シーン 6-1

夏の日の朝、お母さんが出掛けた後、すずりチャンがキッチンでなんやらガタガタしていた。お弁当を作っていた。出来たのを包んでリュックにつめた。「完了 」と言ってバタバタ部屋に戻っていった。

 しばらくして降りてきたら青い短パンに胸に猫の絵がかいたシャツそして頭には前にツバのついた白い帽子をかぶっていた。眼はそんなに大きくないがクリッとしていて、足がスーっと伸びているせいか、わりとかわいいと思う。そして、手には網目の袋を持っていた。そうだ昨日の夜、いきなり俺を抱え上げあの袋に入れようとした。俺は、びっくりしてすずりチヤンの手を引っ掻いたかもしれない。顔だけ出るようにして、網袋を閉めた。練習、練習とか言って「おとなしくしてるんだよ」って言っていたのを思い出した。

 やっぱり、今も、俺を抱えて網袋に入れた。そのまま抱きかかえて、「プチ 散歩だよ」っていって玄関を閉めて出た。表の道路に出ると、かけるが自転車に乗って待っていた。すずりチャンの自転車も用意してある。


前のカゴに俺を袋ごと入れて、

「おとなしくしているんだよ」と声をかけて、こぎだした。


 じょうだんじゃぁない、危ないだろう。この娘はやることが割と思い切りが良いというかなんか・・・。うしろからかけるがついてくる。すぐに、下り坂になって、スピードがあがった。ううーっ、飛び出せない。思うように動けないんだ。まてっ、まって、声もあげれない、危ない、怖いよー・・・。すずりチャンは「ひゃー〇〇〇いいー」って言ったような気がした。


 あの公園の横を抜けて、大きな道路に出るとようやくゆっくりと進んでくれた。すれ違う人がおどろいたようにこっちを見ている。しばらく行って、お店の前に止まったかと思うと、すずりチャンが中に向かって声をかけている。中からお母さんが出てきて、俺の頭を少しなでながら、「気をつけてね」と二人に言っている。でも、俺に向かっては何も声掛けがなかったように思う。気をつけなければいけないのはこっちのほうだよー・・・。


もう一人女の人が中から、「可愛いわねぇー」と手を振っていた。俺かーーーすずりチャンのほうかーーー。

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