7.手紙

最愛の人へ


美木くん、元気にしていますか?

この手紙を目にしているという事は、きっと、そうではないのでしょうね。


私の死が、あなたを苦しませているのだとしたら、ほんとうにごめんなさい。

もしもあの日、わたしと再会していなければ、あなたは苦しまずに済んだのかな?


でも、わたしは、あなたと出会えて、ほんとうに幸せでした。

ひとりぼっちで、つまらない毎日を過ごしていたわたしは、あなたに救われました。

ため息ばかりの毎日が、笑顔が溢れる毎日に変わり、あなたの側でたくさんの夢を見させてもらいました。


道端に咲く花や、青空に浮かぶ雲や、山に沈む夕日が美しいと思えるようになったのはあなたのお陰です。

冷たい雨に打たれても、強い北風に吹かれても、あなたと一緒に居られたから、寒さなんて感じずに、ぬくもりを感じることが出来ました。


もしも意地悪な神様があの日の再会を企てて、それと引き換えにわたしの寿命を縮めたのだとしても、わたしは神様に感謝します。


あなたと過ごした、かけがえのない日々……

これはどんな犠牲を払ってでも、手に入れるべき価値のあるものでした。

あなたに出会えて、本当に良かった。


美木くん、今、わたしに会いたいですか?

わたしは、とっても会いたいです。

会いたくて、仕方ありません。

でも、次にお会いするのは、ずっとずっと先ですね。


高校三年生で別れてから再会するまで二十五年掛かりましたね。

次に会えるのも二十五年先? いえいえ五十年先になるかも、もっと先かな?

でも、私は待つことができますよ。


高校の頃の思い出、それから再会してからの思い出。

わたしには、たくさんの宝物があります。

それらをじっくりと振り返りながら、また会える日をのんびりと待っています。


あなたは、健やかに生きてください。

好きなところへ行って、

好きなことをして、

好きな物を食べて、

もしも、目の前に素敵な人が現れたら……

心から愛してください。


それが私の望みです。


そして、あなたがこの世を去るとき……

もしもわたしの事を憶えていたなら、心の中で叫んでください。

わたしは必ず、あなたを迎えにいきます。

天国への道を、手を繋いで歩きましょう。


あなたが経験したたくさんのお話を聞けるのが楽しみです。

わたしが知らないお話を、たくさん聞かせてください。

そして、わたし達の夢の続きを叶えましょう。


いつか、また、どこかで……

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