九.海辺の幸

夏休みも残りわずかとなったある日、浦嶋兄妹弟は友人達を誘い海水浴へとやって来た。


一匡は誠二郎と千華子を誘い、七央樹は亀美也と紗輝を誘った。

ひかりは、万莉華と竜輝、真夏斗と凰太、さらには帆乃加と有希まで誘い賑やかなメンバーとなった。


「ねぇねぇー、ひかりー。乙辺くんと夏祭り一緒にいたでしょー?」

更衣室で帆乃加がひかりににじり寄る。


「…っっ!」

ひかりは驚きたじろぐ。


「しかも手繋いでたでしょー?」

有希もひかりに近づく。


「…っっ」

ひかりは顔を赤くさせると、さらにたじろいだ。


「本当のとこどうなのよー?付き合ってるのー?」

帆乃加と有希が水着姿でひかりに胸を押しつけてくる。


「ちょ…ちょっと待ってーッ!!いろんな意味で何か照れるーッ!!」

ひかりは顔を真っ赤にしながら慌てて帆乃加と有希を追いやる。


「だって気になるんだもーん」

帆乃加は口を尖らせる。


「つ…付き合ってないよ…」

ひかりは狼狽えながら応えた。


「じゃあいつ付き合うのー?」

有希がひかりの顔を覗く。


「え…い、いやいやいや…。そんなこと…」

ひかりは辿々しく言う。


帆乃加と有希、さらには万莉華までニヤニヤしながらひかりを見た。


「ちょっとぉーッ!!万莉華までーッ!」

ひかりは慌てふためく。


そんなひかりを見て、帆乃加達は皆笑った。


「あっ、そう言えば…万莉華も、ひかりのお兄さんと一緒だったでしょ!?」

帆乃加は思い出したように万莉華を見た。


「…っっ!!」

万莉華は突然自分のところまで飛び火し、ギョッとする。


「そうそう!!ひかりのお兄さんが万莉華の肩に手を回して歩いてるの見たー!」

有希も目を丸くさせながら万莉華を見る。


すると今度は、帆乃加と有希、ひかりがニヤニヤしながら万莉華を見た。


「…っっ」

万莉華が顔を赤くさせ狼狽えている。


すると、有希が思い出したように口を開いた。


「そう言えば…夏祭りの時、ひかり達の事聞いて来たどこかの男子がいたよね?」


有希は帆乃加を見た。


「え…」

ひかりはキョトンとしながら有希と帆乃加を見た。


「あ、そうそう!すごくかっこいい人ーッ!その人、ひかり達を見ながらあの人達と知り合いですかー?って私たちに聞いて来て」

帆乃加が天井を見上げながら言うと、有希を見る。


「そうですよー同じ高校なんですーって言ったら、どこの高校なんですかー?って、ね?」

有希も遠くを見ながら言うと、帆乃加を見た。


「うん。てっきり私達がナンパされんのかと思ったら、高校名聞いてどっか行っちゃったのよねぇー。あの人、何だったのかしら」

帆乃加が首を傾げた。


「・・・」


ひかりと万莉華もお互いに顔を見合わせキョトンとしながら首を傾げた。


「皆、準備出来たー?」

誠二郎の彼女である千華子が紗輝を連れてやって来た。


「あ、千華子さんと紗輝ちゃん!」


ひかりが帆乃加と有希に誠二郎の彼女と竜輝の妹を紹介すると、お互いに挨拶を交わした。


「あっ!!」

すると、帆乃加が紗輝を見るなりまたもや思い出したように声を上げた。


「・・?」

紗輝がキョトンとする。


「夏祭りの時、ひかりの弟さんと一緒に歩いてたでしょー!」

帆乃加が目を丸くしながら紗輝を見る。


「…っっ!!」

紗輝はギョッとする。


「そうそう、たしか…あなた達も手繋いで歩いてたわよねぇ」

有希がニヤニヤしながら詰め寄る。


いろいろと良いタイミングで目撃者となってい帆乃加と有希なのである。


