第9話 先輩・後輩のお出かけ3

「先輩、この作品はすごいところは……」

「うんうん、なるほど……」

 式部さんと一緒にショップ巡りを始めて三十分程度経っただろうころ。

 僕は式部さんからの熱心な作品紹介を五分以上受けていた。

 事の発端は、僕は式部さんと一緒にラノベコーナーを見て回っている間に式部さんがオススメしてくれた作品を見たことがないと言ったことだった。

 式部さんは僕が作品を見たことがないと言うと、目の色を変えて

「今からこの作品の良いところを紹介します!」

 と言ってきたのだ。

 同じジャンルを好きな人のオススメなのだから、紹介を聞かないという手はないだろう。

 それに、前に式部さんがラブコメの良いところを話そうとしてくれた時は、場所が場所だったし話を止めたが、今は周りの目も気にすることもない。

折角だからあの時の分までゆっくり話してもらおうと考えて話を聞き始めたわけである。

そうして、現在。

「そんなに勧めてくれるなら買ってみようかな」

「ほんとですか?」

 僕が言うや否や、式部さんが目を輝かせながら聞いてくる。

「うん、財布的にも余裕はあるし、話聞いてるうちにどんどん欲しくなっちゃったし」

 言って、僕は本棚から式部さんが勧めてくれた本の一巻と二巻を取り出す。

「二巻も買うんですか?」

「式部さんの話を聞いて面白いのはわかってるから、巻数も多いし一巻ずつ買うよりかは二巻くらいまとめて買った方がいいかなって思って」

 式部さんが勧めてくれた本は七巻まで出ているそこそこ長いシリーズだ。

 まだ続刊も出るようだし、それならちまちま買うよりも大胆に買おうと思ったわけである。

 まあ、三~四巻をまとめて買う勇気は流石に出なかったわけではあるが、そこは他の物も買うから許してほしい。

 そう頭の中で誰かもわからない人に対して謝罪をする。

「ああ、なるほど」

 どうやら式部さんも納得してくれたらしい。

「じゃあ、読んだら感想聞かせてくださいね」

「うん、わかった」

 僕は式部さんの言葉にそう返しながら、早く読んで感想言わないとな、とそんなことを考えるのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る