第4話
「どうだった生物部?」
「譲が言ってたように顧問の先生の話、結構面白かったよ」
「ゲノムをコンピューター言語と比較して説明していることで、分かりやすかったね。コンピューターが最終的に認識しているのは0と1からなる2進法の言葉なんだね。それに対して遺伝子の情報はアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4つの塩基で書かれてるんだね」
「譲、すごいね、そういう風に説明できるなんて」
「いや、昨日よく理解できなかったけど、なんとなく面白そうだったので、今日もっとわかるようにと遺伝子の本を昨日の夜一生懸命読んだんだ」
「じゃ俺も今日図書館に寄って見て、遺伝子関係の本を探してみるかな」
実際、私は部活体験が終わった後、学校の図書館に寄って、ゲノムとか遺伝子とかDNAなどの文字が題名に含まれている本を何冊か借りてきた。2010年の時代でこの分野で、どの辺まで研究が進んでいたのか確認してみたかった。2020の年の私は、新型コロナウイルスによって震撼している世界の中で、私は毎日のようにウイルスに関連したことを調べている。特にウイルスのゲノムに関心を持つようになっていた。10万分の1ミリの極小の分子の中に文字で言えば4万文字ほどの情報があるということがあまりにも驚嘆すべきことに感じられた。
家に帰ってから、私は机に学校の図書室から借りてきた5冊の本を置いた。そこから一冊取り出してページをめくっている間、本に書かれている文字が伝えようとしている内容について私の脳は読み取ろうとはしていなかった。これから一月後に起こる悲惨な出来事に対してどうしたらいいかという思いで私の脳は支配されていた。
2020年の世界に存在していた私の意志が、2010年の世界に存在しているということが、夢ではなく現実であるならば、これからの10年間を知っている私の意志が何かを行うことができるのではないかと思うようになった。もしかしたら2020年の惨めな私の現実を変えることができるのでないかと思うのである。
昨晩と同じようにまた真夜中に目が覚めた、階下から父と母が話す声が聞こえてきた。私はまた部屋の扉を開けて、父と母の会話に耳を傾けた。
「今残金はどれくらいあるの?」
「この通帳に入っているのとこの財布にある現金で全てだな」
「切り詰めて、もって数ヶ月かしら。その騙した人はどこにいるの?」
「これがその名刺だよ。ここに電話したけど・・・何度電話しても出なかった。それでこの住所へ行ってみたよ。そこにあったのはテナント募集中の建物だったよ。まんまと逃げられてしまったね」
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