すると、帆乃加と有希、ひかりと万莉華、さらには千華子までもがニヤニヤしながら紗輝を見ていた。


「も…もう、行きましょーッ!!」

紗輝は顔を真っ赤にし狼狽えながら叫んだ。


「紗輝ちゃんが付けてるそのシュシュ、綺麗な色ーッ!可愛いね、それ」

ひかりは、慌てながら後ろを向く紗輝の髪を見て言った。


「…っっ!!あ…ありがとう…ございます…」

紗輝は七央樹からもらった事は言えなかったが、顔が妙にニヤけてしまう。


「・・・」

そんな紗輝の表情に、一同何かを察し目を細めた。


「じゃあ、行こうかッ!」

ひかりは笑顔で言った。


--


浜辺には一足早く男性陣が集まっていた。


一匡と七央樹、竜輝がいる男性陣は、一際目立っており、周りの女性達は目をハートにさせながら見ている。


そんな周りの反応などどこ吹く風と男性陣は各々会話をしていた。


「おい、竜輝。お前らまだ付き合ってないのかよー…」

真夏斗が竜輝に肩を回しながら嘆く。


「せっかく夏祭り二人きりだったんだろー?」

凰太もため息混じりに言う。


「…っっ」

竜輝はたじろぐ。


「俺らなんて、亮丞を足止めすんのに大変だったんだからなぁッ」

真夏斗がやれやれとばかりに言う。


「え…アイツもいたの?」

竜輝がギョッとした様子で目を丸くする。


「いたよッ!たまたま会ったんだよッ。どこから聞いたのか、お前達を血眼で探してたぞ!」

凰太がジロリと竜輝を見た。


「・・・」

竜輝は身震いしながら、亮丞に会わなくて良かったと心底思った。


すると竜輝が真面目な顔で真夏斗と凰太を見ると、ポツリと呟いた。


「もう感謝しかないわ…」


「…っっ」

真夏斗と凰太は、竜輝の綺麗な眼差しと感謝の言葉になぜか胸をキュンとさせた。


「ちわーっす!俺…七央樹の同級生でバスケ部の瀬田っす!よろしくっす、先輩!」

すると、陽気な亀美也が三人に挨拶した。


「あっ!!君、前に女子バスケ部に抗議しに行ってたよね?」


真夏斗と凰太は、亀美也を見ながらひかりのバスケットボール事件の時を回想させた。


「あ、はい!バスケ命なんでッ」

亀美也が元気に応える。


「お前、かっこよかったぞッ!」

「よく言った!って思ったもんなー」

真夏斗と凰太は亀美也を褒め称える。


「あざっす…」

亀美也は照れながら頭をペコリと下げた。


「・・・」

竜輝は、あの時自身も現場にいたことは言えず、そっとその場を離れた…。


「ねぇねぇ、春日亀先輩ッ!!このセリフ言ってもらえませんかッ?」

すっかり誠ニ郎の声のファンになっていた七央樹は、あるセリフを誠二郎にリクエストをしている。


「えっっ…」

誠二郎は海に来てまでも言わされるのかと思いながらたじろぐ。


七央樹は浮き輪を持ち、渋い表情をさせながら誠二郎に言ってほしいセリフを言った。


「この浮き輪を…お前に預ける。俺の大切な浮き輪だ…」


七央樹はそう言うと、誠二郎に浮き輪を手渡した。

七央樹は役になりきっていた。


「…っっ」

誠二郎は戸惑いながら浮き輪を受け取った。


「いつかきっと返しに来いッ。立派な亀になってな…」


それは、アニメ「ツーピース」でスフィンクスが言った名ゼリフであった。


七央樹はアニメ好きであり、海の族をテーマにした「ツーピース」は何度も観る程でセリフも完璧に覚えていた。


「お願いしますッ!」

七央樹は熱い眼差しで誠二郎を見つめた。


「・・・っっ」

誠二郎は浮き輪を持ちながらたじろぐ。


"これは…もはや劇なのでは…"


