第6話

 目から眩しい光が入ってくると同時に、私の安アパートの部屋の映像が目の中に入ってきた。目の前のテレビには新型コロナに関連したニュースが流れていた。この感覚どう考えても夢から覚めた感覚に思えなかった。夢から覚めた感覚とは全く違っていた。見た夢がたとえどんなにリアルであったとしても目が覚めた時それが夢であったことがはっきりと分かる。その夢が覚めてからの体と意識がまったく関連がなく、接触がないことが体全体と意識全てにおいて感じられる。

 でも、今感じている感覚がまったく別物であることが実感出来る。私の意識と体全体があの2010年の世界での経験と繋がっていることが不思議なくらい実感できる。

 私は自分の意識が2010年の世界にさっきまで存在していたということがなぜだか実感できる。

 なぜか今私の思考を支配しているのは、私の意識が2020年と2010年という2つの時代をなぜ移動できたかということである。私はそれはテレビとそのテレビの画面から映し出されていた番組の映像がその原因ではないかと直感的に感じ取ることができたような気がした。

 私はスマホでその番組のタイトルを検索して、次の放送時間を確認した。時宜を得たというか、あと数分でその番組の開始時間となっていた。新型コロナウイルス関連のニュースは、コマーシャルに変わっていた。コマーシャルが終わると『私の街の風景』のタイトル画面が映り、タイトル画面がフェイドアウトすると同時に見覚えのある私がかつて住んでいた街の商店街の映像が映し出された。カメラの目は住宅街の中を通る街路に沿って、歩きの速さで進んでいった。やがて見覚えのある、私が10代の時に住んでいた住宅の外観を、アップで映し出した。その映像が私の瞳に映ったことに反応してか、私の体全体が固まり熱くなっていくのを感じた。私の身体がテレビの映像に吸い込まれていくのを感じた。意識が朦朧としいくのが感じられた。

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