 と僕はフードコートの様子を見ながら呆れつつそう呟く。

 フードコートは見渡す限り人で溢れかえっていた。

 それも、空席などなさそうな勢いで。

「席は……一応あっちの方は空いてるな」

 言いながら筒谷が奥の方を指さす。

 筒谷が指さした方向を見ると、展開されている店からはかなり遠いもののまばらに席は空いている。

「どうする、もう少し待ってみる?」

 周りの様子を見るに、どうやら店で注文した品を店員が持ってきてくれるというわけではなく、自分で取りに行くシステムらしく、店から遠い席に座ると面倒な上、人で溢れかえっているためしたら危ないかもしれないと考えて僕は二人に提案したのだが。

「待ってもまだ空かなそうだし、もう行こうぜ」

「私も、お腹空いてきちゃったんで、早くご飯食べたいです」

 と言われてしまったので、僕達は昼食をとることにした。

 食べるものを決めてから席につき、一人ずつ店まで行き注文していく。

 しばらく待ってから届いた商品を適当な雑談をしつつ(口に食べ物を含んでいるので会話自体は少なめ)食べていき、食べ終わったところで式部さんから

「この後、どうしましょうか?」

 と聞かれた。

 この後か……この後の予定は特に決めていない。

 元々、このショッピングモールにもアニメショップに行くことだけを目的としてきたのだ。故に特には決まっていないのだが、確かに今は昼の一時。

 わざわざショッピングモールに来たそれなりに仲のいい大学生(先輩後輩ではあるが)が昼の一時に流れ解散するのは、あまりにも味気なさすぎる。

「う~ん、そうだな。このまま解散でもいいけど、それだとなんかもったいない気もするし、映画館でも行くか?」

 僕と同じように考えたであろう筒谷からそんな提案が出る。

 しかし、映画館か……

「筒谷はみたい映画とかあるの?」

「いや、思い付きで言ってみただけで、特に見たい映画はないな」

「式部さんは?」

「私も、今は特に見たい映画はないですね」

「そっか……僕もこれといって見たい映画はないからなあ……」

 三人とも見たい映画は特にない。

 これで、映画館で映画を見るという提案はなしである。

「それじゃあ、どうする? このまま帰る?」

「私は先輩たちともう少し一緒にいたいです」

「さっきも言ったけど、俺ももう少しブラブラしたいな」

「そっか、もう少しブラブラしよっか。僕も折角ここまで来たのにこのまま帰るのは何かもったいないとは思うし」

 二人の意見を聞いた上で僕の意見を言うと、式部さんはわかりやすく目を輝かせていた。

 どうやら、まだ一緒にいたかったらしい。

 二次オタ同士の友達とはいえ、式部さんのような美少女に一緒にいたいと思ってもらえるとは、なんだか恥ずかしいなと考えてしまう。

 ……と、今はこれからどこに行くかを考えるのだ。恥ずかしさは、今は忘れるべきだろう。

 しかし、今からどこに行くか、か……

 今からどこか行くのであればどこか別の場所に行くにしても中途半端だし、このショッピングモール内の施設のどこかということになる。

 ショッピングモール内の館内図を思い返す。

 一階にはスーパーに大型家具や電化製品が売られている売り場が主だ。

 二人が行きたいのであれば別だが、僕は家具や電化製品を買う予定はないからパス。

 アニメショップのある三階はアニメショップの他に映画館、色々な小物店がある。小物店はアリかもしれない。候補に入れておく。

 そして、今いる二階にはここ、フードコートの他にアンティークの店、本屋がある。

 ……本屋か、いいかもしれない。

 二人の同意が得られれば、今一番行きたいのは書店だ。

 本屋でバイトしている身としては、大型ショッピングモール内の書店がどのようになっているか気になるし、何より買いたいものもある。

 よし、まずは確認してみよう。

 そう考えた僕は

「あの、もし二人が良かったらこのショッピングモールの本屋を見てみたいんだけど、いいかな?」

 と聞いてみる。

 すると二人は

「良いぜ」

「いいですね、本屋。行きましょう」

 とそれぞれ返してくれる。

 そう言うわけで、僕達はこのショッピングモール内の本屋に行くことになった。




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