誠二郎は浜辺でアニメ「ツーピース」の名シーンを演じることになっているこの状況に戸惑う。


だが…誠二郎も、たまたまそのアニメは好きでよく観ていた為、スフィンクスのそのセリフは覚えている。


隣で聞いていた一匡と竜輝も輝かしい眼差しで誠二郎を見つめていた。


「コホン…」

誠二郎は喉を整えると決心した。


するとスイッチが入ったかのように、誠二郎にツーピースのキャラ、スフィンクスが降臨した。


「この浮き輪を…お前に預ける。俺の大切な浮き輪だ…」


誠二郎は七央樹にそっと浮き輪を渡す。

七央樹は口を押さえ感激しながら浮き輪を受け取る。


そして、誠二郎のイケメンボイスに辺りは騒ついた。


誠ニ郎は続ける。


「いつかきっと返しに来いッ。立派な亀になってな…」


誠二郎は完璧に演じ切った。


すると、歓声と拍手が湧き起こる。


「かっけーッ!!すげーよッ!!」

七央樹は浮き輪を抱きしめながらはしゃぐ。


「最高だわ…」

一匡は誠二郎の肩を叩いた。


「・・・」

竜輝は綺麗な一筋の涙を流していた。


周りにいた女性達は、竜輝の綺麗な男泣きに見惚れていた。


そんなカオスな状態を、誠二郎はただ一人、狼狽えていた。


「あの…すみません。ちょっと良いですか…?もし良かったら、私達と…」

すると、見知らぬ女性達が一匡達に声をかけて来た。


その時、遠くの方が何やら騒がしくなった。


一匡達がざわつく方に目をやると、水着姿のひかり達歩いて来た。


周りにいる男性達が熱い視線を向けており、今にもひかり達に飛びかかりそうな勢いだった。


「…っっ!!」

一匡や竜輝達は慌てて群がる女性達を振り払うと、ひかり達の方へ駆け寄って行った。


女性達はひかり達を見るなり残念そうに去って行った。


「お待たせッ」

ひかりは周りの状況を気にせず、弾ける笑顔を竜輝達に向けた。


「…っっ」

竜輝や真夏斗、凰太は顔を赤くさせ、水着姿で笑顔を向けるひかりに目を奪われた。


一匡は、万莉華の水着姿を見て若干顔を赤くさせると、目線を逸らした。


七央樹もまた、水着姿の紗輝を見るなり顔を赤くし見惚れていた。


それぞれ男達が水着姿の女子達に対し目のやり場に困っていると…


「水着姿良いね、似合ってる」

誠二郎が彼女の千華子を見ながらイケメンボイスでサラリと言う。


一匡達はギョッとしながら誠二郎を見た。


ひかり達はキュン…とした表情で誠二郎を見ていた。


「…っっ」

竜輝達は皆、イケメンボイスな誠二郎を羨ましく思った。


「・・・」

そして一匡は、誠二郎を見ながら静かに思った。

実は誠二郎が一番恋愛上級者なのでは…と。


誠二郎が一匡の視線に気づくとキョトンとしながら一匡を見た。


「また何かあったら頼むわ…」

一匡が誠二郎の肩に手を置いた。


「え…」

誠二郎が目を丸くすると、一匡は微笑みながら静かに頷いていた。


誠二郎はまたセリフの事かと思い、静かに喉の調子を整えた。


--


「じゃあ例のアレをやるか」

七央樹はニヤッとしながら言った。


「例のアレ?」

浦嶋兄妹弟以外の皆は、キョトンとする。


「何かを賭けたビーチバレー対決ッ!」

ひかりはそう叫びながら、ビーチボールを高々と掲げた。


「じゃあ…勝者はあの、特大スペシャルチーズイカ焼きを奢って貰えるって事で」

七央樹がイカ焼き屋台をビシッと指差した。


「ゴクリ…」

皆イカ焼きを見つめながら唾を飲み込んだ。


するとひかり達は、二つのチームに分かれて、交代しながら対決する事にした。


一匡のチームには、誠二郎と千華子、万莉華と真夏斗と帆乃加、凰太がメンバーとなった。


ひかりのチームは、七央樹と亀美也、竜輝と紗輝と有希がメンバーになった。


「絶対にイカ焼きを貰うッ!」

ひかりはガッツポーズをして見せる。


「フンッ…この俺に勝てるかな?」

一匡が不敵の笑みを浮かべた。


「ぜってぇ勝つッ!」

七央樹は声を上げた。


そして、試合は始まった。


ひかりチームと一匡チームは、互角の戦いを見せた。


「ハァー…」

ひかり達はさすがに息が切れる。


「あと一勝で勝てるのに…」

七央樹も項垂れた。


「じゃあ…最後の一戦は、しりとりをしながらビーチバレーってのはどう?」

ひかりが思いついたように言う。


「え…」

一匡は、若干疲れて来てるのにさらに頭を使わないといけないのかとげんなりした。


「兄ちゃん…もしかして、しりとり苦手なのかー?」

七央樹はニヤニヤしながら一匡を見た。


「…っっ!」

一匡は額に怒りマークを浮き上がらせる。


「望むところだよッ!やってやるよッ」

一匡はそう言うと、誠二郎を引っ張る。


「コイツをナメるなよッ!」

一匡が誠二郎と肩を組みながら七央樹を威嚇した。


「・・・」

七央樹は思った。


いちいちイケメンボイスで言われたら勝負にならないのでは…と。


「姉ちゃん、俺ムリかもしれねぇ」

七央樹は真面目な顔をしてひかりを見た。


「おぃ…七央樹…」

ひかりは険しい顔をして七央樹を見た。


「じゃあ…俺が出る」

すかさず竜輝が手を挙げた。


ひかりは目を丸くしながら竜輝を見た。


竜輝は微笑みながらひかりを見る。


ひかりは若干頬をピンクに染めると、嬉しそうに笑いながら竜輝に言った。


「よろしく」


こうして、一匡と誠二郎ペアvsひかりと竜輝ペアの対決が始まった。


最初のサーブはひかりからであった。


バンッ…

「ヒトデーッ」

ひかりが叫んだ。


ドスッ…

「デスメタル」

一匡が言った。


バンッ…

「ルウ」

竜輝がクールに言う。


ドスッ…

「海坊主」

誠二郎がイケメンボイスでサラリと言った。


「…っっ」

誠二郎のイケメンボイスでの海坊主は、ギャラリーに衝撃を与えた。


バンッ…

「ず、ずんだ餅ーッ」

ひかりは誠二郎のイケメンボイスを振り払うかのように叫んだ。


ドスッ…

「チ…チョウザメ…」

一匡が狼狽えながら打ち返す。


バンッ…

「メリケンサック」

竜輝がクールに言う。


「…っっ」

一匡達は竜輝のワードチョイスにたじろぐ。


ドスッ…

「く…黒魔術」

誠二郎がイケメンボイスで言う。


「…っっ」

ひかり達は誠二郎のワードチョイスもなかなかのものであるとたじろいだ。


「つ…辻斬りーッ!!」


バーンッ…!!


ひかりは叫びながらアタックした。


「…っっ!!」

一匡と誠二郎はひかりが放つ渾身の球を受け倒れた。


「やったーッ!!」

ひかりはガッツポーズし喜んだ。


ひかりと竜輝は笑顔でハイタッチをした。


七央樹と紗輝、亀美也と有希も飛び跳ねて喜ぶ。


「何だよ、辻斬りって…」

一匡が頭を抱えた。


「プハッ…。クク…フハハハハハッ!」


すると、横で誠二郎が豪快に笑い始めた。


爆笑する誠二郎を見た一匡達は皆、つられて笑い出した。


しばらくひかり達は、笑いが尽きるまで笑い続けた。


そんなひかり達を、周りの見物人達はウットリと眺めていた…。


--


「ハァー…ごちそうさまでした」


ひかり達は奢りのイカ焼きを食べ終えた。


一匡達は自腹で食べる。


「チッ…。このイカ焼きの味、忘れんなよッ!」

一匡はムスッとしながら言う。


「うんッ!忘れない!!」

七央樹はニコニコしながら一匡に言う。


紗輝も横でイカ焼きを食べ終え満足そうにしている。


「…っっ」

一匡は幸せそうな七央樹達の顔を見ると、何だか気が緩み小さく笑みを溢した。


そんな一匡を見ていた万莉華は、胸をキュンッとさせた。


万莉華の視線に気づいた一匡は、万莉華に話しかけた。


「食べれた?」


大きめのイカだった為、万莉華を気にかけた。


「あ…はい。あの…お金…」

万莉華が一匡にイカ焼き代を渡そうとした。


「あぁ、良いよ」

一匡は万莉華の差し出したお金を受け取らなかった。


「え…」

万莉華が驚きながら一匡を見た。


「万莉華ちゃんの分は、俺からの奢り」

一匡はそう言うと、「ナイショ」と言った意味で自身の人差し指を口元で立てながら、万莉華に微笑んだ。


「…っっ!!」

万莉華は驚き、一匡の仕草に胸を撃ち抜かれた。


万莉華は顔を赤くさせながら小さくペコリとお辞儀した。


一匡は万莉華に爽やかさな笑顔を向けた。


「・・・っ」

万莉華は感じでいた。

底なし一匡に、どんどん落ちていることに。

もう上がって来れないと思う万莉華なのであった。


--


「良かった、乙辺に食べさせられて」

七央樹が笑顔で紗輝を見た。


「え…」

紗輝は目を丸くさせ七央樹を見た。


「祭りの時言ってたろ?イカが好きって。だから今回の対決のご褒美、イカ焼きにしたんだーッ!良かった、勝って」

七央樹は嬉しそうに笑う。


ギュッ…

「…っっ」

紗輝は顔を赤くさせ胸を抑えた。


「あと…その髪。やっぱ似合ってる」

七央樹は自身が買ってあげたシュシュをチラッと見た後、紗輝の顔を見て微笑んだ。


「…っ!!あ…ありがとう…」

紗輝は照れながら呟いた。


紗輝もまた、底なしの七央樹に落ち続けている真っ最中であった…。


--


「さっきの乙辺くんの、メリケンサック…かっこよかった」

ひかりは笑顔で竜輝を見た。


「…っっ、あぁ…いや…」

竜輝は咄嗟に出た言葉がメリケンサックだった事を思い出し、狼狽える。


「バレーする姿も…かっこよかった…」

ひかりは若干顔を赤くさせながら、ポツリと呟いた。


「…っっ!!」


恥ずかしそうに照れながら言うひかりの姿に、竜輝はまたもや抱きしめそうになるのをグッと堪えた。


「それは…どうも…」


竜輝は赤くなった顔を逸らすと、未だに決着ついてない自身の理性と本能の戦いを宥めながら呟く。


常に底なしの浦嶋兄妹弟に落ち続けている、万莉華と竜輝、紗輝なのであった…。


--


「浦嶋くん…」

誠二郎が一匡に声をかけて来た。


一匡は誠二郎を見た。


「ありがとう…。今日誘ってくれて…」

誠二郎は微笑みながら一匡を見た。


「何だよ、急に改まって…」

一匡がキョトンとする。


「僕、こんなに楽しい夏休み初めてだよ。あんなに笑ったのも…。高校最後の夏休みが最高の夏休みになった。浦嶋くんが僕を見つけてくれたおかげだよ…本当に、ありがとう」

誠二郎は笑顔で一匡を見つめた。


「春日亀…」

一匡は胸の奥が熱くなるのを感じた。


鼻の奥がツーンとなりながら、一匡も誠二郎に笑顔を向けた。


「・・・」

そんな二人の様子を、ひかりと七央樹は満足そうな表情で見つめていた。


「・・・っ」

誠二郎の言葉を聞いていた千華子や、万莉華、さらには竜輝達など…浦嶋兄妹弟以外の皆は各々に思っていた。


自分達も誠二郎と同じ気持ちであると…。


浦嶋兄妹弟が来たおかげで、毎日が楽しい事に。

そして…この年の夏休みが、今までで一番の最高な夏休みであると。


もはや、万莉華や竜輝、紗輝だけではない他の者達までもが、浦嶋兄妹弟に落ち続けているのであった…。


皆、夏の海辺で各々に幸せを噛み締めていた。

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